教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

教育雑記帳

指導要録「主体的に学習に取り組む態度」考④

2016年12月21日の中央教育審議会答申(「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」)を受けて、2017年3月31日に学習指導要領が改訂されます。 小学校の場合は、2018年度と2019年度は移行…

指導要録「主体的に学習に取り組む態度」考③

2016年12月21日に中央教育審議会から出された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」では、評価のあり方について次のように述べています。 幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別…

指導要録「主体的に学習に取り組む態度」考②

2008年1月17日の中央教育審議会答申は、「改正教育基本法や学校教育法の一部改正及びその国会審議等を踏まえ、小・中・高等学校の教育課程の枠組み、道徳教育や体験活動の充実といった教科等を横断した事項や各教科等の教育内容についての具体的な改善につ…

指導要録「主体的に学習に取り組む態度」考①

現職教員である義弟と飲んでいたとき、いつしか教育談義になりました。 どうした話の流れであったかは曖昧ですが、彼は「『人間性』を評価するのはおかしい。人権侵害だ」と言い出しました。 「人間性」というのは、学習指導要領で示された「学びに向かう力…

(投稿№300)日本人に足りない批判的思考~デービッド・アトキンソン氏に学ぶ~

本日、投稿数が300の節目を迎えました。 先日(2月23日)の「朝日新聞」に、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の有識者懇談会メンバーであるデービッド・アトキンソンのインタビュー記事が掲載されました。 記事は、森喜朗さんの女性蔑視発言を受けて…

「個別最適化された学び」を考える④

最後はそもそも論です。 「個別最適化された学び」を提案する「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」は、「これから到来する Society 5.0 時代を見据え」という文言で始まります。 文部科学省は、「これから到来する Society 5.0 時代…

「個別最適化された学び」を考える③

「個別に最適で効果的な学びや支援」には、 ○個々の子供の状況を客観的・継続的に把握(センシング技術) ○知識・技能の定着を助ける個別最適化(AI)ドリル ○意見・回答の即時共有を通じた効果的な協働学習 という3つの柱があります。 3つのうち、 ○個…

「個別最適化された学び」を考える②

「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」の実現には、「ICT 環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータの効果的な活用」に大きな可能性があると、「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」といいます。 そして、「IC…

「個別最適化された学び」を考える①

GIGAスクール構想について語られる文脈で、「個別最適化された学び」という言葉をよく耳にします。 今回は、「個別最適化された学び」について考えます。 「個別最適化された学び」という表現が公になったのは、2019年6月25日のことです。 この日、文部科学…

デジタル教科書時代・2035年の物語④

デジタル教科書時代の学力 2035年の教室。 デジタル教科書は、教室風景と授業風景を一変させていました。 教室に一歩足を踏み入れると… 黒板がありません。白墨の筆記音もありません。 かつて黒板が設置されていた教室前面は、巨大な「モニター」に変わって…

髪黒染め校則は「合理的」?

2月16日、髪の染色などを禁じた校則の合法性を問う訴訟の判決がありました。 まずは、「日本経済新聞」の記事で概要を見ていきます。 「髪黒染め」校則は適法、府に一部賠償命令 大阪地裁 日本経済新聞 2021年2月16日 13:27 (2021年2月16日 18:23更新) 茶色…

デジタル教科書時代・2035年の物語③

デジタル教科書時代の算数力 2035年、学校帰りに出会った子どもの家。 彼の宿題を見ていて、あれっと思ったのが算数。 教科書がデジタルなら、「ドリル」もデジタルコンテンツです。そりゃまあ当然です。 問題は、デジタルコンテンツのなかみです。 昔は、算…

デジタル教科書時代・2035年の物語②

デジタル教科書時代の漢字練習 2035年、デジタル教科書が定着した教育現場。 それは「空想」であることに相違ありません。 手塚治虫はアトムの時代を、藤子F不二雄はドラえもんの時代をその目で見ることはありませんでした。 私は、80歳でその未来を目にす…

デジタル教科書時代・2035年の物語①

デジタル教科書時代「元年」・2021年 2021年4月、日本は「デジタル教科書」元年を迎えます。 デジタル教科書はすでに存在するのですが、学校現場ではほとんど使われていません。 理由は2つ。紙の教科書が主であり、それが無償で全員に配布されています。デ…

出口式「タテ・ヨコ・算数」思考法 ~情報過多社会の航海術~

いま読みかけの本が4冊あって、その1つが『自分の頭で考える日本の論点』です。 『自分の頭で考える日本の論点』 (出口治明著、幻冬舎新書、2020.11.25、1210円) 内容(「BOOK」データベースより)玉石混淆の情報があふれ、専門家の間でも意見が分かれる…

公立小学校、全学年35人学級へ 前進!今頃?

教育界にとって久しぶりに大きなニュースが飛び込んできました。 公立小学校、全学年35人学級へ 40年ぶり見直し 17日合意へ 12/16(水) 19:32配信 1496 学校(写真はイメージ)=ゲッティ 現在は40人(小学1年は35人)と定められている公立小中学校の学級基準…

「現在形」で語る教育

教育実践を「現在形」で語るというのは、厳密に言えば物理的に不可能です。 つい終えたばかりの実践であっても、語る時点では「過去形」です。 本稿のタイトルは、「『現在形』で語る教育」です。 この稿における「現在形」には、もう少し幅があります。 現…

胃は体の外?

「今朝は何を食べてきた?」 「食べたものは今どこにあるの?」 「そう、お腹の中。胃の中だね。」 「ところで、胃は体の中にあるの? それとも外にあるの?」 こんな突飛な問いで始まる学びの時間を持ちたかったなあ……。 仕事を辞めてから読んだ本の中で、…

黄葉と紅葉を科学する

木々の葉が色づく季節です。 イチョウの黄葉、カエデの紅葉……今年も幾枚もの写真を撮り収めました。 私は文系の人間ですから、彩りの移ろいを愛でることはあっても、なぜ移ろうのかなどと深く考えたことはありませんでした。 目からウコロを落としてくれたの…

「面従腹背」という生き方

「面従腹背」(めんじゅうふくはい) うわべだけ上の者に従うふりをしているが、内心では従わないこと。 ▽「面従」は人の面前でだけ従うこと。「腹」は心の中のこと。「背」は背くこと。 (三省堂 新明解四字熟語辞典) 四字熟語は中国由来のものが多いです…

GIGAスクール構想は学校を変える?

国の政策がこんなに速く現場に下りてくることもあるんだと、妙な感心をしたことがあります。 コロナ禍対策のなかで、文部科学省のGIGAスクール構想が前倒しで実現されることになりました。そして、10月下旬の教室では届いたばかりの端末を使った授業が始まっ…

マスク越しの授業に思う

私は現在、地元の小学校と中学校でコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の委員をしています。 今年度はコロナ禍の影響で、どちらの学校運営協議会も開店休業状態が続いていました。 先月、小学校の協議会の初会合があり、全クラスの授業を見せてい…

「いじめ認知件数最多」報道に思う

10月22日、文部科学省が2019年度のいじめ等に関する調査結果を発表しました。 『令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について』というのがそれですが、130ページに及ぶ冊子です。 まずは、報道機関の記事で概要を見…

(200投稿)トップランナーとして生きる

本日、投稿記事が200の節目を迎えました。 「トップランナー」というと、先頭を走っている「ナンバーワン」を想うかもしれません。 私は、若いころから「職人」教師をめざしていたように想います。できれば一流の…。 まさに、「オンリーワン」にして「ナンバ…

小学校高学年からの教科担任制導入へ

先ごろ、中央教育審議会(中教審)の時代の初等中等教育の在り方特別部会が、「答申案作成に向けた骨子(案)」をまとめました。 その中に、「2022年度より、小学校高学年に教科担任制を導入する。対象とすべき教科は外国語、理科、算数」といったことが書か…

安倍教育改革の遺したもの(その12)

安倍改革の「エンジン」② 安倍改革の「エンジン」は「日本会議」であると書きました。 さりとてそれは、国会議員が多数所属しているとは言え、1民間団体です。なぜそれが、それほどまでに強い影響力を持ちうるのでしょうか。 自然吸気のエンジンにターボ機…

安倍教育改革の遺したもの(その11)

安倍改革の「エンジン」① ここに「美しい日本」号という車があります。 この車には、数々の改革シリンダーを備えた「エンジン」が積まれています。 幾人もの人が乗っています。 安倍氏が運転手の役を担った時、彼は「アクセル」を目一杯踏み込み、車を前に進…

安倍教育改革の遺したもの(その10)

道徳の教科化③ 「道徳科」の周辺探訪 教育基本法の改正と同様に、道徳教育の充実を求めて取り組んできた民間団体があります。その活動を追うとともに、それが安倍教育改革にどう絡んでいくのかも併せて検証していきたいと思います。いわば「道徳科」の周辺探…

安倍教育改革の遺したもの(その9)

道徳の教科化② 「特設道徳」から「道徳科」へ 「道徳」の前身は、戦前の「修身」です。 日本の敗戦によって「修身」は廃止され、戦後はその役割を「社会科」が担うようになりました。 しかし一方で、「修身」の復活を模索する動きはその頃からありました。 …

安倍教育改革の遺したもの(その8)

道徳の教科化① 安倍政権が教育に遺したものの代表は、教育基本法の「改正」と道徳の教科化です。 教科としての道徳は、第2次安倍政権の2015年3月27日の「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定,小学校学習指導要領の一部を改正する告示,中学校学…