「教科外活動等」におこなった、いわば「7時間目」の人権学習の記録です。
今回は、2007年の「差別をなくす強調月間」時の学級通信です。学年は6年生です。
図で、黒色が飢餓や貧困のある地域です。
世界の飢餓について、いくつかのデータを紹介します。
□飢えと栄養不足は、世界第1位の死亡原因です。(データ:WHO 世界保健機関)
□飢えと貧困によって、世界では毎日2万5000人の人々が亡くなっています。(データ:FAO 国連食糧農業機関)
□世界には、全ての人々が食べるのに十分な食糧があります。それでも、8億人以上の人々が常にお腹をすかせています。(データ:アメリカのNGO、Bread for the World Institute)
□飢えに苦しむ人のほとんどが開発途上国に住んでいます。サハラ砂漠以南のアフリカでは、3人に1人が飢えています。(データ:FAO)
□飢えに苦しむ人々のうち、3億人以上が南アジアに住んでいます。これは、アメリカとオーストラリアの人口を足したよりも多い数です。(データ:Bread for the World Institute)
□貧しい家庭では、収入の70%以上が食費に当てられます。アメリカの平均家庭では、10%ほどです。(データ:世界銀行)
□貧しい国々における食糧不足の最大の原因は干ばつです。きちんとしたかんがい設備を整えることにより、穀物の収穫高を4倍まであげることができます。(データ:FAO)
さて、子どもの飢餓の問題にうつります。
□世界の8億5,400万人いる飢えや栄養不足で苦しんでいるうちの3億5000万人以上が子どもたちです。
□世界では、5秒に1人の子どもが飢えに関連する病気で命を落としています。飢餓に関連した死因で亡くなる人の4分の3は、5歳未満の子どもたちなのです。(データ:FAO)
□アフリカでの子どもの死亡率は、ヨーロッパの8倍です。栄養不足が主な原因です。(データ:医学雑誌、The Lancet)
□世界では、毎年600万人の5歳以下の子どもが、栄養不足と飢えに関連する病が原因で亡くなっています。(データ:UNICEF 国連児童基金)
□ビタミンAの不足により、毎年100万人の赤ちゃんが死んでいます。(データ:UNICEF)
飢餓や貧困は、一時の事件ではなく1年中ずっと続いています。また戦争や自然災害で急に貧しくなったわけではなく、生まれた時からずっと貧しさとたたかっている人がほとんどです。そのためなかなかニュースに取り上げられませんが、たくさんの人が苦しんでいる問題です。
飢餓が社会を襲うとき、最も深刻な被害を受けるのは子どもたちであり、飢餓によって栄養不足になったり、空腹で苦しむだけでなく、勉強への機会や意欲も奪われています。
果たして、世界は平和でしょうか。
差別をなくす強調月間平和!平和?③
■コラム:生まれてくる場所は選べない■
あなたが飢餓や貧困のあるアフリカの村に生まれていたとします。あなたは今年、村の小学校に入学します。あなたの同学年の友だち30人のうち・・・
○10人はとてもお腹をすかせていて、その中の3人は死にそうなほど栄養不足です。
○17人は卒業する前に学校を辞(や)めてしまいます。両親の仕事を毎日手伝うためです。
○15人が、家に電気もガスも水道も通っていません。(電子レンジもテレビももちろんないですよ!)
○17人は60歳まで生きられないでしょう。平均50歳以下で死んでしまいます。
○一緒に入学するのは本当は36人のはずでした。学校に入る前に死んでしまった6人とは、友だちになることすらできませんでした。
■問題■飢餓や貧困の中で生活している人々は1人当り、1日約何ドル以下のお金で暮らしている?
a. 10ドル(=1250円) b.5ドル(=625円) c. 1ドル(=125円)
●5歳になる前に命を失う子どもたちの割合
日本では、1000人の赤ちゃんがうまれると4人は5歳になる前に亡くなってしまいます。他の国はどうだろう?世界平均は79人、後発開発途上国と言われる地域では155人が亡くなっています。シエラレオネでは実に316人にもなりなす。
●栄養不良と思われる子どもの割合
世界平均で26%、後発開発途上国では36%、児童労働の時に出てきたインドは53%、ネパールは47%で世界で最も数値の高い国に属します。
●学校に行っている子どもの割合
世界では男の子の12%、女の子の15%が全く学校へ行っていません。小学校に入学した子の24(28)%が登校していません。5年生まで在籍している子どもは79%です。
大人になって読み書きができない人は、男子が16%で女子が28%です。後発開発途上国では37(55)%の人が読み書きできないのです。
● 1日1ドル未満で暮らす人の割合
世界では21%の人が1日1ドル(約125円)未満で生活しています。後発開発途上国では41%、アフリカでは50%前後になります。これらの国では、1人あたりの年間収入が350ドル以下です。したがって、クイズの答えは c. 1ドル(=125円)です。
現在、世界は100人に対し約90食分の食糧を生産しています。しかし、豊かな20人が80食を食べ、貧しい80人が10食をわけあっています。また、100人のうち豊かな20人が世界の75%の収入を得て、最も貧しい20人はたった2%の収入しかありません。--これが世界の現実です。私たち日本人は、豊かな20人が80食を食べているグループに属します。豊かな20人が世界の75%の収入を得ている国に生きています。児童労働やストリートチルドレンの問題は、10食分の食糧を分け合っている80人、2%の収入を分け合っている20人の人たちの現実なのです。
今の日本は豊かで平和です。でも、ほんの少し想像力を働かせてください。豊かな暮らしを支えている鉄は、あのインドの少女が砕いていた鉄鉱石かも知れません。この間食べたエビは、飢えとたたかっているアジアの人が養殖したものかも知れません。他人の不幸の上に本当の平和が存在するでしょうか。考えてほしいテーマです。
「平和!平和?」を読み解く
(学級通信の)テーマは「平和!平和?」だった。私は、(学級通信)を読んでびっくりした。貧しい人は、一日に一人あたり一ドルしか使えないし、五秒に一人、飢餓が原因で死んでいくと知った。世界には、たくさんの子どもが飢餓で死んでいると知って、私が思ったことは、まず自分はめぐまれているということ。私は、いつもごはんも食べられるし、学校にも行けるから。私は、日本は戦争もないし、平和と思っていたけど、世界に目を向けると「平和!」とは言いにくくなりました。みんなが平和にくらすというのは難しいことだと思いました。 (OM)
7月4日に出してくれた日記をすべて紹介しました。少し整理しておきます。
難しい問題だ
OMさんが書いているように、「みんなが平和にくらすというのは難しいこと」です。今までも多くの人が知恵を出し合ってきましたが、なお解決できていない問題です。でも、永遠に解決できない問題というわけではありません。
知ることが解決への第1歩
初めて知った、びっくりしたと多くの人が書きました。今、ほんの少し知りました。知ることは、考えるきっかけになります。Iくんが「自分で働いたらいいのに」と書いているように、知ることで新たな疑問が出てきます。さらに知ってほしいと思います。夏休みにテーマを決めて調べてみましょう。Sさんはもう始めていますよ。
自分と関係ある
Kさんは、養殖エビのことで「感謝」と書きました。KAさんは、「1円も無駄にできない」と書きました。OAさんは、「嫌いやからと残したり絶対しない」と書きました。これらが飢餓を解決するわけではありませんが、自分と関係ある問題ととらえることで、あなたは解決のために努力する人の一人になったのです。
解決の努力も知ろう
Oくんは「平等」が大事と言い、IZさんはそのために自分が何かを失うのはいやだと言います。正直な意見だと思います。
Mさんは、ユニセフ募金の意味が「よく分かった」と書いています。Mくんも「募金をしよう」と書いています。MUさんは「寄付やボランティア」に触れています。募金やボランティアの活動はいくつもあります。これも調べてほしいです。解決への手がかりが見つかるかも知れません。