教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その48) 慣用句「世話を焼く」

小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第19回は「世話を焼く」です。

 

 

世話を焼く

 

「世話を焼く」の読み方

せわをやく

 

「世話を焼く」の意味

すすんで他人のために尽力する。(広辞苑

 

「世話を焼く」の使い方

 余計な世話を焼く。

 

「世話を焼く」の語源・由来

「世話を焼く」の語源は、「焼く」のもつ意味にあります。

広辞苑」で「焼く」の項を見ると、次のように記されています。 

➊熱を加える。
①火をつけて燃やす。万葉集14「面白き野をばな―・きそ古草に新草まじり生ひは生ふるがに」。平家物語7「林を―・いて狩る時は多くの獣を得といへども、明年に獣なし」。「紙くずを―・く」
②火に当てる。あぶる。皇極紀「岩の上に小猿米―・く」。大鏡時平「冬はもちひのいと大きなるをば一つ小さきをば二つ―・きて」。「秋刀魚さんまを―・く」
③火災で失う。灰にする。「火事で家を―・く」
④日光に当てて皮膚を黒くする。「海辺で肌を―・く」
⑤陶磁器・かわら・炭などを作る。「煉瓦を―・く」
⑥薬品で表面をただれさせる。「硝酸で表皮を―・く」
➋さかんにあれこれと心を使う。
①心を乱す。心を悩ます。心を焦がす。苦しめる。万葉集7「冬ごもり春の大野を焼く人は焼きたらねかもわが心―・く」。「恋に身を―・く」
②気をくばる。世話をする。宝蔵「家の内の後見などたのめるを鍋尻―・くなどいへるを思へば」。曠野「ひとり世話―・く寺のあと取り」(越人)
③(「妬く」とも書く)やきもちをやく。嫉妬しっとする。浮世床初「―・く代りには手があるだらう」。「二人の仲を―・く」
➌そばからしきりにすすめてその気にさせる。
①おだてる。機嫌をとる。好色一代女5「此の道に身をなし、人をよく―・くとて野墓のるりと名に呼ばれて」
②だます。すかす。欺く。剥野老むきところ「うちつけより人を―・く事上手なり」
➍写真の原板から印画を作る。また、複写機でコピーをとる。「写真を―・く」「図面を―・く」

 

「世話を焼く」の蘊蓄

「焼く」の付く慣用句

お節介を焼く(御節介焼き)

他人のことに必要以上に立ち入って、よけいな世話をやくこと。(大辞泉

「焼く」の語源は、「世話を焼く」と同じ、「➋さかんにあれこれと心を使う。②気をくばる。世話をする。」〈広辞苑〉です。

 

手を焼く

やりそこなってこりる。取扱いに困る。もてあます。(広辞苑

「焼く」の語源は、「世話を焼く」と同じ、「➋さかんにあれこれと心を使う。②気をくばる。世話をする。」(広辞苑)です。

 

身を焼く

激しい思いに身もだえする。身を焦がす。(広辞苑

「焼く」の語源は、「➋さかんにあれこれと心を使う。①心を乱す。心を悩ます。心を焦がす。苦しめる。」(広辞苑)です。

 

やきもちを焼く

嫉妬する。(大辞泉

「焼く」の語源は、「➋さかんにあれこれと心を使う。③やきもちをやく。嫉妬する。」(広辞苑)です。

「焼く」そのものに「嫉妬する」の意味があり、「やきもち」は「嫉妬」のことです。「やきもちを焼く」となれば、これはもう「嫉妬」の波状攻撃ですね。