小学校3・4年生の教科書に登場することわざの第16回は「善は急げ」です。
善は急げ
「善は急げ」の読み方
ぜんはいそげ
「善は急げ」の意味
よいことをするのにためらうな、の意(広辞苑)
「善は急げ」の使い方
叔父はもし私が主張するなら、私の卒業まで結婚を延ばしてもいいと言いました。けれども善は急げという諺もあるから、出来るなら今のうちに祝言の盃だけは済ませておきたいとも言いました。(夏目漱石『こゝろ』1914年)
「善は急げ」の語源・由来
「善は急げ」の由来は、『ダンマパダ』という仏教の経典です。
『ダンマパダ(Dhammapada・法句経)』は、スッタニパータと並ぶ最古の仏典であり、ブッダの言葉がもっとも原型に近い形で残っているといわれている凝縮した短い言葉で語られた詩集です。
「善を為すのを急げ。悪から心を退けよ。善を為すのにのろのろしたら、心は悪事をたのしむ。人がもし悪いことをしたならば、それを繰り返すな。悪がつみ重なるのは苦しみである。人がもし善いことをしたならば、それを繰り返せ。善いことがつみ重なるのは楽しみである。」
「善は急げ」ということわざは、「善は急げ、悪は述べよ」がもとのかたちです。
「良いと思ったことは、すぐに行動に移すべきであるが、後回しにしてしまえば、行動する必要すらなくなってしまうかもしれない」 という意味です。
「善は急げ」の蘊蓄
「善は急げ」の類義語
思い立ったが吉日(おもいたったがきちじつ)……何かしようと思いついたら、すぐ実行するべきであるということ
先んずれば人を制す(さきんずればひとをせいす)……他人よりも早く行動すれば、優位に立つことができるということ
先手必勝(せんてひっしょう)……相手よりも先に行動すれば、必ず勝つことができるということ
旨い物は宵に食え(うまいものはよいにくえ)……チャンスだと思ったことは、すぐに行動したほうがいいという例え
「善は急げ」の対義語
急いては事を仕損じる(せいてはことをしそんじる)……物事を慌ててやれば、損をするということ
待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)……今がよくない状態であっても、待てばチャンスがやってくるということ
待てば甘露の日和あり(まてばかんろのひよりあり)……根気よく待っていればそのうち良いことが起こること
騒ぐ烏も団子一つ騒がぬ烏も団子一つ(さわぐからすもだんごひとつ さわがぬからすもだんごひとつ)……騒いでも騒がなくても、目の前の団子は一つだから、どう行動しても大して変わらないということ
「先んずれば人を制す」のか、「急いては事を仕損じる」のか。
どちらにも一理あり、悩ましい限りです。などと言っている時点で、「先手必勝」はなくなっていますかね。