「教育未来創造会議」設置決定
政府は12月3日、第2次安倍政権下で発足した教育再生実行会議の後継となる「教育未来創造会議」の設置を閣議決定しました。
教育未来創造会議の開催について
令 和 3 年 1 2 月 3 日
閣 議 決 定
1.我が国の未来を担う人材を育成するためには、高等教育をはじめと
する教育の在り方について、国としての方向性を明確にするとともに、
誰もが生涯にわたって学び続け学び直しができるよう、教育と社会と
の接続の多様化・柔軟化を推進する必要がある。このため、「教育未来
創造会議」(以下「会議」という。)を開催する。
2.会議の構成員は、次のとおりとする。ただし、議長は、必要と認め
るときは、構成員の追加又は関係者の出席を求めることができる。
議 長 内閣総理大臣
議長代理 内閣官房長官、文部科学大臣兼教育再生担当大臣
構 成 員 厚生労働大臣、経済産業大臣その他内閣総理大臣が指名
する国務大臣及び我が国の未来を担う人材の育成に関し
優れた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が指名す
る者
3.会議の庶務は、文部科学省その他の関係行政機関の協力を得て、内
閣官房において処理する。
4.「教育再生実行会議の開催について」(平成 25 年1月 15 日閣議決定)
は廃止し、廃止前の教育再生実行会議が行った検討等については、会
議に引き継ぐものとする。
「教育未来創造会議」の構成員は次のとおりです。
教育未来創造会議 名簿(令和3年 12 月3日現在)
議 長 岸田 文雄 内閣総理大臣
議長代理 松野 博一 内閣官房長官
末松 信介 文部科学大臣兼教育再生担当大臣
構成員 金子 恭之 総務大臣
鈴木 俊一 財務大臣
後藤 茂之 厚生労働大臣
金子 原二郎 農林水産大臣
萩生田 光一 経済産業大臣
斉藤 鉄夫 国土交通大臣
山口 壯 環境大臣
安宅 和人 慶應義塾大学環境情報学部教授、ヤフー株式
会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)
安孫子 尋美 株式会社ニトリホールディングス取締役兼ニト
リ大学学長兼人材教育部ゼネラルマネジャー
阿部 守一 長野県知事
いとう まい子 女優、株式会社ライトスタッフ代表取締役、
研究者
大坪 正人 由紀ホールディングス株式会社代表取締役社長
加藤 史子 WAmazing 株式会社代表取締役 CEO
上岡 美保 東京農業大学副学長
清家 篤 日本私立学校振興・共済事業団理事長
関山 和秀 Spiber 株式会社取締役兼代表執行役
高橋 祥子 株式会社ジーンクエスト代表取締役、株式会
社ユーグレナ執行役員
中野 信子 脳科学者、東日本国際大学教授、京都芸術大
学客員教授
東原 敏昭 株式会社日立製作所執行役会長兼 CEO
日比野 英子 京都橘大学学長
日比谷 潤子 学校法人聖心女子学院常務理事
益 一哉 東京工業大学学長
「教育未来創造会議」がいかなるものであるかは、実際に始動してみないと分かりません。現時点で分かっていることは次の2点。
(会議の設置主旨)
我が国の未来を担う人材を育成するためには、高等教育をはじめとする教育の在り方について、国としての方向性を明確にするとともに、誰もが生涯にわたって学び続け学び直しができるよう、教育と社会との接続の多様化・柔軟化を推進する
(教育再生実行会議との関係性)
廃止前の教育再生実行会議が行った検討等については、会議に引き継ぐ
単なる看板の掛け替えという声も聞こえてきます。
「教育未来創造会議」の1番の特徴は、総理大臣直轄の機関だという点にあります。
教育問題については、通常は「中央教育審議会(中教審)」という文部科学大臣の下に設置された機関で審議されます。
総理大臣直轄の教育審議会というのは、中曽根康弘首相の「臨時教育審議会 (臨教審)」に始まります。
「臨時教育審議会 (臨教審)」(1984年~1987年)中曽根康弘
「教育改革国民会議」(2000年~2001年)小渕恵三、森喜朗
「教育再生会議」(2006年10月~2008年1月)安倍晋三
「教育再生懇談会」(2008年2月~2009年11月)福田康夫
「教育再生実行会議」(2013年1月~2021年12月)安倍晋三(菅義偉)
中曽根氏の「臨教審」、安倍晋三氏の「教育再生会議・教育再生実行会議」など、総理大臣直轄の教育審議会は政治主導の教育改革を目的に設置されてきました。
政治主導の教育改革というのは、ときの首相の政治信条を色濃く反映しながら速やかに改革が進行します。中教審は、そうした改革を追認・補足する機関という実態になっていました。
中教審も当然政治の影響を受けていますが、総理大臣直轄の教育審議会は「政治支配」そのものです。それはときに危険でもあります。安倍氏主導の「教員免許更新制」など、およそ冷静さに欠けるヒステリックな施策がまかり通るのが総理大臣直轄のもつ怖さです。
総理大臣直轄の教育審議会というのは、常設しなければならないものではありません。設置には、総理大臣に文科省を飛び越して実現したい「何か」があるはずです。
岸田首相の胸中にある「何か」は何でしょうか。注視するしかありません。