教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

「全国学力テスト」事前対策問題を考える②

NHKの取材では、8つの県でことしの「全国学力テスト」に向けた「事前対策」が行われていたという調査結果が明らかになりました。

次の8県です。

岩手県

秋田県

山形県

宮城県

富山県

石川県

長野県

大分県

沖縄県

8県のうち秋田、宮城、富山、石川、長野の5県について、NHKニュースサイトで報道しています。

5県に共通しているのは、ニュースソースが教職員組合の調査であることです。つまり、直接「事前対策」を行いテストを担当した担任教師たちの「告発」です。

それらは例外なく、校長の「指示」や「圧力」によって行われています。担任教師たちは、そこに教育的価値がないことも、子どものためにならないことも、百も承知です。

校長の「上」には市区町村教育委員会があります。市区町村教育委員会の「上」には都道府県教育委員会があり、文部科学省があります。教育委員会は事前対策をやれという指示はしていないし、事実であれば「問題」だと言います。文科省も「問題」だと言います。

 

それでは、今回の問題は、事前対策を行って自校の点数を上げたいと思った校長がたまたま多数いたために起こったことなのでしょうか。

校長といえども、もとは担任教師です。現任校長の年齢からすれば、担任教師として全国学力テストを経験している人もいるでしょう。ならば、そこに教育的価値がないことも、子どものためにならないことも、百も承知のはずです。

 

校長は、いったいどこを見て仕事をしているのでしょう。

子どもの方を見ていないことは明らかです。

校長の目線の先には市区町村教育委員会があり、都道府県教育委員会があるのでしょう。

当の教育委員会は事前対策をやれなどと言っていないと言います。それは当然でしょう。おおっぴらに「指示しました」などと言えるわけがありません。しかし、校長たちに点数を上げろという有形無形の「厳命」や「圧力」があったに違いありません。

 

このたび報道されたなかで、沖縄県は平均点が最も低いグループに属します。同じく下位グループに属する大阪府で露骨な「尻叩き」があったように、沖縄も下位グループ脱出に躍起なのでしょう。

一方、秋田県、石川県、福井県などは最上位グループに属します。1位を奪うこと、1位を守ることという、上位には上位の至上命題があるのでしょう。

しかし、それが何だというの?

 

上位グループの県も下位グループの県もそれぞれの事情で「事前対策」を迫られているとしたら、それはもう「全国学力テスト」という事業自体に問題があるとしか考えられません。

 

「全国学力テスト」というしくみの問題は、なにも前出の特別な県に現れる問題ではありません。今回表面化しているのはまさに「氷山の一角」で、過去問をやらせる程度の事前対策はそれこそ全国津々浦々で行われていると考えるべきです。

 

さて、「全国学力テスト」の問題というとき、大きく2つあると思います。

1つは、全国津々浦々の学校で一斉に学力テストを行うということ自体の問題です。

もう1つは、テストで測っている学力の問題です。

報道されている問題は、前者の持つ問題がカタチになったものです。肝心の子どもを置き去りにして、何に躍起になっているのでしょう。

事前対策に躍起になっているテストで測っている学力の問題については、次回に触れます。