教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

きょうは何の日 12月28日

身体検査の日

 

1888(明治21)年12月28日、文部省(現:文部科学省)がすべての学校に毎年4月に生徒の「活力検査」(身体検査)を実施するよう訓令しました。

 

「雑学ネタ帳」によると、

当初の「活力検査」の検査項目は、体長・体重・臀囲(でんい:尻のまわり)・胸囲・指極(しきょく:両手を水平に伸ばした時の長さ)・力量・握力・肺量であった。

その後、1897年(明治30年)に「活力検査」は全面的に改められ、「学生生徒身体検査規程」が公布された。これにより、体力検査的な項目は削除され、発育に関係のある身長・体重・胸囲などが残された。

 

1897年以降については「Medical Tribune」より引用します。

1897年に学生・生徒身体検査規程が公布され身体検査となり、4月と10月の年2回実施することになった。1958年の学校保健法制定・公布により学校では健康診断となったが、船舶免許の身体検査、海技士身体検査、パイロットの航空身体検査などは残っている。

 

学校保健安全法施行規則
(昭和三十三年六月十三日文部省令第十八号)
第六条 法第十三条第一項 の健康診断における検査の項目は、次のとおりとする。
一 身長、体重及び座高
二 栄養状態
三 脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無
四 視力及び聴力
五 眼の疾病及び異常の有無
六 耳鼻咽頭疾患及び皮膚疾患の有無
七 歯及び口腔の疾病及び異常の有無
結核の有無
九 心臓の疾病及び異常の有無
十 尿
十一 寄生虫卵の有無
十二 その他の疾病及び異常の有無


引き続き、「Medical Tribune」より。

学校保健安全法施行規則の一部改正が2016年4月に施行され、坐高の検査・寄生虫卵の有無の検査は必須項目から削除された。また、四肢の状態が必須項目として加わり、検査に際しては四肢の形態・発育、運動器の機能の状態に注意することになった。

 

学校保健安全法施行規則の一部改正等について(通知)

Ⅰ 改正の趣旨
近年における児童,生徒,学生及び幼児(以下「児童生徒等」という。)の健康上
の問題の変化,医療技術の進歩,地域における保健医療の状況の変化などを踏まえ,
児童生徒等の健康診断の検査項目等の見直しを行うとともに,職員の健康診断、就学
時健康診断の様式等について,最近における状況や予防接種法(昭和23年法律第68号)の改正を踏まえた結果を反映するため,改正を行うものであること。

Ⅱ 改正の概要
1 児童生徒等の健康診断
(1) 検査の項目並びに方法及び技術的基準(第6条及び第7条関係)
ア 座高の検査について,必須項目から削除すること。
寄生虫卵の有無の検査について,必須項目から削除すること。
ウ 「四肢の状態」を必須項目として加えるとともに,四肢の状態を検査する
際は,四肢の形態及び発育並びに運動器の機能の状態に注意することを規定
すること。

 


青空文庫」に「身体検査日」という詩が掲載されています。

身体検査日
倉橋潤一郎

その日
学校では不安なざわめきが感ぜられ
私はいくつかのあわれなささやきに耳をいためた

つと立ち寄り
じっとその子の瞳をみていると
うちしずみものかなしいうったえるような色を浮べて
じっとみかえす

お前もか!
お前もか!
私は
うったえる瞳の奥にひろがる貧しい生活を思い浮べ
黙って生きてゆかねばならない
曇った運命をかなしんだ

先生!
蓄膿病ってなおるでしょうか?
淋巴腺、アデノイド、扁桃腺、中耳炎
みんなきりつめた様子で私をみつめるのだ
四十人中三十名
ものかなしい瞳の色が 今日
どうしてぬぐわれよう

朗々としみるような声が
くすぐるようにうつろにかわり
一節よんでは、はなをすすり始め
一句よんではとぎれ始め
だんだんとしわがれてくる
「もういい 代って」
そう言ったが
がばとうつぶし すすりなきにくれる
級長とその子
教室にたちこめてくる冷たい冷たい
涙のちんもくよ
私はかきむしられる心にむちうって立ち上った
そうして
子供たちに病気をなおす方法をとききかした

かんたんな塩のうがい法と
もひとつ
貧乏をなくす方法について
(『詩人』一九三六年十月号に石川究一郎名で発表 『倉橋潤一郎作品集』を底本)

時代は変わっても、いかにプライバシーに配慮しても、様々な思いをもつ子がいることを忘れてはなりません。