教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

説明文を読む(7)4年「アップとルーズで伝える」①

4年「アップとルーズで伝える」(光村図書)

 

「アップとルーズで伝える」は、「筆者の考えをとらえて、自分の考えを発表しよう」という単元を構成する2つの教材の1つで、「本教材(主教材)」の位置づけです。

 

単元の配当時間は8時間で、そのうち「アップとルーズで伝える」には6時間が充てられています。

「アップとルーズで伝える」の6時間のうち、「読み」に与えられたのは第3時から第5時までの3時間です。

 

第3時~第4時

3「アップとルーズで伝える」を読み,段落どうしの関係を考える。 

 ・段落と写真の対応関係を考える。

 ・筆者の考えが書かれた文章を見つける。

 ・筆者の考えがどのように伝えられているかをつかむ。

 ・それぞれの段落どうしの関係を捉える。

第5時

4「アップ」と「ルーズ」をどのように対比しながら説明しているかを捉える。

 ・「アップ」と「ルーズ」を対比して説明することのよさについて考え,話し合う。

 

まずは、教材研究。

「アップとルーズで伝える」の話題は、題名そのものであり、繰り返し出てくる「アップとルーズ」です。

本文は8つの段落で構成されています。

〈初め〉①②③段落

「問い(話題提示)」の文が書かれているのが〈初め〉です。

③段落に「アップとルーズでは、どんなちがいがあるのでしょう。」という「問い」の文があります。したがって、①~③段落が〈初め〉です。

〈中〉④⑤段落

〈中〉の段落を見つけることはしません。〈終わり〉を見つけます。そして、〈初め〉と〈終わり〉を除いた、残りの段落がすべて〈中〉になります。

〈終わり〉⑥⑦⑧段落

〈終わり〉には、「まとめ」が書かれています。「まとめ」を書くときの常套句「このように」が、⑥段落の冒頭にあります。

 

3「アップとルーズで伝える」を読み,段落どうしの関係を考える。

学習活動例は、教科書の「学習」ページ「とらえよう」の内容と合致しています。

・段落と写真の対応関係を考える。

授業の始まりは、教材文の上にある写真について語り合い、内容を想像するところからスタートしましょうか。(デジタル対応なら画面を見ながら、さもなくば拡大コピーを掲示して…)

 

一人読み、音読。

2つの指示を出します。

1 段落番号を付けながら読むこと。

2 4枚の写真について書いている段落を探しながら読むこと。

 

段落と写真の対応関係を確認する。

写真は登場順にA、B、C、Dとする。

Aの写真…①段落

Bの写真…②段落

Cの写真…④段落

Dの写真…⑤段落

 

・筆者の考えが書かれた文章を見つける。

「学習」には、「筆者は第三段落で自分の考えを書いています。」と述べた後「筆者の考えが書かれた一文を、書きぬきましょう。」と指示しています。

2つの展開を用意しました。

1つは、指示通りの展開です。「第三段落」と限定すれば、ほぼ外すことなく見つけられそうです。

もう1つは、段落を限定せず「筆者の考えが書かれた一文を見つけましょう」と問う展開です。難度が上がります。どちらをとるかは、目の前の子たちの実態と指導者の思い次第です。この場合は、いきなりノートに書き抜かず、教科書に傍線を引くとかチェックを入れるとかします。確認後にノートすれば、むだに間違いを消す必要がなくなります。

筆者の考えは、

③段落 何かを伝えたりするときには、このアップとルーズを選んだり、組み合わせたりすることが大切です。

 

このあたりから第4時になるでしょうか。

「学習」は、つづけて「その一文と同じような文が、他の段落にもあります。どの段落でしょうか。」と問うています。

それは、⑧段落にあります。

送り手は伝えたいことに合わせて、アップとルーズを選んだり、組み合わせたりする必要があるのです。

 

そして最後に、「筆者は、なぜ二度、同じようなことを書いたのでしょう。」と、筆者の意図を考えさせています。

それは、学習活動例の

・筆者の考えがどのように伝えられているかをつかむ。

に該当する部分です。

これは子どもに自由に発言させて集約していけばいいでしょう。

筆者は「そうすること(註:伝えたいことに合わせて、アップとルーズを選んだり、組み合わせたりすること)で、あなたの伝えたいことをより分かりやすく、受け手にとどけることができるはずです。」という一文でこの文章を終えています。筆者はこのメッセージをより強く、より確実に読者に伝えるために、〈初め〉と〈終わり〉の段落で繰り返し書いたということだと思います。

 

ちなみに、〈初め〉と〈終わり〉に結論(まとめ・主張)が書かれている文章構成を、「両括型(りょうかつがた)」といいます。

「括」は「まとめる」という意味です。三段構成の〈初め〉と〈終わり〉の両方にまとめがあるので「両括型」です。

小学校で学ぶ説明文の基本は、〈初め〉に「問い・話題提示」があって〈終わり〉に「結論・まとめ」がある「尾括型(びかつがた)」です。

また、〈初め〉に「結論・まとめ」があるものを、「頭括型(とうかつがた)」といいます。読解でであうことは稀ですが、意見文を書いたり、スピーチをしたりする際の基本型です。

 

・それぞれの段落どうしの関係を捉える。

具体的には、

「学習」の「●第一段落、第二段落は、第三段落とどのような関係があるでしょうか。」という設問を指しているようです。

①段落 Aの写真場面の説明。

②段落 Bの写真場面の説明。

③段落 「初めの画面のように、広いはんいをうつすとり方を「ルーズ」といいます。次の画面のように、ある部分を大きくうつすとり方を「アップ」といいます。

話題である「アップとルーズ」は、子どもたちにとって耳慣れた一般的な言葉ではありません。それをまずは具体的な場面で「見える化」し(①段落②段落)、③段落で抽象的な言葉に置き換えています。そうすることで、読者を筆者の世界に誘い入れています。

 

 

次回は、

第5時

4「アップ」と「ルーズ」をどのように対比しながら説明しているかを捉える。

 ・「アップ」と「ルーズ」を対比して説明することのよさについて考え,話し合う。