教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

次期学習指導要領の方向性示される

8月31日に開催された中央教育審議会教育課程企画特別部会において、文部科学省は「学習指導要領改定に向けた審議まとめ(素案)」を示した。

 

「素案」は399ページもある。

学習指導要領改定に向けた審議まとめ(素案)

新聞報道で概要をみてみよう。

「毎日新聞」

 

全教科にAIの記述 学習指導要領改定に向け、文科省が素案

配信

コメント182件
毎日新聞

 

「読売新聞」

 

次期学習指導要領は「人間ならでは」の思考力や表現力育成へ…情報教育の大幅拡充・柔軟なカリキュラム編成導入が柱

 

 中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別部会は31日、小中高校で2030年度以降に順次実施される次期学習指導要領の審議まとめ素案を公表した。情報教育の大幅な拡充や、学校の裁量で柔軟なカリキュラムを編成できる仕組みの導入が柱。AI(人工知能)が急速に浸透する中、メディアリテラシーの向上や、人間ならではの思考力や表現力の育成を目指す。 

次期学習指導要領の主なポイント

 次期指導要領は、小学校は30年度、中学校が31年度から全面実施する。高校では32年度に入学した生徒から順次、実施する予定だ。

 情報教育の拡充で、小学校では3年生以上が学ぶ「総合的な探究の時間」(現・総合的な学習の時間)に「情報の領域」を新設。中学校では、「技術・家庭科」から技術科を分離し、新教科「情報・技術科」をつくる。小学校で28年度から、中学校で29年度から段階的に先行実施する方針だ。

 小学生はAIの出力の特徴やネット依存といったリスクへの対応、情報の信頼性の確認などルールを守って安全に利用する方法を学習。中学生は、SNSで似た考えの人たちとつながって考え方が偏る「エコーチェンバー」などコンピューターのアルゴリズム(処理手順)が人の認知や行動に与える影響を考え、情報発信の影響や責任を適切に判断しながら活用する能力を培う。学習へのAI活用も初めて示され、英語などでの利用を想定している。

 情報の新教科・領域の授業時数(コマ数)は小学校では最大週約1コマ(1コマ45分)、中学校では最大週1~2コマ(1コマ50分)を充てる。プログラミングなど他教科で扱ってきた内容を新教科・領域に集約し、他教科を数%ずつ削ることで、1年間に学ぶコマ数の総量は増やさない。

 

 カリキュラムの柔軟化では、小中学校で児童生徒や地域の実態に応じてコマ数を増減できる「調整授業時数制度」を導入する。各校の裁量で、週1コマを超える教科のコマ数を最大15%ほど減らし、苦手教科への上乗せや個別学習、教員研修などの時間に充てられるようになる。さらに、「特別の教育課程」の新設・拡充で、不登校や特異な才能のある児童生徒などへの個に応じた指導・支援を充実させる。いずれも28年度から先行実施する計画だ。

 文科省では、コマ数を減らしても各教科で適切な指導ができるよう教科書の内容をスリム化する方針だ。

  ◆学習指導要領= 小中高校の教育の目標や内容について国が定める基準。約10年に1度改定され、授業や教科書の基になる。中央教育審議会が審議し、年内にも文部科学相に答申する見通しだ。小中学校向けは今年度末に、高校向けは来年度末に改定される予定。

読売新聞にある「『人間ならでは』の思考力や表現力育成へ」という文言は、先に特集した「 AI時代に必要な『学ぶ力』とは」の内容と符合する。

 

ところで、経済団体の教育提言がその後の文科省の施策に大きな影響を持ってきたことは歴史が雄弁に語っている。

教育提言の目指しているものを読み解けば、学習指導要領がどこに向かおうとしているのかが見えてくる。直近の提言を紹介する。

■公益社団法人 経済同友会

 価値創造人材の育成に向けた教育トランスフォーメーション(EX)
 ~個の主体性を尊重し多様性を育てる教育とそれを支える社会環境の整備~

                        2023年4月5日  

www.doyukai.or.jp

                       

■一般社団法人 日本経済団体連合会

 2040年を見据えた教育改革

 ~個の主体性を活かし持続可能な未来を築く~

                    2025年2月18日

www.keidanren.or.jp

とりわけ経団連の提言は精読するとよさそうだ。今回は紹介にとどめたい。

・領域の授業時数(コマ数)は小学校では最大週約1コマ(1コマ45分)、中学校では最大週1~2コマ(1コマ50分)を充てる。プログラミングなど他教科で扱ってきた内容を新教科・領域に集約し、他教科を数%ずつ削ることで、1年間に学ぶコマ数の総量は増やさない。 カリキュラムの柔軟化では、小中学校で児童生徒や地域の実態に応じてコマ数を増減できる「調整授業時数制度」を導入する。各校の裁量で、週1コマを超える教科のコマ数を最大15%ほど減らし、苦手教科への上乗せや個別学習、教員研修などの時間に充てられるようになる。さらに、「特別の教育課程」の新設・拡充で、不登校や特異な才能のある児童生徒などへの個に応じた指導・支援を充実させる。いずれも28年度から先行実施する計画だ。

関東大震災・朝鮮人虐殺に思う

朝の打ち合わせが終わって、教室へ向かう廊下でのことだった。

隣のクラスの担任が、私を含めて3人の同僚に問いかけてきた。

「関東大震災のとき朝鮮の人が殺されたってAさんが言ってるんだけど、知ってる?」

教師になって2年目、1970年代終わりのことだった。

 

私はそれまで、そうした話題にであったことがなかった。まったく知らなかった。

4年生のAさんが知っていることが不思議だったが、当時の私には真偽を確かめる術もなかった。

 

Aさんが5年生になった時、私は彼女の担任になった。

Aさん一家は、彼女の生後2回の転居を経て私の教室にいた。そして、そのルーツは朝鮮半島にあるようだった。母親が幼い娘に語った関東大震災の話と、2回の転居。彼女は鋭い人権感覚を持った子で、ゆれゆえ心は傷つきやすかった。

彼女が教室にいたおかげで、私は朝鮮人虐殺の事実を深く知るようになった。在日朝鮮人問題にも関心を持つようになった。

 

関東大震災の発生から103年となった9月1日、犠牲者の追悼式典が行われた。小池東京都知事は、今年も「大法要で全ての方々に対しての慰霊を行っている」として追悼文を送らなかった。「天災で亡くなった方々と、人の手によって殺された人たちの弔い方は違う」という式典実行委員長の言葉をかみしめる。

知事の態度が、「虐殺はなかった」などという主張に力を与えてはいないか。さらに言えば、かつての私のような無知な市民を無知のままにしておくことになっていないか。無知は、差別を助長する。

 

いまも私は思う。

もしも4年生のAさんの担任が私で、ある日ふいに関東大震災の話をされていたら…。

「先生、知ってる?」

彼女はどんな思いでこの話をし、担任の言葉に何を期待していたのだろう。

「先生、どう思う?」

AI時代に必要な「学ぶ力」とは⑤

今井むつみさんの近著に『学力喪失 --認知科学による回復への道筋』(岩波新書 2424.9 1160円+税)がある。

今回のシリーズの①で紹介した文科省中央教育審議会の教育課程企画特別部会(2025年4月25日)の配付資料や新聞記事の内容は、同書に詳述されている。付箋を貼りながら要点をまとめようと試みているのだが、なかなか難しい。実際に読んでもらう方が早道のようだ。

 

知識が「記号接地」するというのは、私流に言い換えれば知識に生活感を持たせるといったニュアンスと理解した。「生きた知識」の意味合いとほぼ同義と捉えてよいだろう。

それは、全国学力テストで課題とされ指導改善の方策が模索されている「生活の具体的な場面で活かされる算数・数学」という問題と、基本的に同じみたいだ。

 

AIの膨大な知識は記号接地しない。つまり、知識を具体的な生活経験と結びつけたり、想像したりはしない。--「生きた知識」は人間の領域だ。

 

アブダクション推論は、異なる分野の知識を組み合わせたり、比喩や類推を用いて新たな知識を創造する推論である。--記号接地しない生成AIはアブダクション推論をしない。人間の領域だ。

 

学習につまずいている子どもたちは、基本概念の記号接地をしていない。たとえば、分数の計算はできても分数の概念を理解していない。つまり、「生きた知識」つながらない。

記号接地を助ける指導として、遊びを通じて学ぶ「プレイフル・ラーニング」がある。その理論と実践については、『学力喪失』に詳しい。

 

いずれにせよ、AIはますます学校教育のなかに入ってくるだろう。

「個別最適」な学びは、AIによって一層進むだろう。それによって、テストの点数がいくらか上がったとしよう。それは「成果」なのか。「生きた知識」の視点からは、胸を張ってそうだと言い切れない。

そもそも子どもにどんな力をつけたいのか。原点はここにある。そのためにAIをいかに活かすのか、あるいは頼らないのか。学校現場は問われ続けることになる。

 

奇しくも、8月21日付の朝日新聞「社説」は、勉強時間減少を取り上げた中で次のように指摘する。

 わからないことは生成AIに聞けば、一応の「答え」が示される時代になった。知識を詰め込むだけの勉強であれば、意味を感じなくなる子どもが増えても不思議はない。
 必要なのは、例えば身近な自然現象や地域の出来事とのつながりを意識した授業を通して学ぶ意味を明確化する、子ども自身が見つけた課題に取り組む探究学習などを通じ自発的な学びを促す、といった地道な実践ではないか。

 

次期学習指導要領の改訂が近づいている。その前に、『学力喪失』を一読しておいてはどうだろう。

 

AI時代に必要な「学ぶ力」とは④ 人が行うアブダクション推論

アブダクション推論

今回は、代表的な3つの推論の1つ、「アブダクション推論」について。

これも生成AIに訊いた。

 

アブダクション推論(仮説推論)とは、

「起こった出来事を見て、『いちばんありそうな理由はこれだろう』と考える方法です。

中学生向けに言うと、

「なぜこうなったんだろう?」と考えて、一番ありそうな答えを予想すること

です。


まずは身近な例

例① 教室に入ったら床がぬれていた

教室に入ると、床がぬれています。

あなたは理由を知りません。

そこで、

  • 雨が降り込んだのかな?
  • 誰かが水をこぼしたのかな?
  • 掃除をしたばかりかな?

と考えます。

その中で、

「掃除をしたばかりだから床がぬれているのだろう。」

と予想したとします。

これがアブダクション推論です。

本当に掃除をしたかどうかはまだ分かりません。

「一番ありそうな説明」を考えているだけです。


探偵の例

例② 名探偵

探偵が現場を見ると、

  • 窓が割れている
  • 足跡がある
  • 財布がなくなっている

これを見て、

「泥棒が窓から侵入したのだろう。」

と考えます。

これもアブダクションです。

まだ証拠を集めている途中なので、「たぶんこうだ」という仮説を立てています。


学校の例

例③ テストの点数

友達がいつもより30点も高い点を取りました。

理由はまだ分かりません。

そこで、

  • 毎日勉強したのかな?
  • 塾に行き始めたのかな?
  • 問題が得意だったのかな?

と考え、

「毎日勉強したから点数が上がったのだろう。」

と予想します。

これもアブダクションです。


帰納・演繹・アブダクションを比べる

同じ「地面がぬれている」という場面で考えてみましょう。

① 帰納推論

  • 昨日も雨で地面がぬれた
  • 一昨日も雨でぬれた
  • その前も雨でぬれた

「雨が降ると地面はぬれることが多い。」

経験からルールを見つけています。


② 演繹推論

  • 雨が降れば地面はぬれる。
  • 今日は雨が降った。

だから地面はぬれている。

ルールを使っています。


③ アブダクション

  • 地面がぬれている。

「雨が降ったのだろう。」

原因を予想しています。

ただし、実際には

  • 散水した
  • 水道管が壊れた
  • 誰かが水をまいた

など、別の理由かもしれません。


イメージすると覚えやすい

3つの推論を矢印で表すと、

  • 帰納推論:具体例 → ルール
  • 演繹推論:ルール → 結論
  • アブダクション:結果 → 原因(仮説)

日常生活では毎日使っている

例えば朝起きて、

「あれ? お母さんの車がない。」

すると、

「もう仕事に行ったんだろう。」

と考えます。

でも実際には、

  • 買い物に行った
  • ガソリンを入れに行った
  • 病院に行った

など別の可能性もあります。

このように、限られた情報から最もありそうな説明を考えるのがアブダクションです。


中学生向けに一言でまとめると

アブダクション推論とは、「起こった出来事を見て、『なぜこうなったのだろう?』と、一番ありそうな理由を予想する考え方」です。

3つの推論の違いを一言で覚えるなら

  • 帰納推論経験からルールを見つける。
  • 演繹推論ルールを使って結論を出す。
  • アブダクション推論結果を見て原因を予想する。

この3つは科学や医療、探偵の推理、そして私たちの日常生活でも頻繁に使われている、大切な考え方です。

 

AI時代に必要な「学ぶ力」とは③ 数学で使う演繹推論

演繹推論

代表的な3つの推論の1つ、「演繹推論」について。

これも生成AIに訊いた。

演繹推論(えんえきすいろん)とは、

 

「一般的なルール(前提)」から、「個別の場合の結論」を導く考え方です。

中学生向けに言うと、

 

「もし○○なら、△△だ。これは○○だから、△△だ。」

という形で考える方法です。

 

まずは一番わかりやすい例

例① 動物の話

  • すべての犬は動物である。(一般的なルール)

  • ポチは犬である。(個別の事実)

すると、

 

ポチは動物である。

という結論が出ます。

これは演繹推論です。

なぜなら、「すべての犬は動物」というルールが正しく、「ポチは犬」という事実も正しければ、結論は必ず正しくなるからです。

 

学校の例

例② 宿題のルール

先生が

 

「宿題を提出した人は、再提出は不要です。」

と言いました。

そして、

 

「山田さんは宿題を提出した。」

という事実があります。

すると、

 

「山田さんは再提出は不要である。」

と結論できます。

これも演繹推論です。

 

数学の例

例③ 偶数

数学では、

 

「偶数は2で割り切れる。」

というルールがあります。

そして、

 

「8は偶数である。」

だから、

 

「8は2で割り切れる。」

これは絶対に正しい結論です。

数学でよく使う「定理を使って答えを出す」のは、ほとんどが演繹推論です。

 

演繹推論の形

基本の形は次の3つです。

もしAならばBである。

これはAである。

 

したがって、これはBである。

もし雨が降れば、地面はぬれる。

今日は雨が降っている。

 

したがって、地面はぬれている。

 

帰納推論との違い

演繹推論

帰納推論

一般 → 個別

個別 → 一般

結論は必ず正しい(前提が正しければ)

結論は「たぶん正しい」

数学・ルールの適用で多い

観察・経験から学ぶときに多い

比べてみよう

演繹推論

  • すべての鳥は卵を産む。

  • スズメは鳥である。

  • → スズメは卵を産む。

帰納推論

  • 見たスズメは卵を産んだ。

  • 見たハトも卵を産んだ。

  • 見たカラスも卵を産んだ。

  • → 鳥は卵を産むらしい。

演繹は「ルールを使う」、帰納は「ルールを見つける」と考えると覚えやすいです。

 

日常生活での演繹推論

  • 「18歳未満はこの映画を見られない」 → あなたは15歳 → 見られない

  • 「赤信号では止まる」 → 今は赤信号 → 止まる

  • 「図書室では静かにする」 → ここは図書室 → 静かにする

私たちは毎日、ルールを当てはめて行動しています。これが演繹推論です。

 

中学生向けに一言でまとめると

 

演繹推論とは、「決まりやルールから、個別の場合の答えを導く考え方」です。

数学の証明や学校の規則、ゲームのルールなど、「ルールを使って正しい答えを出す」ときに活躍するのが演繹推論です。

 

ルールを当てはめて行動しているのが演繹推論。

意識するものとしては、数学の証明で使うあのパターンだ。

生活の場においてはごくごく当たり前に、普通に、あるいは無意識のうちに行っている行為ということだ。AIに頼るまでもない。(余談だが、生成AIは数学が苦手だという報告もある)

 

 

AI時代に必要な「学ぶ力」とは② AIが得意な帰納推論

「アブダクション推論」という言葉は、私には馴染みがない。まずは、言葉の意味を整理することから始めたい。

 

そもそも「推論」とは何ぞや。

生成AIに、「中学生にも分かるように」「具体例を入れて」という条件で説明してもらった。

 

推論(すいろん)」とは、

今ある情報をもとにして、まだ分かっていないことを考えて答えを見つけようとすることです。

もっと簡単に言うと、

**「ヒントを集めて、頭の中で考え、答えを予想すること」**です。

例1:探偵になったつもりで考える

朝、学校に行くと教室の床がぬれています。

あなたが知っていることは次の3つです。

  • 外は雨が降っている。
  • 窓が少し開いている。
  • 水たまりが窓の近くにある。

このとき、

「雨が窓から入ってきたのかもしれない。」

と考えることが推論です。

実際に見たわけではありませんが、手がかりをもとに考えています。


例2:友達の様子から考える

友達が今日は

  • あまり話さない。
  • 元気がない。
  • 給食もあまり食べない。

という様子だったとします。

そこで、

「何か心配なことがあったのかな。」

と考えるのも推論です。


推論は毎日使っている

実は、私たちは毎日の生活でたくさん推論をしています。

例えば、

  • 空が黒い雲でおおわれている → 「もうすぐ雨が降りそう。」
  • パンのいいにおいがする → 「近くにパン屋さんがあるのかな。」
  • テストの日程が近い → 「そろそろ勉強を始めたほうがいい。」

これらはすべて、今ある情報から考えているので推論です。

 

それにしても、生成AIは賢い。とても分かり易い。

つまり、「推論」とは私たちが毎日の生活の場でごく普通に行っている行為なのだ。

 

そうした「推論」を分類すると、代表的なものが「帰納推論」「演繹推論」「アブダクション推論」の3つになるらしい。

 

帰納推論

生成AIに訊いた。

帰納推論(きのうすいろん)とは、

いくつかの具体的な事実から、「たぶんこういうルールだろう」と一般的な結論を導く考え方です。

具体例① 天気

例えば、あなたが次のようなことを経験したとします。

  • 月曜日:朝焼けがきれいだった → 午後に雨が降った
  • 水曜日:朝焼けがきれいだった → 午後に雨が降った
  • 金曜日:朝焼けがきれいだった → 午後に雨が降った

これらを見て、

「朝焼けがきれいな日は、午後に雨が降ることが多いのかもしれない。」

と考えるのが帰納推論です。

ただし、「必ず雨が降る」と言えるわけではありません。「これまでの経験から、そう考えられそうだ」という推測です。


具体例② 学校のテスト

ある生徒が次のことに気づきました。

  • 英単語を毎日10分勉強したテスト → 90点
  • 次のテストも毎日10分勉強 → 88点
  • その次のテストも毎日10分勉強 → 92点

そこで、

「英単語は毎日少しずつ勉強すると点数が上がりやすい。」

と考えます。

これも帰納推論です。


具体例③ 動物

動物園で見た白鳥は

  • 1羽目も白い
  • 2羽目も白い
  • 3羽目も白い
  • 10羽見ても全部白い

すると、

「白鳥は白い鳥なんだ。」

と思うかもしれません。

しかし実際には、オーストラリアには黒い白鳥(ブラックスワン)がいます。

つまり、

たくさんの例を見ても、例外があることもある

というのが帰納推論の特徴です。


帰納推論のポイント

帰納推論は、「証拠を集めて、もっともらしい結論を考える方法」です。

例えば、

  • 何度も観察する
  • 共通点を見つける
  • 「こういうルールかもしれない」と考える

という流れになります。

 

なるほど。

証拠となるサンプル数は、一人の人間がどんなに努力してもコンピューターの蓄積に及ぶはずがない。そして、サンプル数が多ければ多いほど、帰納推論の精度が高くなる。AIの得意領域だというのは納得だ。

つまり、AIの時代において、この領域は積極的にAIを活用すれば良いということになる。ただし、AIに指示を出すのは人間だ。指示が適切でなければ、当然AIの回答も適切さを欠くことになる。

 

2026全国学力・学習状況調査の結果公表から見えること

8月3日、2026全国学力・学習状況調査の結果が公表された。

 

注目したいのは、児童生徒への質問調査結果と学力調査の正答率をクロス集計した部分である。とは言っても、何ら驚くようなことはなく、きわめて想定内の事実が示されているのだが。

 

該当する質問項目を小学校の集計表でみると、次のようになる。項目の次にある数字は、左が国語、右が算数のスコア。

(18-1) 課題は終えるまでやり通していますか 0.226 0.215
(18-2) 課題が難しくなると、さらに努力していますか 0.201 0.224
(18-3) 物事をじっくり考えることは好きですか 0.187 0.201
(19-1)

物事の仕組みを知ることは好きですか

0.170 0.218
(19-2) 新しいことを学ぶのは好きですか 0.174 0.208
(19-3) 問題の解決策を見つけることは好きですか 0.252 0.312

 

「学びの主体的な調整」に関して、次の項目に注目したい。

「学びの主体的な調整」とは自分の思考や行動を客観的に把握し認識(メタ認知)しながら学習を自己調整し、思考や行動を修正したり、次の思考や行動につなげたりする力のことをいう。

 

 

次に、ICT活用と学力について。

 

関連して、次の項目も。

 

成績上位の層であれ、下位の層であれ、特定の個人がすべての項目に該当するわけではない。しかし、おおよその傾向として、こんな姿が浮かんでくる。

 

成績上位の子は、「主体的・対話的で深い学び」ができ、「学びの主体的な調整」もできる。また、ICT機器を有効に活用し、学びに生かしている。学習と直接関係のないSNSや動画視聴の時間は短い傾向にある。

 

成績下位の子は、上の記述を反転させればよい。

問題は、記述の始まりをどこにするかだ。いわゆる「できる子」は、大体が上の記述通りに進む。つまり、主体的な学びがあるので主体的な調整ができ、知識理解やスキルがあるからICT機器を有効に使える。

下位にある子の場合はさまざまだ。勉強が分からないので、SNSや動画視聴にはまっている子もいるだろう。逆にSNSや動画視聴にはまった結果、勉強が分からなくなった子もあるだろう。あとは、負の連鎖である。

 

AIの時代を迎えている。

AIを使いこなす力は、昔は算盤ができること、近くはオフィスソフトを使えることが必須だった時代があったように、仕事に就くための必須能力になるかもしれない。

AIの有効活用は、成績上位の子の学びをさらに進めてくれるだろう。重要なのは、下位の子にとっても有用なツールにできるかどうかだ。将来がかかっている。

どこから手をつけるか。

まず、4時間以上のSNSや動画視聴はいくら何でも長すぎる。最低限の家庭学習の時間を確保しなければならない。その上で、基礎学力の回復を図っていくしかない。

生成AIは、何でもしてくれる道具ではない。「適切」な指示を出せば、それなりのあるいは想像以上の結果を出してくれる道具だ。「適切な指示」は人が出す。それには相応の知識がいる。構想力もいる。問いを立てる力もいる。スキルもいる。……結局、基礎基本の学びに戻ってくる。

とにもかくにも、できるところから始めなければ。

 

詳しくはまた別の機会に書きたい。今回は、文科省の速報に合わせた感想の速報にとどめおく。