教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

歴史教育の周辺

歴史教育の周辺(その16) 「歴史は9割が不明」という真実

「歴史は9割が不明」という真実 「私」から数えて1代前が父母。 2代前が祖父母。 3代前が曾祖父母。 4代前が高祖父母。 5代前が高祖父母の父母。 さて、5代前の「親族」の歴史を語れますか? 私の場合、高祖父母の父母が生きたのは江戸末期から明治時…

歴史教育の周辺(その15) 「江戸時代」という呪縛

「江戸時代」という呪縛 江戸時代には、厳しい身分制度があった。 江戸時代には、たびたび飢饉があった。 江戸時代には、子捨てや間引きがあった。 江戸時代には、百姓一揆や打ち毀しが頻発した。 ……………… 江戸時代の農村風景と言えば、鉛色をした厚い雲に覆…

歴史教育の周辺(番外) 「あさま山荘事件」から50年

記憶にも記録にもとどめなければならないことがあります。 きょう2022年2月28日は、「あさま山荘事件」終結からちょうど50年という節目の日です。 「あさま山荘事件」とは 連合赤軍のメンバー5人が(1972年)2月19日、軽井沢のあさま山荘に押し入り、管…

歴史教育の周辺(番外) 「2.26事件」歴史の証人

きょう2月26日は、「2.26事件」の起こった日です。 朝日新聞の読者投書欄「声」に、次の1文が載っていました。 2022.2.26 朝日新聞「声」 2・26事件で首相を発見した父 無職 福島 宣行 (群馬県 72) 「今日は2月26日だね」「ああ、そういえば……」。毎年…

歴史教育の周辺(その14) 「四民平等」は何だったのか

「四民平等」は何だったのか 歴史教育の周辺(その13)「士農工商」はなかったの続編になります。 「士農工商」という身分制度はなかったのなら、「士農工商」という身分制度を廃止した「四民平等」とは何だったのでしょう。 まず、言葉の整理をしておきまし…

歴史教育の周辺(その13) 「士農工商」はなかった

「士農工商」はなかった 20年ほど前までの小学校では、江戸時代には「士農工商」という身分制度があったと教えていました。 「士と農工商」と、支配身分と被支配身分とを区別して教えることもありました。 また、それぞれの身分間には序列があったとも教えて…

歴史教育の周辺(その12) 「イイクニ」ではない鎌倉幕府の始まり

「イイクニ」ではない鎌倉幕府の始まり 「イイクニつくろう 鎌倉幕府」って、歴史の年代を覚える語呂合わせの代表的なフレーズでした。 「でした」……過去形です。 「イイクニ」は1192年のことで、この年が鎌倉幕府の始まりのはずでした。 ところが最近は…

歴史教育の周辺(その11) 「明治維新」とは何か

「明治維新」とは何か 今回は、「明治維新」について考えます。 そもそも、「維新」とはどういう意味でしょう。 「維新」の出典は、中国の『詩経』「大雅」の「文王之什(ぶんおうのじゅう)」の一節にあります。 文王在上、於昭于天。 周雖舊邦、其命維新。…

歴史教育の周辺(その10) 「大化の改新」から「乙巳の変」へ

「大化の改新」から「乙巳の変」へ 小学校の歴史学習で最初におぼえる西暦は、「645年」です。 645年「大化の改新」 聖徳太子亡きあと、勢力を強めた蘇我氏に危機感をもった中大兄皇子は、中臣鎌足とともに蘇我氏を倒した。そして、元号を大化と改め天皇…

歴史教育の周辺(その9) 歴史に学ぶために歴史を学ぶ

歴史に学ぶために歴史を学ぶ 社会科が社会「科」であるためには、教科としての体系がなくてはなりません。 歴史学が歴史「学」であるためには、学問としての体系がなくてはなりません。 体系とは、「 個々別々の認識を一定の原理に従って論理的に組織した知…

歴史教育の周辺(その8) 人物中心の歴史 ~国を愛する心情を育てる~

人物中心の歴史 ~国を愛する心情を育てる~ 現行の小学校学習指導要領(平成 29 年告示)は、6年生の歴史学習の目標を次のように規定しています。 1 目標(1) 国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について興味・関心と理解を深…

歴史教育の周辺(その7) 歴史を消しゴムで消すことはできない

歴史を消しゴムで消すことはできない 今回は「硬派」です。 歴史を消しゴムで消すがごとき事態が進行しています。 教科書検定です。 中学社会や高校の地理歴史、公民の教科書にあった「従軍慰安婦」と「強制連行」の記述が消えました。 たとえば山川出版社「…

歴史教育の周辺(その6) 水戸黄門、清少納言、紫式部の共通点は?

水戸黄門、清少納言、紫式部の共通点は? 水戸黄門、清少納言、紫式部の共通点は何でしょう? 水戸黄門は男性。清少納言と紫式部は女性。 水戸黄門は武士。清少納言と紫式部は作家。 水戸黄門は江戸時代の人。清少納言と紫式部は平安時代の人。 清少納言と紫…

歴史教育の周辺(その5) 歴史の色

歴史の色 忘れもしません。 遠い昔、大学入学試験で日本史を選択しました。その問題の1つに、「冠位十二階の色を答えよ」というのがありました。 私は覚えていませんでした。ど忘れではなく、記憶した記憶がありませんでした。後で参考書を見ると、欄外の脚…

歴史教育の周辺(その4) 勝海舟、そして幕末マニア

勝海舟、そして幕末マニア 何ごとによらず、好きになるということは全ての始まりになります。 私の坂本龍馬好きは、龍馬が師と仰いだ勝海舟への関心へと向かいました。 私が読んだのは、子母沢寛(しもざわ かん)さんの一連の著作でした。 『勝海舟』(全6…

歴史教育の周辺(その3) 坂本竜馬という偶像

坂本竜馬という偶像 そもそも「坂本竜馬」と書いている時点で、『竜馬がゆく』にからめとられています。本人の署名などを見れば、「坂本龍馬」と書くのが筋でしょう。 この稿は「竜馬という偶像」ですので、「竜馬」で通します。 司馬遼太郎の「竜馬がゆく」…

歴史教育の周辺(その2) 司馬遼太郎という呪縛

司馬遼太郎という呪縛 司馬遼太郎さんほどすばらしい歴史小説作家はいない、と私は思っています。 と同時に、司馬遼太郎さんほど困った歴史小説作家はいない、とも感じています。 何と言っても、司馬さんの文章は圧倒的に面白いのです。読者を引き込み、「そ…

歴史教育の周辺(その1) 怪しげな歴史教師の誕生

じつは私、日本史(近代)専攻の社会科教師です。 ずっと小学校勤務でしたので中高の社会科免許状は使ったことがありません。(免許状は、2021年3月末で失効しました。) 社会科教師として教員免許を行使したことはありませんが、11回の6年生担任の折には…