教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

教育雑記帳

旭川 女子中学生死亡 「いじめにあわなければ自殺は起こらなかった」

3年前、北海道旭川市の公園で女子中学生が死亡しているのが見つかった問題で、遺族の求めで設置された市の再調査委員会は、いじめが原因の自殺だったとする調査結果をまとめました。 NHK「北海道 NEWS WEB」より引用します。 旭川 女子中学生死亡 市再調…

「頑張る」を科学する ③評価的「頑張る」

「頑張る」を科学する ③評価的「頑張る」 評価的「頑張る」とは、ある出来事(物事)の結果に対する教育評価としての「頑張る」のことです。 教師がよく使っているスタンプの中に、「がんばりました」「がんばりましょう」といったものがあります。提出した…

「頑張る」を科学する ②教育的「頑張る」

「頑張る」を科学する ②教育的「頑張る」 教育的「頑張る」とは、励ましの場における「頑張る」のことです。 これを、ある出来事(物事)の「前に行う励まし」と、「後に行う励まし」に分けて考察します。 ■ある出来事(物事)の前に行う励まし語としての「…

「頑張る」を科学する ①辞書的「頑張る」

前々から気になっていることがあります。 教育の場では(あるいは、子育ての場においても)、「頑張る」という言葉が多用されています。もはやそれは空気のような存在で、汎用性のある実に便利な言葉です。 しかし、それゆえに、「頑張る」という言葉を使う…

自己肯定感はほめれば育つってもんじゃない

朝日新聞に「多事奏論」というコラム欄がある。その筆者の一人である岡崎明子さん(くらし報道部・科学みらい部次長)の直近の記事の一部を抜粋して紹介する。 2024.3.30 朝日新聞「多事奏論」 自己肯定感も自己愛も「ほめて育てる」親は不適切? …

それでも同僚には「先生」、生徒は「呼び捨て」ですか?

とある職員室での会話。 「○○先生、最近のA(生徒の名前、呼び捨て)どう思います?」 「ああ、◇◇先生も気になってるんか。B(生徒の名前、呼び捨て)も含めて、あいつらのグループを何とかしないとあかんな。」 なんとも尻の据わりが悪い。2月17日の「…

「教職員『精神疾患で休職』最多」を考える

2023年12月22日、文部科学省は令和4年度に精神疾患を理由に病気休職した教職員数が全体の0.71%に当たる6539人で過去最多となったと公表しました。 このことに関して、「東洋経済education × ICT」に次のような記事が掲載されていました。引用して紹介しま…

不登校、いじめ「過去最多」を考える

文部科学省が実施する「児童生徒の問題行動・不登校調査」の2022年度の結果を、本日(2023年10月4日)、報道機関が一斉に報じています。 不登校 約29.9万人 過去最多 いじめ 約68.2万件 過去最多 重大事態 923件 過去最多 自殺 411人 過去2…

さねとうあきら『ばんざいじっさま』ーー8月の作家③

さねとうあきら文+井上洋介絵『ばんざいじっさま』編集・発行「ベトナムの子供を支援する会」1973年8月15日 初版発行 ※絵本は絶版になっています。『神がくしの八月 (定本さねとうあきらの本 1) 』(てらいんく 2003.7.1 1980円)に収載されています…

丸木位里・丸木俊『原爆の図』ーー8月の作家②

2023年8月6日。 広島に原爆が投下されてから78年目のきょう8月6日、朝日新聞「天声人語」の書き出し部分です。 それは格闘だったという。妻の俊が人物を描くと、夫の位里が「リアルすぎる」と上から墨をぶちまける。俊が描き直す。丸木夫妻が「原爆の図…

中沢啓治『はだしのゲン』ーー8月の作家①

ヒロシマ・ナガサキを題材にした子ども向けの作品は数多くあります。その中から1冊をと言われたら、躊躇なく『はだしのゲン』を挙げます。 『はだしのゲン』は、中沢啓治さんの被爆体験をもとにした自伝的作品です。 1973年に『週刊少年ジャンプ』での連載…

鹿島和夫さんの訃報に接して

神戸市で長く小学校教員をされた鹿島和夫さんが亡くなられたことを、今朝(2023.3.28)の朝日新聞の読者投稿で知りました。 地元・神戸新聞のコラム「正平調」が2月25日の記事で取り上げていますから、亡くなられたのは1カ月も前だったようです。 せんせい…

「LGBT理解増進法」とは何か⑥「人権擁護法案」

「人権擁護法案」 日本には「人権」という普遍的価値が存在しないのでしょうか。 「障害」「部落差別」「LGBT」という3つの人権法案をめぐる国会対応をみると、人権がきわめて政治的に、かつ恣意的に扱われていることが分かります。それは、人権以上の…

「LGBT理解増進法」とは何か⑤「障害者差別解消法」

「障害者差別解消法」 差別禁止条項を含む類似名称の法律が存在します。 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称「障害者差別解消法」)です。 法案は2013年4月26日に内閣が提出しました。 その後の経緯は、 4月26日:閣議決定、国会(第…

「LGBT理解増進法」とは何か④「部落差別解消推進法」 

「部落差別解消推進法」 民進、共産、生活、社民の4党が「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」(通称「LGBT差別解消法案」)を提出したのは、2016年5月27日です。 「LGBT差別解消法案」が提出される直前の2016年5…

「LGBT理解増進法」とは何か③「LGBT差別解消法案」

「LGBT差別解消法案」 時間軸は、2016年に遡ります。 2016年5月27日、民進、共産、生活、社民の4党より、「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」(略称「LGBT差別解消法案」)が提出されました。 一方で、自民党は20…

「LGBT理解増進法」とは何か②「LGBT理解増進法案」

「LGBT理解増進法案」 「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識の下に」という文言の扱いが焦点となっている「LGBT理解増進法案」(正式名称は「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律案」)とは次…

「LGBT理解増進法」とは何か①なぜいま「LGBT理解増進法」なのか

なぜいま「LGBT理解増進法」なのか ことの発端は、2023年2月3日夜の荒井勝喜総理大臣秘書官の発言にあります。 オフレコを前提にした記者団の取材に応じた際に、同性婚についての見解を問われ、 「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ。人権や価値観は…

「不登校特例校」が示すもの④(余録)

今回は、「不登校」の問題から離れます。 2月3日、朝日新聞の「声」欄に元教員の方の「発達障害 教育現場で必要なもの」と題する投書が載りました。それを紹介します。 投書は1月6日の「社説」をもとに書かれています。 朝日新聞 2023.1.6(社説)「発達…

「不登校特例校」が示すもの③

岐阜市立草潤中学校は、「不登校特例校」の「成功例」の一つだと言えます。 そして、そこにはいくつもの「ヒント」があります。 教育ジャーナリストの中曽根陽子さんの記事です。(詳しくは前回の記事を参照) 「バーバパパのがっこう」生徒が自分で選べる公…

「不登校特例校」が示すもの②

一市民が「不登校特例校」の内実を知ることは、ほとんど不可能です。 ここに、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんが「不登校特例校」を現地取材されたレポートがあります。一部を抜粋して引用させていただきます。 「不登校の生徒が登校率85%の奇跡」岐阜の"…

「不登校特例校」が示すもの①

2023年1月31日、文部科学省は過去最多となった不登校の対策方針を示しました。「有識者会議の意見を踏まえ、年度内にもとりまとめる」としています。 GIGA端末で不登校の兆候把握へ 相談希望や「アラート」導入毎日新聞 1/31(火) 19:27配信 文部科学省は31…

卯年・ウサギの本…『ガラスのうさぎ』(高木敏子)

『ガラスのうさぎ』(高木敏子) 『ガラスのうさぎ』高木敏子著(金の星社 1977年初版) Amazon 内容(「BOOK」データベースより) 1945年3月10日、東京大空襲。東京の町は、戦火につつまれた。焼け跡には、敏子の家にあった「ガラスのうさぎ」が、ぐに…

卯年・ウサギの本…『兎の眼』(灰谷健次郎)③

『兎の眼』のことを書いたので、ウサギとは無関係ですが『太陽の子(てだのふあ)』に触れないわけにはいきません。 『太陽の子』灰谷健次郎著(理論社 1978年初版) 1976年1月号より1978年6月号まで雑誌『教育評論』に連載され、同年理論社より単行本…

卯年・ウサギの本…『兎の眼』(灰谷健次郎)②

『兎の眼』のなかに、「みなこ当番」という見出しの章があります。 重い障害のある「みな子」をめぐるクラスの話し合いは、前章の「くもりのち晴れ」に出てきます。「当番」云々の提案は、一緒にずっといることでみな子ちゃんのことを理解できるし好きにもな…

卯年・ウサギの本…『兎の眼』(灰谷健次郎)

『兎の眼』(灰谷健次郎) 『兎の眼』灰谷健次郎著(理論社 1974年初版) Amazon 内容(「BOOK」データベースより) 大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきこうとしない一年生・鉄三。決して心を開かない鉄三…

教員の「心の病」が深刻だ(その3)

前回の記事の流れです。 「心の病で休職の公立校教員が過去最多 背景に長時間労働など」 「毎日新聞」の見出しです。 「心の病」の背景に、「長時間労働」の問題があります。 … … … それにしても、と考えます。 長時間労働、多忙ということでいえば、民間に…

教員の「心の病」が深刻だ(その2)

「心の病で休職の公立校教員が過去最多 背景に長時間労働など」 「毎日新聞」の見出しです。 「心の病」の背景に、「長時間労働」の問題があります。 田原総一朗さんは、教員の過酷な労働環境が子どもの教育に悪いを与え、ひいては教員不足につながっている…

教員の「心の病」が深刻だ

2021年度に「心の病」で1カ月以上休んだ公立学校の教員について、文部科学省が調査結果を発表しました。 新聞報道を紹介します。 心の病で休職の公立校教員、最多5897人 若い世代ほど高い割合朝日新聞デジタル12/26(月) 17:00配信 昨年度に「心の病」で休職…

「全国学力テスト」事前対策問題を考える③

「学力」というとき、そこには2つの顔があると思います。 わかりやすい言葉で表現すると、「テストの点数で測れる学力」と「テストでは測れない学力」です。 (異論もあるでしょうから、「私見では」と書き添えておきます。) ここでは、「テストの点数で測…