教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

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日本語探訪(その128) 故事成語「朝令暮改」

小学校のうちに知っておきたい故事成語の第50回は「朝令暮改」です。

 

朝令暮改

 

朝令暮改」の読み方

ちょうれいぼかい

 

朝令暮改」の意味

朝に政令を下して夕方それを改めかえること。命令や方針がたえず改められてあてにならないこと。朝改暮変。(広辞苑

 

朝令暮改」の使い方

時々の政府の科学的理解のない官僚の気まぐれなその日その日の御都合による朝令暮改の嵐にこの調査の系統が吹き乱される憂いが多分にあった。(寺田寅彦『新春偶語』1935年)
 

朝令暮改」の語源・由来

朝令暮改」の出典は、『漢書』「食貨志(しょっかし)」です。
食貨志は、土地制度、専売制度、貨幣制度など、王朝の財政経済に関する事柄が記述された編目です。

朝令暮改」は、晁錯(ちょうそ)による文帝への上奏文が由来となってできた言葉です。

 

勤苦如此、尚復水旱之災、急政暴賦、賦斂不時、朝令而暮改

 

【読み下し文】
勤苦此(かく)の如くなるに、尚(な)ほ復(ま)た水旱(すいかん)の災(わざはひ)あり、急政暴賦(ふ)、賦斂(ふれん)時ならず、朝(あした)に令して而(しか)も暮に改む。

 

【現代語訳】
農民の苦労はこのように大変なものであるのに、その上水害や灌漑に苦しめられ、加重な税(「賦」は農業税のこと)を性急に求められ、しかもそれが頻繁であり、朝出された命令が夜には変更されているといったありさまです。

 

朝令暮改」の蘊蓄

朝令暮改」の類義語

朝改暮変」(ちょうかいぼへん)
朝に改め、日暮れにまた変えること。一定の方針がなく絶えずかわって定まらないこと。朝令暮改

 

朝種暮穫」(ちょうしゅぼかく)
朝植えて暮れには収穫すること。方針が一定しないこと。
出典は『漢書』「郊祀志(こうしし)」です。

 


朝令暮改」の対義語

首尾一貫」(しゅびいっかん)
考え方や態度などが矛盾なく終始すること。終始一貫。

 

確乎不抜」「確固不抜」(かっこふばつ)
意志がしっかりしていて動揺しないこと。
出典は『易経』です。