小学校のうちに知っておきたい故事成語の第25回は「烏合の衆」です。
烏合の衆
「烏合の衆」の読み方
うごうのしゅう
「烏合の衆」の意味
規律も統制もない群衆、または軍勢。(広辞苑)
「烏合の衆」の使い方
元来これらの労働者はすべて烏合の衆で、なんら有力な労働組合を組織していなかったものである。(河上肇『貧乏物語』1916年)
「烏合の衆」の語源・由来
「烏合の衆」の出典は、『後漢書 』「耿弇(こうえん)伝」です。
發突騎以轔烏合之衆、如摧枯折腐耳。
【読み下し文】
突騎(とっき)を発して、以(もっ)て烏合(うごう)の衆(しゅう)を轔(りん)するは、枯(こ)を摧(くじ)き腐(ふ)を折(お)る如(ごと)きのみ。
【(別)読み下し文】
突騎を発して烏合の衆を躪(ふみにじ)るは、枯(かれたる)を摧(くだ)き腐(くされたる)を折(くじ)くが如(ごと)きのみ
『後漢書』には「烏合の衆」が複数回登場します。
「漢起,驅輕黠烏合之眾,不當天下萬分之一,而旌旃之所撝及,書文之所通被,莫不折戈頓顙,爭受職命。」(『後漢書』劉玄劉盆子列傳)
「今東帝無尺土之柄,驅烏合之眾,跨馬陷敵,所向輒平。」(『後漢書』隗囂公孫述列傳)
「我至長安,與國家陳漁陽、上谷兵馬之用,還出太原、代郡,反覆數十日,歸發突騎以轔烏合之眾,如摧枯折腐耳。」(『後漢書』耿弇列傳)
「又卜者王郎,假名因埶,驅集烏合之眾,遂震燕、趙之地。」(『後漢書』任李萬邳劉耿列傳)
「烏合の衆」の蘊蓄
「烏合」の蘊蓄
「烏合」とは「烏(カラス)」の集まりを言い、「烏の集まるように規律もなく統一もなく集まること。」(広辞苑)の意があります。つまり、「烏合」は「規律や統一のない集まり」の比喩ということになります。カラスの群れは無秩序でばらばらである、たくさん集まってがやがやと騒ぐだけだという生態観察から生まれた語です。
なぜカラスなのでしょう。
まず、群れをつくる鳥であることが必要です。ムクドリ、スズメ、ハクチョウ、ガン…などなど群れをつくる鳥は数多ありますが、それらの中でなぜカラスが選ばれたのでしょう。
たしかにムクドリのきれいな群れ飛ぶ姿には及びませんが、無秩序の代表に選ぶのはいかがなものでしょうか。
鳴き声のうるささがわざわいしたのでしょうか。
カラスはかしこい鳥です。40種類ほどの鳴き方で仲間とコミュニケーションをとっています。
一見バラバラに見える集団が、実は高度に自立した個の集まりで、互いにコミュニケーションを取り合っているとしたらどうでしょう。「烏合」というカラスにとって不名誉な比喩は、見直される時がくるかもしれません。
「烏合の衆」の類義語
獣聚鳥散
[よみ]
じゅうしゅうちょうさん
[意味]
規律も統制もなく、ただ集まっているだけの集団のこと。
[表記]
獣のように集まり、鳥のようにばらばらに散っていくという意から。
有象無象
[よみ]
うぞうむぞう
[意味]
とるに足りない人々を低くしてひとくくりに呼ぶ言い方。