教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その122) 故事成語「切磋琢磨」

小学校のうちに知っておきたい故事成語の第44回は「切磋琢磨」です。

 

切磋琢磨

 

「切磋琢磨」の読み方

せっさたくま

 

「切磋琢磨」の意味

玉・石などを切りみがくように、道徳・学問に勉め励んでやまないこと。また、仲間どうし互いに励まし合って学徳をみがくこと。(広辞苑

 

「切磋琢磨」の使い方

己は詩によって名を成さうと思ひながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。(中島敦山月記』1942年)
 

「切磋琢磨」の語源・由来

「切磋琢磨」の出典は、中国最古の詩集『詩経』の「衛風(えいふう)・淇奥(きいく)」です。

「切」は骨や象牙を切ることで、「磋」はそれらを研ぐことを意味します。また、「琢」は玉や石を打ち叩くことで、「磨」は磨くことを意味します。
詩経』ではこれらの語を用いて「切するが如く磋するが如く、琢するが如く磨するが如く」と、細工師の技工や完成した細工品にたとえて、衛の武公をたたえました。
そこから、切磋琢磨は学問や精神・人格を磨き、向上することを意味するようになりました。

 

瞻彼淇奥
緑竹猗猗
有匪君子


瑟兮僴兮
赫兮咺兮
有匪君子
終不可諼兮

瞻彼淇奥
緑竹青青
有匪君子
充耳琇瑩
会弁如星
瑟兮僴兮
赫兮咺兮
有匪君子
終不可諼兮

瞻彼淇奥
緑竹如簀
有匪君子
如金如錫
如圭如璧
寛兮綽兮
猗重較兮
善戯謔兮
不為謔兮

【読み下し文】

彼の淇奥(きいく)を瞻(み)れば
緑竹 猗猗(いい)たり
匪(ひ)たるある君子
するが如く(さ)するが如く
(たく)するが如くするが如し
瑟(しつ)たり僴(かん)たり
赫(かく)たり咺(くわん)たり
匪たるある君子
終に諼(わす)るべからず

彼の淇奥を瞻れば
緑竹 青青たり
匪たるある君子
充耳(じゆうじ) 琇瑩(しうえい)
会弁(くわいべん) 星の如し
瑟たり僴たり
赫たり咺たり
匪たるある君子
終に諼るべからず

【現代語訳】白川静

彼の淇奥を瞻るに
緑竹 簀(さく)の如し
匪たるある君子
金の如く錫(しやく)の如く
圭の如く璧(へき)の如し
寛たり綽(しやく)たり
重較(ちようかく)に猗(よ)る
善く戯謔(ぎぎやく)すれども
謔を為したまはず

淇の川くまを瞻るに
竹うるはしく茂りたり
うるはしき徳ある人は
切り出しやすりかけ
玉うちて磨くごと
ほこりかに おほどかに
かがやかに 姿たけく
うるはしき徳ある人は
とはに忘れかねつ

淇の川くまを瞻れば
竹うるはしく青みたり
うるはしき徳ある人は
耳玉にうつくしき玉
冠の玉は星のごと
ほこりかに おほどかに
かがやかに 姿たけく
うるはしき徳ある人は
とはに忘れかねつ

淇の川くまを瞻れば
竹うるはしく簀のごとし
うるはしき徳ある人は
金の如く錫の如く
圭の如く璧の如し
ゆたけくてのびやかに
腕かけによりたまふ
戯れを好みたまへど
わるふざけはしたまはず

 

「切磋琢磨」の蘊蓄

「切磋琢磨」の類語

研鑽(けんさん)
学問などを深くきわめること。研究。(広辞苑

 

修業(しゅうぎょう)
学業または技芸を習い修めること。しゅぎょう。(広辞苑

 

修練(しゅうれん)
精神や技能をみがききたえること。(広辞苑

 

修行(しゅぎょう)
精神をきたえ、学問・技芸などを修めみがくこと。また、そのために諸国をへめぐること。(広辞苑

 

砥礪切磋(しれいせっさ)
学問や人格を高めるために努力すること。
「砥」と「礪」と「磋」は磨くという意味。
「切」は骨などを切って加工すること。(四字熟語辞典)

 

精錬(せいれん)
よくねりきたえること。(広辞苑

 

切磋(せっさ)
骨・角・玉・石などを刻みみがくこと。転じて、道徳・学問などに勉め励むこと。(広辞苑

 

琢磨(たくま)
(玉などをすり磨く意から)学問・技芸に励んで、修練すること。(広辞苑

 

鍛錬(たんれん)
修養・訓練を積んで心身をきたえたり技能をみがいたりすること。(広辞苑

 

粒粒辛苦(りゅうりゅうしんく)
米を作る農民の一粒一粒にかける苦労のひととおりでないこと。転じて、ある仕事の成就にこつこつと苦労を重ねて努力すること。(広辞苑