小学校のうちに知っておきたい故事成語の第62回は「粒々辛苦」です。
粒々辛苦
「粒々辛苦」の読み方
りゅうりゅうしんく
「粒々辛苦」の意味
米を作る農民の一粒一粒にかける苦労のひととおりでないこと。転じて、ある仕事の成就にこつこつと苦労を重ねて努力すること。(広辞苑)
「粒々辛苦」の使い方
永い間かかって築きあげた家屋の群が一瞬にしてこぼたれ、粒粒辛苦のたまものである田園は再び荒野原と化していた。(武田泰淳『流砂』1952年)
「粒々辛苦」の語源・由来
「粒々辛苦」の出典は、李紳(りしん)の詩「憫農」です。
憫農
李紳
(其の一)
春種一粒粟
秋収万顆子
四海無閑田
農夫猶餓死
(其の二)
鋤禾日当午
汗滴禾下土
誰知盤中餐
粒粒皆辛苦
【読み下し文】
農(のう)を憫(あはれ)む
李紳(りしん)
春に種(う)える一粒の粟
秋に収める万顆(ばんか)の子(み)
四海(しかい)閑田(かんでん)無きも
農夫なお餓死す
禾(か)を鋤(す)いて、日(ひ)午(ご)に当る
汗は滴(したた)る禾下(かか)の土
誰か知らん、盤中(ばんちゅう)の餐(そん)
粒粒(りゅうりゅう)、皆(みな)辛苦(しんく)なるを
【現代語訳】
春に一粒の粟を撒いておくと、秋には何万粒もの実がなる。そうして国中のどこにも遊ばせている田畑はないのだが、それでもなお、農民は餓死しているのだ。
稲に鋤を入れていると、ちょうど真昼の太陽が照りつけ、吹き出る汗が稲の下の地面に滴り落ちる。誰が知っていよう。この盤(はち)のなかの飯の、その一粒一粒が、みな農民の辛苦の結晶であることを。
「粒々辛苦」の蘊蓄
「粒々辛苦」の類義語
苦心惨憺(くしんさんたん)
非常に苦労して心を砕き痛めること。
千辛万苦(せんしんばんく)
さまざまのつらいことや苦しいこと。多くの辛苦
「粒々辛苦」の対義語
順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
追風を帆いっぱいにはらむこと。物事が順調にはこぶさま。
無為不言(ぶいふげん)
何もせず、何も言わずにうまくことが運ぶこと。