教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

退職後を生きる(その9) 木あそび(スピーカー)

木あそび(スピーカー)

 

学生時代、その頃はまだ珍しかったホームセンターで材料を買って、安いスピーカーを作ったことがありました。

出来映えも音もそれなりのもので、実際に使っていたのはDIATONE DS-25B ¥28,000(1台、1976年発売)というコスパの高い名器です。

 

木あそびをはじめて、久しぶりに自作したくなりました。

しかし、精密に加工する腕が……。

 

とりあえず、既成の箱を買ってユニットをはめ込んでみることにしました。

用意したのは次の2点。

FOSTEXフォステクス

かんすぴP1000-E
フルレンジスピーカーの魅力を手軽に楽しめる10cm口径スピーカーユニット用バスレフ型スピーカーボックス。
標準価格¥3,080(税込)/1台

FF105WK
バスレフ専用フルレンジユニット FF-WKシリーズ 新抄紙方法『2層抄紙コーン』&『リッジドーム形状アルミ合金センターキャップ』。
標準価格¥7,150(税込)/1台

 

2万円ほどでいとも簡単にスピースーセットのできあがりです。

これを

ELEGIANT Bluetooth 2チャンネル パワーアンプ ステレオ スピーカー HI-FI アンプ ゴールド 電源アダプタ付き ¥ 3,599(購入時)

という激安の中華アンプにつなぎました。

アンプとパソコンをBluetoothで接続して鳴らしてみると、予想を超えるいい音です。

 

ただ、チェロの重低音が不足しています。それに、自作満足度が極度に低いです。

これはもう本格的に作るしかありません。

そんなわけで、このシステムはAmazon Echo Dot専用機として改造し、寝室に置くことにしました。

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本格的なバックロードホーン型スピーカー製作へ

 

長岡鉄男さん(1926年 - 2000年)というカリスマ的なオーディオ評論家がおられました。昔、雑誌で辛口の評論を読んだことがあります。長岡さんは自作スピーカーの分野でも有名で、生涯に600種類もの自作スピーカーの設計を発表されています。

 

長岡さんと言えば、バックロードホーン型スピーカー(back-loaded horn speaker)。

一般的なスピーカーはバスレフ型といって、エンクロージャー(スピーカーの箱)に上の写真のような穴が開いたものです。この穴はスピーカーユニットの背後から出る音を利用して低音を増強しようとするものです。穴がないのを密閉型と言います。

バックロードホーン(BH)型というのは、スピーカーユニット後方から発生する低音をホーンによって増幅する方式です。

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バックロードホーン型のメリットは、小出力で大音量が出せること、小型ユニットで量感ある低音が出せること。

一方デメリットとしては、スピーカー背部に折りたたんだホーンを音道として作るため構造が複雑になり、生産コストがアップすること。そのため、市販のスピーカーにはこの型はほとんどありません。

 

長岡さんのデザインしたバックロードホーン型スピーカーの1つに、「D-37型」というのがあります。これは16cmフルレンジスピーカーユニット用の設計です。

調べていると、FOSTEX社の10cmフルレンジスピーカーユニットに、「D-37型」をサイズダウンしたと思われる設計図が付いていることが分かりました。

これに挑戦します。


エンクロージャーには、MDF(エムディーエフ medium density fiberboard)材を使います。
MDF材は、材質自体が柔らかく加工しやすい、木目が出なく仕上がりが平滑でラッカー塗装やウレタン塗装などの塗装に最適という特徴があります。紙と同質でありながら、表面は硬く平滑で、中は緻密ですから、スピーカー製作に適しています。

MDF 15mm 915×1,825 ¥3,290+税 2枚購入

5パーツ以内の直線カット無料サービスが付いていましたので、図面を送って長尺部をカットしてもらいました。

 

スピーカーユニットは、FOSTEXFE103Enを使用します。FE103として発売以来50年以上の歴史を持つ、BH用の10cmフルレンジユニットです。

FOSTEX FE103En 標準価格¥6,000+消費税 (生産終了)

現在は後継機種FE103NV 標準価格¥7,480(税込)/1台

 

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板取図と構造図

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赤い着色部分が音道(他の方の製作写真を借用しています)

垂直にカットするために補助具を用意し、接着にはクランプを買いそろえました。

もの作りの楽しみは、作品ができあがることとともに、道具や技術の財産が増えていくことにあります。

 

組み立てが終了すると、塗装です。

ピアノブラックの鏡面仕上げに挑みます。

 

背面のターミナル穴と前面のユニット穴をマスキングして、塗装開始。

まずはニスを刷毛塗りして、MDFを硬くしていきます。乾かしてはペーパーをかけ、また塗り重ねていきます。

次は、GKサーフェイサー(黒)で下地処理兼中塗り作業を行います。吹いては研磨という工程を4、5回繰り返しました。

下地処理が終わったらいよいよ本番のニス塗りです。

黒色のワシン油性ニススプレーで塗装と研磨を4、5回繰り返し。後半からは水研ぎです。

最後の仕上げは、透明ニス(ウレタンスプレー)を2、3回。研磨はペーパーで2000番まで磨き、最終的には4000番のコンパウンドを用いました。 

 

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幅180㍉、高さ840㍉、奥行き405㍉。
ユニットは小型でも、存在感はデカい。

 

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高級感漂うピアノブラック

 

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接合部の滑らかさも申し分なし


スピーカーユニットを取り付けると、完成です。

そのあと、「エージング」というスピーカーの鳴らし込みを行います。ある程度の音量で鳴らし続けるのですが、自作スピーカーが本領を発揮するには1カ月とも半年とも言われています。



完成したスピーカーを新しく買った中華アンプにつなぎました。

Lepy 45W X 高音質 重低音 Hi-Fiステレオデジタルアンプ USB SDカード Bluetooth4.0 PSE認証5Aアダプター リモコン付き LED液晶 4CHパワーアンプ LP269S
4,380円(購入時)

USBメモリ/SDカードに対応
USBメモリ/SDカードに保存したMP3ファイルを直接再生できます
お手持ちの音楽ファイルを手間なく高音質で楽しめます

●Bluetooth4.0にも対応
Bluetooth4.0での接続も可能です
スマートフォンiPhoneなどを接続しても楽しめます

●高音・低音調整可能
マスターボリュームだけではなく
高音・低音を個別に調整できるツマミつき
音楽ジャンルや好みに応じた調整が可能です

●便利なリモコン付き
細かい調整や選択が可能なリモコンが付属しています

●見やすい赤色LED表示
各種パラメーターが見やすい赤色LEDを採用

●当店オリジナル5Aアダプターを付属
当店オリジナルの5Aのアダプターが付属しています
従来品に比べて大容量の電力を供給、
電力不足による不安定な動作がありません

●低歪み、音響的に正確な音楽の再生
家庭用および車載用オーディオアプリケーションに最適

●内蔵スピーカー保護機能搭載

このアンプ、値段以上の優れものです。

CDデッキをライン入力でつなぎ、Amazon Echo DotとパソコンはBluetoothでつなぎました。さらにお気に入り音楽はUSBメモリを挿しっぱなしにしています。

 

わずか10㌢のスピーカーユニットとは思えない低音の響きです。

バッハの無伴奏チェロ組曲にうっとりです。

 

ところで、Lepy LP269Sというアンプは、2.1チャンネル仕様です。

ウーハーを追加してみました。


FOSTEX FW108HS
高機能パルプ材料と独自の抄紙技術の融合によりさらなる高剛性振動板へ進化を遂げたウーハーユニット。標準価格¥22,000(税込)/1台

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10㌢の小型ユニットですが、1.7㌔もあります。ズシリと重いです。

ユニットが高額だったので、エンクロージャーは節約です。手持ちのコンパネをボンドで貼り合わせ、3㌢厚のボードにして製作しました。塗装も木工用のペンキの上に透明ニスをスプレーしただけです。

 

さっそくつないでみると、低音がすごいです。

無伴奏チェロ組曲なんぞ、フルニエの新旧音源やヨーヨーマの音源を聞き比べる始末。

 

昔買った DS-25Bは今も現役で、なぜかトイレで活躍中。

 DS-25Bと自作BHとどちらがいいかと聞かれると、同じ条件で聞き比べをしていないので客観的には何とも言えません。しかし、自作BHには自作の味と愛着があります。

作るのも趣味、聞くのも趣味。趣味の世界は自己満足の世界でいいのです。

 

2022年1月1日、宮城道雄さん演奏の「春の海」を聴きながら…