教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

きょうは何の日 11月13日

うるしの日

 

「うるしの日」は、日本漆工芸協会が1985(昭和60)年に制定しました。

平安時代文徳天皇の第一皇子・惟喬(これたか)親王が京都・嵐山の法輪寺に参籠し、その満願の日である11月13日に「漆(うるし)」の製法を菩薩より伝授されたという伝説に由来します。

 

「ウルシスト千晶のうるしのはなし」より引用します。

惟喬(これたか)親王伝説
平安時代、惟喬親王(844-897)という人がいました。
帝の第1皇子でしたが、ときの権力者、藤原氏の血を引く第4皇子の惟仁親王に皇太子の座を奪われ、遠国に派遣されたのち、病を得て隠居して、比叡山山麓で日陰の一生を送った悲劇の皇子と言われています。

この惟喬親王には数々の伝説やゆかりの地が現存しており、そのひとつが漆器に纏わるものなのです。
場所は、京都嵐山にある虚空蔵法輪寺(こくうぞうほうりんじ)。
知恵をつかさどる虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)をご本尊とするお寺です。
惟喬親王が、日本の漆器製法が不完全であることを憂慮して法輪寺に籠って祈願をしたところ、虚空蔵菩薩から製法を伝授され、それを広く伝えたという伝説が、このお寺の古文書に記されています。11月13日はその参籠満願の日(籠って祈祷をささげる期間が満了した日)でした。ちなみに、塗りの下地に使う漆のことをコクソ漆と呼びますが、これは虚空蔵から来ているという説があります。

さまざまな史実を検証していくと、おそらくこの話自体はあくまでも伝説なのですが、
惟喬親王にはほかにも滋賀の奥永源寺という地域で木地ロクロの技術を伝えたという言い伝えがあって、今でも全国の木地師から信仰されています。
また、歌舞伎の演目の中に登場したりと、何かと逸話が多く残る興味深い人物です。

 

以下、「林野庁」のHPより紹介します。

ウルシの木
ウルシはウルシ科、ウルシ属の落葉高木で、樹高10~15mになります。
また、秋には葉が真っ赤に色付きます。
中国原産といわれ、日本ではうるし採取のために栽培され全国に分布していますが、うるし採取が行われているのは岩手県茨城県などに限られています。
樹液が「漆」として利用されるのは、日本、朝鮮半島、中国に分布するウルシのほか、別種で東南アジアに分布するインドウルシ、カンボジアウルシ等があります。
樹液の成分にウルシオール、またはラッコールを含んでいるため、強いかぶれを起こす場合もありますので、美しく紅葉している姿に惹かれても、近づくときは注意して下さい。

ウルシの木

ウルシ断面

 

漆の造り方
樹液の分泌が活発になる6月にウルシの木に傷をつけて、そこから滲み出た樹液を10月頃まで採取します。樹液を採取するのは樹齢10~20年に達した木で、採取したら枯れてしまうので、その年に伐採します。
そして、切り株から出た芽を育てて、また同じ営みを繰り返していきます。1本のウルシの木から採れる樹液は約200gで、大変貴重なものです。この採取したままの樹液を「原料生漆」といい、木の皮などのゴミをろ過したものを「精製生漆」といいます。「精製生漆」は、塗料としての目的に応じて、さらに精製・加工されます。

漆掻き

漆掻き

漆の精製

漆の精製

 

漆の化学
漆は主に塗料として使われますが、塗った漆の乾かし方は、通常のやり方、例えば洗濯物を乾かすような方法とは違います。漆の中に含まれる酵素「ラッカーゼ」が、ある温度と湿度によって活性化し、空気中の酸素と反応することで、液体から固体へと変化するのです。「ラッカーゼ」が最も活性化するのは、温度が20~25度で湿度が75~85%の時であり、高温・乾燥状態では漆は「乾き」ません。そこで、「漆風呂」と呼ばれる乾燥器具を用いて、漆の固化する条件を整えます。

漆風呂

漆風呂

 

「雑学ネタ帳」より。

うるしの語源は「麗し(うるわし)」とも「潤し(うるおし)」ともいわれている。最も一般的な用途は塗料として用いることである。漆を塗られた道具を漆器という。黒く輝く漆塗りは伝統工芸としてその美しさと強靱さを評価され、食器や高級家具、楽器などに用いられる。

漆は熱や湿気、酸、アルカリにも強い。腐敗防止、防虫の効果もあるため、食器や家具に適している。一方、紫外線を受けると劣化する。また、極度の乾燥状態に長期間曝すと、ひび割れたり、剥れたり、崩れたりする。

漆を用いた日本の工芸品では京漆器がよく知られており、漆塗りの食器では、石川県の輪島塗などが有名。竹細工の籠を漆で塗り固めるもの(籃胎)や、厚く塗り重ねた漆に彫刻を施す工芸品(彫漆)もある。

(「にぽにか」HP掲載、「地域のさまざまな漆器」より。)