小学校3・4年生の教科書に登場する故事成語の第9回は「他山の石」です。
他山の石
「他山の石」の読み方
たざんのいし
「他山の石」の意味
自分の人格を磨くのに役立つ他人のよくない言行や出来事。(広辞苑)
「他山の石」の使い方
文学者の文学論、文学観はいくらでもあるが、科学者の文学観は比較的少数なので、いわゆる他山の石の石くずぐらいにはなるかもしれないというのが、自分の自分への申し訳である。(寺田寅彦 『科学と文学』)
※本来、目上の人の言行について、また、手本となる言行の意では使わない。
文化庁が発表した平成25年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「他人の誤った言行も自分の行いの参考となる」で使う人が30.8パーセント、本来の意味ではない「他人の良い言行は自分の行いの手本となる」で使う人が22.6パーセントという結果が出ている。
「他山の石」の語源・由来
「他山の石」の出典は、『詩経』巻十一「小雅」所収の一篇「鶴鳴(かくめい)」です。
鶴鳴于九皐 聲聞于野
魚潜在淵 或在于渚
楽彼之園 爰有樹檀
其下維○[JIS補5802(艸擇)落ち葉]
佗山之石 可以為錯
鶴鳴于九皐 聲聞于天
魚在于渚 或潜在淵
楽彼之園
爰有樹檀 其下維穀
佗山之石 可以攻玉
(読み下し文)
鶴(かく) 九皐(きゅうこう)に鳴き 声 野に聞こゆ
魚(うお) 潜(ひそ)みて淵(ふち)にあり、あるいは渚にあり
楽しきかな彼(か)の園(その)は 爰(ここ)に樹檀(じゅだん)有り
其(そ)の下には維(こ)れ(タク)
它山(たざん)の石 以(もっ)て錯(さく)と為(な)すべし
鶴 九皐に鳴き 声 天に聞こゆ
魚 渚に在り 或いは潜みて淵に在り
楽しきかな彼の園は 爰に樹檀有り
其の下には維れ穀(こく)
它山の石 以て玉 (ぎょく)を攻(おさ) むべし
(現代語訳)
鶴は人の立ち入らない深い谷間の沢にいても、その鳴き声は人のいる野原にまで響いてくる。
魚が水に深く潜っていても、やがて波打ち際に姿を見せる。
私が庭で木々を育てている楽しみは、檀の木がて見事に伸びることだ。
その木の下に集めた落ち葉を肥やしにしたからだ。
そこらの山の粗悪な石も、砥石とすることができるということだ
鶴は人の立ち入らない深い谷間の沢にいても、その声は遠く天まで届く。
魚は水際に現れるが、ときにはまた深く水に潜ってしまう。
庭で木々を育てるのは楽しみだ、檀の木の下に、穀などの雑木を植えて支えにする。雑木も使い方では役にたつ。
よその山で取れた変哲もない石でも、玉を磨くために使うことが出来るということだ。
「他山の石」の蘊蓄
「他山の石」の類語
反面教師
殷鑑不遠(いんかんふえん)
人の振り見て我が振り直せ
人こそ人の鏡
人を以て鑑と為す
「対岸の火事」に注意
「対岸の火事」は、「自分には全く関係のない出来事で、少しも痛痒(つうよう)を感じない物事のたとえ。」(広辞苑)です。
「他山の石」の類語ではありません。