教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その108) 故事成語「玉石混淆」

小学校のうちに知っておきたい故事成語の第31回は「玉石混淆」です。

 

玉石混淆

 

「玉石混淆」の読み方

ぎょくせきこんこう

 

※「玉石混」は「玉石混」の誤用です。

 

「玉石混淆」の意味

すぐれたものとつまらないものとが入りまじって区別がないこと。(広辞苑

 

「玉石混淆」の使い方

考えて見給え。所蔵家が真物ばかり蒐めているのがおかしいじゃないか。玉石混淆が普通なのだ。(松本清張『真贋の森』1958年)
 

「玉石混淆」の語源・由来

「玉石混淆」の出典は、『抱朴子』(ほうぼくし)外篇「尚博」です。

 

或貴愛詩賦淺近之細文、
忽薄深美富博之子書。
以磋切之至言爲騃拙、
以虚華之小辯爲妍巧、
眞僞顚倒、玉石混淆
【読み下し文】
或(ある)いは詩賦(しふ)浅近(せんきん)の細文(さいぶん)を貴愛(きあい)し、
深美(しんび)富博(ふはく)の子書(ししょ)を忽薄(こつはく)す。
磋切(させつ)の至言(しげん)を以(もっ)て騃拙(がいせつ)と為(な)し、
虚華(きょか)の小弁(しょうべん)を以(もっ)て妍巧(けんこう)と為(な)し、
真偽(しんぎ)顛倒(てんとう)し、玉石(ぎょくせき)混淆(こんこう)す
【現代語訳】
また、詩や賦(ともに中国の韻文のこと)や浅薄で俗な軽い文学を尊重し愛したりして、
深みがあって筋が通り、表現が豊かで知識にあふれている諸子百家の書物を軽視してかえりみない。
自分の向上に役立つ、道理にあった言論を、愚かでつたないとみなして、
嘘やつくりごとばかりのつまらない弁舌を、精妙なものだとみなし、
真実と偽りが逆転していて、玉と石とがごちゃごちゃに混ざった状態だ

 

「玉石混淆」の蘊蓄

「玉石混淆」の類義語

玉石雑糅(ぎょくせきざつじゅう)
良くて優れたものと粗悪な物が入り混じっていること。

玉石同架(ぎょくせきどうか)
「架」は物などをのせる台のことで、「同じ台に良いものとそうではないものを混ぜてのせる」ことのたとえ。

玉石同匱(ぎょくせきどうき)
「匱」は大きな木箱を指し、「同じ木箱に価値のある宝石と無用の石を一緒くたに入れる」ことのたとえ。

魚目混珠(ぎょもくこんしゅ)
本物と偽物が混ざっているため、ものの良し悪しの区別がつかないこと。

種種雑多(しゅしゅざった)
さまざまな種類のものがごちゃごちゃと混ざり合うこと。