小学校3・4年生の教科書に登場する故事成語の第10回は「蛇足」です。
蛇足
「蛇足」の読み方
だそく
「蛇足」の意味
あっても益のない余計な物事。あっても無駄になるもの。蛇をえがいて足を添える。じゃそく。(広辞苑)
「蛇足」の使い方
「蛇足ながら申し上げます」
「蛇足」の語源・由来
「蛇足」の出典は、 『戦国策』です。
『戦国策』は、中国前漢の劉向(りゅうきょう)(紀元前77〜前6)の編集書物。戦国時代の思想家たちが、諸国を遊説して説いた言葉を集めています。故事成語の「蛇足」のほか、「虎の威をかる狐」「漁夫の利」などは、この書物からでたものです。
戦国時代、楚の国の将軍昭陽は、魏の国を攻めて勝利し、さらに斉の国を攻めようとした。そのとき、斉の国の王の意を受けた遊説家の陳軫が、斉の国への攻撃をやめさせるために、次のようなたとえ話を用いて将軍昭陽を説得した。
楚有祠者。
賜其舎人卮酒。
舎人相謂曰、
「数人飲之不足、一人飲之有余。
請画地為蛇、先成者飲酒。」
一人蛇先成。
引酒且飲之。
乃左手持卮、右手画蛇曰、
「吾能為之足。」
未成、一人之蛇成。
奪其卮曰、「蛇固無足。
子安能為之足。」
遂飲其酒。
為蛇足者、終亡其酒。
(書き下し文)
楚に祠る者有り。
其の舎人に卮酒を賜ふ。
舎人相謂ひて曰はく、
「数人にて之を飲まば足らず、一人にて之を飲まば余り有り。
請ふ地に画きて蛇を為り、先づ成る者酒を飲まん。」と。
一人の蛇先づ成る。
酒を引きて且に之を飲まんとす。
乃ち左手にて卮を持ち、右手にて蛇を画きて曰はく、
「吾能く之が足を為る。」と。
未だ成ざるに、一人の蛇成る。
其の卮を奪ひて曰はく、「蛇固より足無し。
子安くんぞ能く之が足を為らんや。」と。
遂に其の酒を飲む。
蛇の足を為る者、終に其の酒を亡へり。
(現代語訳)
楚の国に祭礼をつかさどる人がいた。
〔あるとき〕その(=自分の)使用人たちに大杯についだ酒を与えた。
使用人たちが互いに言うことには、
「数人でこれ(=酒)を飲めば足りず、一人でこれ(=酒)を飲めば余ってしまう。
地面に蛇を描いて、最初にできあがった者が酒を飲むことにしよう。」と。
一人が蛇〔の絵〕を最初に描きあげた。
〔その者は〕酒を引き寄せて今にもこれ(=酒)を飲もうとした。
そこで左手で大杯を持ち、右手で蛇を描きながら言うことには、
「私はこれ(=蛇)の足を描くことができる。」と。
〔その者の蛇の足が〕まだ完成しないうちに、〔別の〕一人の蛇〔の絵〕が出来あがった。
〔その男が〕その(=先に蛇を完成させた者の)大杯を奪って言うことには、「蛇にはもともと足がない。
あなたはどうしてこれ(=蛇)の足を描くことができようか、いや、描けるはずがない。」と。
〔その人は〕そのままその酒を飲んだ。
蛇の足を描いた者は、とうとうその酒を飲みそこねた。
「蛇足」の蘊蓄
蛇足ですが、「蛇足」の類義語です。
老婆心ながら
「老婆心」とは、「年とった女の親切心がすぎて不必要なまでに世話を焼くこと。必要以上な親切心。主として自分の忠告などをへりくだっていう語。」(広辞苑)です。
これもまた蛇足ながら、「老爺心」という語はありません。世話焼きは女と、昔から相場が決まっているのですかね。
僭越ながら
「僭越」とは、「自分の身分・地位をこえて出過ぎたことをすること。そういう態度。でしゃばり。謙遜の気持でも使う。」(広辞苑)です。
余計なお世話で、差し出がましく、お節介ですが、念のため。
目上の人に対しては、「老婆心ながら」は使いません。「僭越ながら」を使います。
「老爺心」ながら。