北海道キャンプ旅行 出発から13日目
1991年8月6日(火)
朝5時過ぎに起きて、朝食のあと、弁当のおにぎりをつくる。好天に恵まれ、登山日和だ。層雲峡温泉の駐車場に車を置き、ロープウェイで黒岳5合目へ。そこからリフトに乗って7合目へ。入山届に記入して、7時8分、登山開始。
清々しい空気の中を頂上を目指して歩く。ほどなく心地好い汗が浮かんでくる。山小屋で一夜を過ごした登山者が下山してくる。エゾノマルバシモツケ、ウサギギク、ミヤマキンバイ、タイセツトリカブト、エゾニュウ、エゾツツジ、ナガハキタアザミ。頂上までの道中で出会った花たちだ。植物図鑑が重宝した。8合目あたりであったか、突然登山道にエゾシマリスが姿をあらわした。愛らしい仕草で餌を食べていたが、人間が近づいても逃げようとしない。人間に慣れているというよりも、人間の怖さを知らないようだ。ここでは人間も自然界の生物として認知されているらしい。
1時間あまりの登山の後、1984m、黒岳山頂に立った。爽やかな風に吹かれれば、登りのしんどさも吹っ飛んでしまう。それにもまして、山頂から見える大雪山連峰の眺望は感激ものだ。
しばらく休憩をして、雪渓へ下りる。岩間に花が咲き乱れている。イワギキョウ、エゾハハコヨモギ、イワブクロ、エゾツツジ、コマクサ、タカネシオガマ、エゾツガザクラ、エゾコザクラ、ミヤマキンバイ。名前が確かめられただけでもこれだけある。登ってきて良かったとつくづく思う。
雪渓の雪は黒く汚れてはいるが、8月に雪合戦ができるというのもオツなものだ。スコップで掘ってみたが、底には届かなかった。
雪渓のすぐ先に黒岳石室(山小屋)がある。その先にも一面の高山植物帯があるのだが、我々は少しばかり行ったところで引き返した。その周辺で見かけた花、キタヨツバシオガマ、チングルマの実、クモマユキノシタ、コマクサ、イワギキョウ、ワタスゲ、ミヤマキンバイ、アオノツガザクラ。
さて、再び雪渓から頂上へと向かおうとした時、石の間にナキウサギが姿を見せた。急いで300ミリの望遠レンズをつけてシャッターを切った。動きが素早く幻に終わったかと思えたが、石のあいだに隠れる寸前の姿をしっかりととらえていた。
頂上に戻って、お弁当のおにぎりを食べた。何の変哲もないおにぎりだが、大きな満足感があった。
下山後に温泉の共同湯へ行ったが、疲れているだけに格別だった。一旦バンガローに戻って、雨に湿ったテントを干した。そして、上川の町へ食料の仕入れに出かけた。目当てのニジマスはなかったが、すっかりファンになったホッケを買って帰った。夕飯はそいつを焼いて食べた。