教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

森と湖と実りの大地から ~北海道キャンプ旅行の記録~ ①

新型コロナウイルスの感染が収まらず、2回目の自粛の夏を迎えました。

 

時空は30年前の北海道。

 

1991年7月25日から8月10日までの17日間、親子4人で北海道をキャンプ旅行しました。

その折の旅行記が「森と湖と実りの大地から」です。

 

今夏は、30年前の旅行記をベースに、北海道バーチャルトラベルに出かけたいと思います。

 

 

1991年7月25日(木)

テントなどのキャンプ用具一式をマイカーに積み込み、いざ出発。

再現旅行は、途中のアクセスを省略し、7月27日開始です。

 

と、ここで終わってしまってはあんまりなので、

2008年7月25日の北海道を再現しましょう。

 

 

大雪山(黒岳~旭岳)縦走

                2008年7月25日(金)

 

 1991年の夏、黒岳に登った。山頂に立つと、ハイマツなどの緑と雪渓の白が山肌の茶色が織りなす風景に息を呑んだ。いつかあの風景の中を歩きたいと思い続けてきた。家族の健康状態や仕事の都合等で計画は何度か頓挫したが、今ようやく念願の日を迎えた。

 

f:id:yosh-k:20210723112418p:plain


マップは「やまびこ会」さんのHPからいただきました。逆コースなので、時間は参考になりません。

 

層雲峡温泉⇨⇨⇨黒岳■
 2008年7月25日(金曜日)、層雲峡温泉はガスがかかっているものの爽やかに明けた。午前5時20分、ホテルを出てロープウェイの山麓駅に向かう。5時30分、待合室には先客が3人いた。リュックの大きさからすると、大雪山系のいずれかの峰でテント泊をする様子だ。ロープウェイとリフトの従業員を乗せたバスが到着して、40分にその人たちを運ぶロープウェイが発車した。そのころから待合室には人が増え始め、いくつかの団体を含めて数十人に膨れ上がっていった。6時、初発のロープウェイは満員の乗客を黒岳5合目駅へ運んだ。確か91年の時はまばらだったと思うが…。


 5合目駅から少しばかり歩くとリフト乗り場があって、15分で7合目まで運んでくれる。ここで入山届けを書いて、いざ出発。6時35分。


 黒岳7合目は標高1520m、山頂は1984mだから464mの登りだ。大きな石が浮き出ているジグザグの急登だ。この登りの楽しみは、8合目あたりから始まる短い夏を咲き競う花々との出合いだ。黄色が鮮やかなエゾキンバイ、紫色のハクサンチドリ、真っ白で大きな花のエゾニュウ、繊細な感じのウラジロナナカマド、かわいい黄色のハイオトギリ、濃いピンクのエゾツツジ、深い青のタイセツトリカブト等々、花の道が続く。前回はシマリスにも出合えたが、今回はそのかわいい姿を見ることはなかった。


 インターネットのガイドなどでは登り1時間と書かれているのを見かけるが、これは相当健脚な人で、私は経験上300m登るのに1時間という計算をしている。事実、7時55分に山頂に着いた。私と妻の先を歩いていた人は3人で、それ以外は誰一人として私たちを追い越していかなかったのだから、しっかり歩いて1時間20分というのが妥当なところだろう。

 

f:id:yosh-k:20210723112806p:plain

リフトの前方に黒岳頂上が見える

 

f:id:yosh-k:20210723112915p:plain

エゾキンバイと層雲峡から湧き上がるガス

 

f:id:yosh-k:20210723112952p:plain

ハクサンチドリ

 

f:id:yosh-k:20210723113041p:plain

エゾニュウ

 

f:id:yosh-k:20210723113106p:plain

ウラジロナナカマド

 

f:id:yosh-k:20210723113130p:plain

ハイオトギリ

 

f:id:yosh-k:20210723113153p:plain

エゾツツジ

 

f:id:yosh-k:20210723113213p:plain

タイセツトリカブト

 
■黒岳⇨⇨⇨黒岳石室■
 頂上に立つと、冷たい風が石室の方から吹き上げてくる。前方には大雪の峰々が連なっている…はずなのだが、あいにくのガスで見えない。右手桂月岳の谷からの強風で左手北海岳の方角にガスが流れ、薄靄の向こうに縦走の行く先が見える。これに会いに来たのだ。


 のどを潤し、ゼリー状飲料の軽い朝食を摂って、8時出発。石ばかりの急坂の途中で前回はナキウサギを見た。ナキウサギは、氷河期の生き残りなのだそうだ。今回もと期待するのが人情だが、滅多に見られるものではない。さて、坂を下りきったところに最初の雪渓がある。その周り一面にチングルマとエゾツガザクラの群生が満開を迎えていた。ここから石室までの道の両側には濃いピンクのエゾツガザクラと薄いピンクのコエゾツガザクラ、白色のチングルマが花の絨毯の趣を呈していた。石室に近づくと青いミヤマリンドウの花が目に付くようになり、チングルマは綿毛になっていた。


 8時30分、黒岳石室に到着。右手の桂月岳山頂は、ガスに見え隠れしている。コース中唯一のトイレ(有料200円)でお手洗いを済ませ、8時40分、北鎮分岐への道を出発した。

 

f:id:yosh-k:20210723113338p:plain

黒岳山頂からの眺望

 

f:id:yosh-k:20210723113401p:plain

イワウメ

 

f:id:yosh-k:20210723113439p:plain

黒岳頂上部を見上げる

 

f:id:yosh-k:20210723113505p:plain

エゾツガザクラ

 

f:id:yosh-k:20210723113535p:plain

淡いピンクがコエゾツガザクラ

 

f:id:yosh-k:20210723113559p:plain

チングルマと雪渓

 

f:id:yosh-k:20210723113622p:plain

ミヤマリンドウ

 

f:id:yosh-k:20210723113655p:plain

チングルマの綿毛

■黒岳石室⇨⇨⇨間宮岳分岐■
 分岐を出て、ハイマツ帯を抜けた辺り一帯は雲の平と呼ばれ、「平」と言うには上り下りがあるものの至る所にお花畑があり、歩いていても気持ちがいい。コマクサがかわいい花を付けている。振り返ると、ガスの晴れ間に頭にコブを載せた黒岳の山頂が姿を現していた。


 石室が1890mで御鉢平を見下ろす御鉢展望台が2020m、その御鉢展望台には9時15分に着いた。御鉢平カルデラは約3万年前の火山噴火によってできたもので、長径が2.2km、短径が1.8kmの大きさがある。御鉢平内部は、有毒温泉から強力な毒性を持つ硫化水素のガスが噴出するために立ち入り禁止となっている。草木の育たない灰色の荒地が広がっている。


 展望台からの急登を一気に2140mまで上がると北鎮分岐だ。時計は9時46分を指している。ここからルートを右にとると、2244m、北海道第2の高さを誇る北鎮岳まで20分の登りだ。今回はガスで展望が望めないし、旭岳ロープウェイの時間も気になるのでパス。そのまま中岳に向かう。


 左に御鉢平を、右に大雪の山並みを見ながら道は下り、やがて登りになって一番高くなったところが中岳山頂だ。中岳の標高は2113m、山頂というよりも坂のてっぺんと言った方が感覚的に合っている。10時06分通過。


 さらに御鉢平に沿って砂礫の尾根を下ると2050mの中岳分岐だ。ここでコースを右にとると、旭岳を周回して姿見の池まで行くことができる。今回は間宮岳を目指して直進。


 御鉢平に沿った砂礫の尾根を登ること30分、標高2185mの間宮岳に到着。10時46分。この頂上も標識が立っていたから分かったものの、それがなければとうてい認識できないような通過点だ。


 頂上のすぐ先が間宮岳分岐で、左に行くと御鉢平を回って黒岳に戻れる。右が旭岳に通じる道だ。分岐点に置かれた粗末なベンチで昼食に持ってきたパンを食べ、11時出発。

 

f:id:yosh-k:20210723113833p:plain

コマクサ

 

f:id:yosh-k:20210723113854p:plain

御鉢平

 

f:id:yosh-k:20210723113919p:plain

右が中岳、左が間宮岳

 

f:id:yosh-k:20210723113939p:plain

中岳からの眺望


■間宮岳分岐⇨⇨⇨旭岳■
 濃いガスを覆われていた旭岳の山頂がわずかに顔を出す。目指すは標高2290m、北海道一の高山、朝日岳山頂だ。遅くとも14時15分のロープウェイに乗りたい。標準的な行程表でも2時間50分かかることになっている。苦手な下りのことを考えると、微妙な時間だ。ここまで、黒岳山頂で5分、黒岳石室で10分、間宮岳分岐で10分と休憩時間を惜しんで歩いてきた。足が疲れてきている。


 旭岳を正面に見ながら荒涼とした緩やかな下りが続く。20分近く歩くと、砂礫の急な下りになる。ストックのラバーを外し、石突きで滑りを止めながら一気に高度を下げていく。


 11時32分、下りきった2074m地点にある裏旭キャンプ指定地を通過。眼前に聳える旭岳は、山裾は大きな雪渓に覆われ、その上は剥き出しの地肌が山頂まで続いている。


 登りが始まるところに雪解け水が流れ下る小さな沢があって、それを跨ぎ越した後は左右に雪渓を見ながら高度を上げていく。やがて左右の雪渓が一続きになり、しばらく雪渓を登ることになる。ストックをしっかりと突き立て、ゆっくり登っていく。雪渓が終わると、砂礫と火山灰の急斜面だ。突然、妻の足が止まってしまった。登山道がないのだ。踏み跡を見ると直登するしかないのだが、足場は滑るし、直立すると後ろにひっくり返るような急斜面だ。しかし、登るしかない。ストックを半分ほどの長さに縮め、重心を前方に置きながら一歩一歩登っていった。振り向くと、間宮岳やさらに遠くの峰まで綺麗に晴れていた。


 やっとの思いで旭岳頂上に辿り着いた。12時13分。2290mの頂上は深いガスに包まれ、冷たい風が吹いていた。腰を下ろしている登山者が数人いたが、私たちはそのまま下山した。

 

f:id:yosh-k:20210723114041p:plain

砂礫の向こうに旭岳が見える

 

f:id:yosh-k:20210723114105p:plain

険しい下りだ

 

f:id:yosh-k:20210723114131p:plain

旭岳の直登は閉口した

 

f:id:yosh-k:20210723114154p:plain

旭岳山頂付近から来し方を振り返る



■旭岳⇨⇨⇨旭岳温泉層雲峡温泉
 表側の登山道は裏側の直登よりはましとは言え、砂礫と火山灰の急で滑りやすい尾根が山裾まで続いている。登山道の左斜面は500m以上も落ちていて、裾平と呼ばれる樹林帯に繋がっている。右は地獄谷で、その斜面からかなりの強風が吹き上げてくる。地獄谷から吹き出す噴煙が、時折、湿った暖気となって風に流されてくる。登山道は姿見の池までほぼ直線に下っており、時に足を滑らしそうになりながら歩を進める。ここまでよく持ったものだが、遂に爆弾の左膝裏が痛み出した。


 13時35分、何とか旭岳石室まで辿り着く。姿見の池は天候のせいで以前見たような感動はなかった。それよりも痛む膝と時間が気になった。ロープウェイ乗り場までは普通なら15分もあれば十分なのだが。


 ペースは落ちたとは言え、いつもの痛みに比べれば軽い方で、姿見駅には13時52分に着いた。ここの標高が1600mだから、約700mを下ってきたことになる。歩き始めてから7時間17分、実歩行時間6時間50分余、歩行距離約12km。結構よく歩いたものだと思う。


 姿見駅14時発の旭岳ロープウェイに乗車、旭岳温泉駅着14時10分。14時35分発の旭川駅バスに間に合った。層雲峡まで帰るには旭川でバスに乗り継ぐしかないのだが、そのバスが14時35分の後は17時05分しかない。それでも帰ることはできるが、層雲峡に着くのが20時30分で、ホテルに着いた時には夕食時間が終わってしまっている。バスは、5分遅れで旭川駅に15時50分着。乗ってきたバスは旭川電気軌道のもので、層雲峡行きは道北バス。降り場も乗り場も全く別の場所だった。喫茶店で一休みして、16時35分発層雲峡バスターミナル行きのバスに乗り込んだ。18時25分ターミナル着。駐車場までの坂道を歩き、車がホテルに着いたら18時35分だった。夕食時間に間に合った。かくして、連泊1品サービスをゲット。長い1日が終わった。

 

f:id:yosh-k:20210723114245p:plain

左手の斜面はほぼ垂直に落ちている

 

f:id:yosh-k:20210723114309p:plain

滑りやすい砂礫の急坂を下る

f:id:yosh-k:20210723114328p:plain

地獄谷から噴煙が上がっている

f:id:yosh-k:20210723114348p:plain

姿見の池まで急な下りが続く