教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

きょうは何の日 8月23日

奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー

 

1791年8月22日の夜から23日にかけて、サントドミンゴ(現在のハイチとドミニカ共和国)で奴隷が蜂起した出来事は、大西洋奴隷貿易の廃止に重要な役割を果たしました。
8月23日の 「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー」 は、このような背景を元に、私たちが奴隷貿易の悲劇を忘れることなく公正な社会を築いていくために、1998(平成10)年に国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)が制定した国際デーです。英語表記は「International Day for the Remembrance of the Slave Trade and its Abolition」。

 

以下、「Wikipedia」より引用します。

ユネスコ加盟国は毎年同日に、青少年や教育者、芸術家、知識人を招いての催しを開催している。ユネスコの文化越境プロジェクト、「奴隷の道」(The Slave Route)プロジェクトの一環として、奴隷制の「史的要因・制度・状況」について学び、注目する機会となっている。そのほかに、アフリカ・ヨーロッパ・アメリカ州西インド諸島のあいだで行われた人間の大西洋貿易を引き起こした交渉についての分析と対話を行う場も設けている。

なお、詳細な歴史については「Wikipedia」の「ハイチ革命」の項にまとめられています。

ハイチ革命 - Wikipedia

 

奴隷貿易」について、「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」より引用します。

奴隷貿易
どれいぼうえき
slave trade

アフリカ住民を奴隷としてアメリカに売込んだ近代ヨーロッパの貿易形態。 16世紀以来新大陸の植民地化が進むにつれて,アフリカ黒人を捕獲して植民地の労働力として売ることが始った。アフリカ西岸を基地としてポルトガル,スペインがこの貿易に乗出し,17世紀からオランダが割込んだ。続いてイギリスが王立アフリカ会社を中心に本国,アフリカ,西インドを結ぶ三角貿易を進め,1731年ユトレヒト条約でアシエントを獲得するにいたった。奴隷は北アメリカ南部にも売込まれ,アフリカから運び去られた住民は,16世紀以後 300年間で 5000万人に達するという。またこの貿易の輸送船に乗船させられる黒人の待遇は拷問に等しく,輸送される全黒人の少くとも 20%は,航海中に死亡したといわれる。

 

奴隷制」は、過去の問題ではありません。

「現代の奴隷制」として、「人身売買」と「強制労働」の問題がいくつも報告されています。それらの中から「国際人権NGO 反差別国際運動」と「国際労働機関」に掲載されている記事を紹介します。

現代の奴隷制:人身売買と強制労働
小松泰介(こまつ たいすけ)
IMADRジュネーブ事務所国連アドボカシー担当

 今年(引用者注:2014年)4月14日、ナイジェリア北東部の村チボクにある中学校がイスラム過激派グループの「ボコ・ハラム」によって襲撃され、200人以上の女子生徒が誘拐された。さらに、5月4日には他の二つの村でも同様の誘拐がボコ・ハラムによって行なわれている。ボコ・ハラムは西洋式の教育に反対しており、誘拐した少女たちを人身売買の市場に売って結婚させるという声明を出している。少女たちの救出が進まないことを懸念して、5月8日に女性への暴力や人身売買といった関連する国連およびアフリカ人権委員会の専門家らによる共同声明がジュネーブの人権高等弁務官事務所から発表された。声明の内容は、少女たちが性的搾取や強制結婚といった深刻な人権侵害の危険にさらされていることを危惧し、ナイジェリア政府が彼女たちを救出し、責任者を処罰すると共に被害者の補償を適切に行うよう求めるものである。その後、ナイジェリアの隣国であるベニン、カメルーン、チャド、ニジェールに加え、フランス、イギリス、アメリカ合衆国EUボコ・ハラム対応のために協力することに合意し、5月22日には国連安全保障理事会においてボコ・ハラムをテロ組織として制裁することが承認された。しかし、この原稿を書いている5月30日の時点で少女たちは未だに救出されていない。IMADRは5月9日、理事のビシー・オラテル・オラグベギさんのNGOであるナイジェリア女性協会(WOCON)と共同で少女たちの救出と加害者であるボコ・ハラムの処罰等を求める声明を国連とアフリカ諸国に提出した。

 しかし、世界中で人身売買は男女を問わず行われ、被害者は奴隷のような状態で強制労働をさせられている。今年発表された国際労働機関(ILO)による強制労働に関する報告書(1)によると、毎年およそ2100万人が強制労働によって搾取されている。これらの被害者は男女別(子ども含む)では女性およそ1140万人、男性はおよそ950万人である。被害者たちの中には国外へ人身売買される者もいれば、国内で強制労働の状態に置かれる者もいる。そして、全体の22%が性的に搾取され、68%は農業や建築、家庭内労働や製造業などにおいて労働搾取されている。強制労働による年間の利益は1500億米ドル(約12兆円)に上ると言われ、ハフィントンポストによるとこの金額はアップル社がアイフォン販売によって得た5年間の利益に相当するという。この利益の3分の2を占める990億米ドルは性的搾取によるもので占められ、残りはその他の労働搾取によって生み出されている。ILOは、貧困、教育や識字の不足、非公式または未熟練労働および移住労働が被害を生む要因であるとしている。

 「現代の奴隷」と聞くと、女性や少女が海外へ売られて性的に搾取されることを最初に思い浮かべる方も多いのではないかと思う。確かに、上記にあるように全体の利益の66%は性的搾取によるものであるが、被害者の数でみると全体の30%に満たない。それに対し、労働搾取による被害者数は全体の70%近くを占めている。農業や製造業といった第一次・二次産業においてこれらの労働搾取は行われており、人身売買や強制労働によってつくられた可能性のある製品は私たちの生活のあらゆるところに存在する。近年、生産者や労働者の権利を守り、公平な売買によって開発途上国から輸入されたことを保証するフェアトレード商品を専門店以外でも目にすることが多くなってきたが、先進国で生産された商品も強制労働によって作られた可能性がある。例えば、多くの労働搾取の事例が報告されている日本の技能実習制度の実習生たちは、農業や食品加工業といった第一次・二次産業に従事しており、彼らが作った国産の商品を私たちが購入している可能性は大いにある。つまり、残念なことに私たちの多くは人身売買や強制労働の疑いがある商品を、知らず知らずのうちに買ってしまっているのが現状である。それほど強制労働による「ビジネス」は莫大な利益を生み、その活動は世界中に及んでいる。これに対抗するためには国による積極的な対応が不可欠であり、それをより効果的に実行するには国際的な協力が必要である。

 実際のところ、国連からも人身売買の根絶のための国による取り組みが求められている。今年6月の人権理事会26会期において、「人身売買(特に女性と子ども)に関する特別報告者」であるナイジェリア出身のジョイ・ヌゴジ・エゼイロ特別報告者が報告書を提出している。その中でエゼイロ特別報告者は、「①各国において人身売買に関する報告者または同等の仕組みの構築」、「②地域的・準地域的な仕組みの構築」、「③国家間での国際的な協力」、「④国家でない主体のアカウンタビリティ」、これらの4点が人身売買の根絶において必要であることを訴えている。理由として、人身売買廃絶のために各政府機関やNGO、警察といった多様な関係者が携わっていることから、これらを取りまとめて効果的な対策を可能にする一元的なモニタリング・調整・分析を行う機関が必要なこと。また、国境を越えた人身売買に対応するには国ごとの取り組みでは限界があり、送り出し国と受け入れ国間の連携や、アジアやヨーロッパといった地域単位での協働が必要であることがあげられる。さらに、生産過程における安価な労働力への需要から、結果的に労働搾取に関与している企業や、弱い立場にある人びとを搾取的な労働市場に紹介する人材斡旋業者の責任も無視できない。特に国家でないものの人権尊重の責任については人身売買に限らず近年注目されており、場合によっては小さな国の国家予算以上の規模をもつ企業に対して、人権アカウンタビリティをどう適用するのか議論されている。

 また、今年は人身売買に関する特別報告者の任命から10年にあたる。その内の6年間の任期を務めたエゼイロ特別報告者は、人身売買対策の問題の一つとして女性に対する性的搾取がもっぱら注目され、男性と少年の被害者へのサポートが不足していることを報告している。文化的な理由等から男性の被害者はサポートが存在しても名乗りでないこと、もしくはサポート自体が男性にも利用しやすいよう適切に整備されていないことを、特別報告者は指摘している。このような現状を踏まえて、6月の人権理事会で行われる特別報告者委任の更新に際し、名称から「女性と子ども」を取り除くようエゼイロ特別報告者は勧告している。もしこれが実現すれば、単純に名称が短くなるのではなく、「人身売買=女性と子どもの性的搾取」と偏りがちだったこれまでの認識を変える意識改革につながる上に、特別報告者もより広範な活動ができることが期待される。さらに、今年の6月で任期を終えるエゼイロ特別報告者は、新たに任命される特別報告者に対して、「①違法な採用行為」、「②強制的かつ搾取的な労働を目的とした男性の人身売買」、「③強制的な物乞いや犯罪行為を目的とした人身売買」、「④強制または隷属的な結婚を目的とした人身売買」、「⑤帰還後の再被害の危険性」における調査をするよう促している。男性の人身売買と強制労働は日本においても深刻な問題であり、もし今後の報告書のテーマとして取り上げられれば、日本から情報提供をする大事な機会になる。そして、ヨーロッパにおけるロマの人びとへの物乞いと犯罪行為の強制や、南アジアのダリット女性と少女に対する強制または隷属的な結婚も問題である。これまでは性産業における女性の搾取が主に議論され、その他の形態の人身売買と強制労働にはなかなかスポットライトが当たらなかったが、最近になって国際社会の姿勢が少しずつ変わってきているように思える。その変化に敏感に反応し、効果的な活動をすることがIMADRにも求められていると感じる。

(1)International Labour Organization (2014), “Profits and Poverty: The Economics of Forced Labour”

                   「国際人権NGO 反差別国際運動」

 

 

「現代奴隷」、世界で5千万人に
記者発表 | 2022/09/12
ILO、国際人権団体ウォーク・フリー、国際移住機関(IOM)は12日、強制労働と強制結婚についての報告書「現代奴隷制の世界推計(Global Estimates of Modern Slavery: Forced Labour and Forced Marriage )」を公表しました。2021年時点で世界で5千万人が「現代奴隷」として生活し、そのうち2800万人が強制労働を課せられ、2200万人が強制結婚の状態にあることがわかりました。前回2017年9月に発表した世界推計(2016年時点)と比べ、2021年時点で現代奴隷の状態にある人は1千万人以上増加し、女性と子どもは依然として不均衡なほどぜい弱な状況に置かれていることが明らかになりました。

現代奴隷制は、世界のほぼ全ての国で発生しており、民族、文化、宗教に関係なくみられます。強制労働では半数以上(52%)が、強制結婚では4分の1が、高中所得国または高所得国で起きています。

強制労働
強制労働の大部分(86%)は民間部門で発生しています。商業的性的搾取を除く強制労働は強制労働全体の63%を、商業的性的搾取の強要は23%を占めます。商業的性的搾取を強要されている人のうち、およそ5人のうち4人が女性か少女です。

国家による強制労働は、強制労働全体の14%を占めています。

強制労働を課されている人のおよそ8人に1人が子ども(330万人)で、そのうち半数以上が商業的な性的搾取を強要されています。

強制結婚
推計によれば、2021年のある時点で、2200万人が強制結婚の状態で生活していたと推定できます。2016年の世界推計から660万人増加したことになります。

強制結婚、特に16歳以下の子どもが巻き込まれる強制結婚の実際の発生率は、今回の推計値をはるかに上回るとみられます。子どもは結婚に法的に同意できないため、児童婚は強制婚とみなされます。

強制結婚は、長年定着している家父長制の考え方や慣行と密接に関係しており、状況に大きく左右されるといえます。強制結婚の圧倒的多数(85%以上)は、家族からの圧力によって起きています。強制結婚の3分の2(65%)はアジア太平洋地域でみられるものの、地域の人口規模を考慮すると、その発生率はアラブ諸国で最も高く、千人当たり4.8人が強制結婚を強いられています。

ぜい弱な移民労働者
移民労働者は、非移民の成人労働者に比べ、強制労働を課せられる可能性が3倍以上高いことがわかりました。労働力移動は個人や家庭、コミュニティー、社会に対して概ねプラスの影響を与えますが、規制を伴わない、もしくは貧弱なガバナンスの下で行われる移住、あるいは公平性を欠き、倫理に反する採用慣行のために、移民が強制労働や人身取引に対して特にぜい弱な立場にあることが読み取れます。

ILO事務局長のガイ・ライダーは「現代奴隷制の状況が改善していないことは衝撃的です。基本的人権の根本的な侵害が続くことはいかなることがあっても正当化できません」と述べ、「私たちは何をすべきかわかっています。そして、それが可能だということも。効果的な国ごとの政策と規制は必須です。しかしながら政府が単独でこれを行うことはできません。国際基準は強固な基盤となります。そして、全ての人が手を携えて取り組むことが求められます。労働組合、使用者団体、市民社会、そして市井の人々、その全てが重要な役割を担っています」と話しました。

IOMのアントニオ・ヴィトリーノ事務局長は「この報告書は、あらゆる移動が安全で、法を守り、規制に即したものにすることが喫緊の課題だと強調しています。移民は強制労働や人身取引に対してぜい弱ですが、そのぜい弱性を減らすには何よりまず移動のあらゆる段階において、そしてその身分がいかなるものであろうと、全ての移民(と潜在的移民)の人権と基本的自由を尊重し、保護し、実現することが重要で、それは国ごとの政策と法的枠組みに懸かっています。社会全体が『移民に関する安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト(GCM)』を実施することをはじめ、この衝撃的な傾向を転換するために協力しなければなりません」と述べました。

ウォーク・フリー創設者でディレクターのグレース・フォレスト氏は、「現代奴隷制は持続可能な発展の対極にありますが、2022年の今なお現代奴隷制は世界経済を支えています。これは人為的問題であり、歴史的な奴隷制と根強く残る構造的不平等とが関係しています。さまざまな危機が複雑に絡み合う今日、真の政治的意思こそがこうした人権侵害を終結させる鍵となります」と話しています。

現代奴隷制に終止符を
本報告書は、足並みをそろえ、迅速に行うことで現代奴隷制終結に向けた大きな前進になるであろういくつかの推奨される行動を提案しています。提案には、法律と労働調査の改善・実施、国家による強制労働の廃止、ビジネスとサプライチェーンにおける強制労働と人身取引の対策強化、社会的保護の拡大、結婚の法定年齢を例外なく18歳に引き上げる―などの法的保護の強化が含まれています。ほかにも、移民労働者が直面する人身取引や強制労働リスクが増加していることへの対応、公正で倫理的な採用活動の推進、女性や少女、社会的弱者への支援強化―などがあります。

本報告書で定義されている現代奴隷制は、強制労働と強制結婚の2つで構成されています。どちらも、脅迫、暴力、強制、欺瞞、権力の濫用によって、本人が拒否することも、あるいは離れることもできない搾取の状態のことです。強制労働とは、1930 年の「強制労働に関する条約」 (第29号)で定義されるように「処罰の脅威によって強制され、また、自ら任意に申し出たものでない全ての労働」を指しています。なお、「民間経済における強制労働」には、国家による強制労働以外のあらゆる形態の強制労働が含まれています。

                            「国際労働機関」