教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

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きょうは何の日 8月26日

人権宣言記念日

 

1789年8月26日、フランスの憲法制定国民議会が「人間と市民の権利の宣言」(フランス人権宣言)を採択しました。

 

日本大百科全書(ニッポニカ)」より引用します。 

人権宣言
じんけんせんげん
Déclaration des Droits de l'Homme et du Citoyen フランス語

フランス革命初期、1789年8月26日、国民議会で採択され、「1791年憲法」の前文となった宣言。正式には「人間および市民の権利宣言」。根本の思想は自然法とそれに発する自然権思想で、18世紀啓蒙(けいもう)思想の影響を受け、また直接にはアメリカ合衆国の独立宣言や、その諸州の権利章典などを範としている。「市民」とは、政治的・倫理的共同体を構成する公民的存在を意味する。多くの草案を経て成立した宣言は、これを発する主旨を述べた前文と、本文17条とからなる。各条文の要点は次のとおりである。

 第1条では人間は自由で権利において平等に生まれ、かつ生きること、第2条では自由、安全や所有権、圧制に対する反抗権のごとき自然権保全、第3条では主権在民、第4条では自由の意味、第5条から9条までにおいては法の意義、法の作成、法の前の平等、法の遵守など、第10条では宗教上の寛容、第11条では思想および言論の自由、第12条では諸権利を保障するための公権力の必要、第13条では租税の不可欠とその平等、第14条では租税に関しての権利と義務、第15条では公務員に対し行政上の報告を求める権利、第16条では権力の分立、第17条では所有権の神聖かつ不可侵であることなどが述べられている。

 人権宣言は「アンシャン・レジーム(旧制度)の死亡証書」と評されるように、近代市民社会の原理を示す不朽の文献であり、後世への影響は少なくない。

[山上正太郎]

 

2003(平成15)年、「人間と市民の権利の宣言」の文書はユネスコ「世界の記憶」に登録されました。

人間と市民の権利の宣言

前文 国民議会として構成されたフランス人民の代表者たちは、人の権利に対する無知、忘却、または軽視が、公の不幸と政府の腐敗の唯一の原因であることを考慮し、人の譲りわたすことのできない神聖な自然的権利を、厳粛な宣言において提示することを決意した。この宣言が、社会全体のすべての構成員に絶えず示され、かれらの権利と義務を不断に想起させるように。立法権および執行権の行為が、すべての政治制度の目的とつねに比較されうることで一層尊重されるように。市民の要求が、以後、簡潔で争いの余地のない原理に基づくことによって、つねに憲法の維持と万人の幸福に向かうように。こうして、国民議会は、最高存在の前に、かつ、その庇護のもとに、人および市民の以下の諸権利を承認し、宣言する。

第1条(自由・権利の平等) 人は、自由、かつ、権利において平等なものとして生まれ、生存する。社会的差別は、共同の利益に基づくものでなければ、設けられない。

第2条(政治的結合の目的と権利の種類) すべての政治的結合の目的は、人の、時効によって消滅することのない自然的な諸権利の保全にある。これらの諸権利とは、自由、所有、安全および圧制への抵抗である。

第3条(国民主権 すべての主権の淵源は、本質的に国民にある。いかなる団体も、いかなる個人も、国民から明示的に発しない権威を行使することはできない。

第4条(自由の定義・権利行使の限界) 自由とは、他人を害しないすべてのことをなしうることにある。したがって、各人の自然的諸権利の行使は、社会の他の構成員にこれらと同一の権利の享受を確保すること以外の限界をもたない。これらの限界は、法律によってでなければ定められない。

第5条(法律による禁止) 法律は、社会に有害な行為しか禁止する権利をもたない。法律によって禁止されていないすべての行為は妨げられず、また、何人も、法律が命じていないことを行うように強制されない。

第6条(一般意思の表明としての法律、市民の立法参加権) 法律は、一般意思の表明である。すべての市民は、みずから、またはその代表者によって、その形成に参与する権利をもつ。法律は、保護を与える場合にも、処罰を加える場合にも、すべての者に対して同一でなければならない。すべての市民は、法律の前に平等であるから、その能力にしたがって、かつ、その徳行と才能以外の差別なしに、等しく、すべての位階、地位および公職に就くことができる。

第7条(適法手続きと身体の安全) 何人も、法律が定めた場合で、かつ、法律が定めた形式によらなければ、訴追され、逮捕され、または拘禁されない。恣意的(しいてき)な命令を要請し、発令し、執行し、または執行させた者は、処罰されなければならない。ただし、法律によって召喚され、または逮捕されたすべての市民は、直ちに服従しなければならない。その者は、抵抗によって有罪となる。

第8条(罪刑法定主義 法律は、厳格かつ明白に必要な刑罰でなければ定めてはならない。何人も、犯行に先立って設定され、公布され、かつ、適法に適用された法律によらなければ処罰されない。

第9条(無罪の推定) 何人も、有罪と宣告されるまでは無罪と推定される。ゆえに、逮捕が不可欠と判断された場合でも、その身柄の確保にとって不必要に厳しい強制は、すべて、法律によって厳重に抑止されなければならない。

第10条(意見の自由) 何人も、その意見の表明が法律によって定められた公の株序を乱さない限り、たとえ宗教上のものであっても、その意見について不安を持たないようにされなければならない。

第11条(表現の自由 思想および意見の自由な伝達は、人の最も貴重な権利の一つである。したがって、すべての市民は、法律によって定められた場合にその自由の濫用について責任を負うほかは、自由に、話し、書き、印刷することができる。

第12条(公の武力) 人および市民の権利の保障は、公の武力を必要とする。したがって、この武力は、すべての者の利益のために設けられるのであり、それが委託される者の特定の利益のために設けられるのではない。

第13条(租税の分担) 公の武力の維持および行政の支出のために、共同の租税が不可欠である。共同の租税は、すべての市民の間で、その能力に応じて、平等に分担されなければならない。

第14条(租税に関与する市民の権利) すべての市民は、みずから、またはその代表者によって、公の租税の必要性を確認し、それを自由に承認し、その使途を追跡し、かつその数額、基礎、取立て、および期間を決定する権利をもつ。

第15条(行政の報告を求める権利) 社会は、すべての官吏に対して、その行政について報告を求める権利をもつ。

第16条(権利の保障と権力分立) 権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。

第17条(所有の不可侵、正当かつ事前の補償) 所有は、神聖かつ不可侵の権利であり、何人も、適法に確認された公の必要が明白にそれを要求する場合で、かつ、正当かつ事前の補償のもとでなければ、それを奪われない。

(条文は、樋口陽一・吉田善明編『改定版 解説世界憲法集』-三省堂-より引用)