教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

続・「1ヶ月で勝負」したクラスの記録 ~いのちかがやいて~⑪

映画「きらきら ~いのちかがやいて~」

 

「しばてん」7 太郎、連れて行かれる

 

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この映画のヤマ場となるシーンです。

読みの授業にヤマ場の勝負どころがあるように、映画制作においてもここが勝負どころです。このシーンの直前の「豊かで楽しい日々」は、このシーンを際立たせるための「仕掛け」になっています。

 

太郎が役人に連れて行かれるシーンは、太郎がえぼし山に追い上げられる場面を撮った山の近くにある池のほとりで撮影しました。

11月16日、とにかく風が強くて寒い日でした。その辺の事情は、学級通信№112に記録されています。

  十一月十六日 寒かったロケ IN
 今日、五・六時間目に撮影に行きました。ゆかたに着がえて何分かしたら、だんだん寒くなってきました。撮影しているときも、「はやく終わってよお、寒いねんから。」と思っていました。役人が太郎を連れて行くシーンも、正座で下を向いていてほとんど動かなかったので寒かったです。

 

ロケ UN
 五・六時間目に、学校から少し歩いたところにある池の近くでロケがあった。今日は、六の「豊かで楽しい日々」と、七の「太郎、連れて行かれる」のロケがありました。ロケの最中、手や足は冷たくなるし、きんちょうするよりとにかく寒かったロケでした。

 

 こおりつきそうなロケ I
 ビュー。風がすごかった。今日は、シーン六・七のロケだった。私は、出番があったのでゆかたに着がえた。ゆかたは短いし、うすいし、最悪だった。とても寒かった。私の出る時間は短かったけど、その一瞬だけでもすごく寒かった。それに、ずっとうすい衣装でいている人は大変だろうなあと思った。でも、寒い寒いと言ってても、カメラが回るとみんなしっかり演技をしていた。今日のロケは寒かった。こおりつきそうなロケだった。でもやっぱり楽しかった。

 

十一月十六日 WD
 今日、しばてんの六と七の場面の撮影をした。まず、六の場面を撮影した。一回失敗したけど、うまくとれた。そのあと七の場面をとった。ずっと正座をしていたので、足がとっても痛かった。今日の撮影は、風が強くてとても寒かった。

 

 

映画って大変だあ SM
 「うう、さぶ。」と言いつつ、映画の六・七のシーンをとりに出た。外は風がビュービュー吹いている。ロケって大変だあ。着物を着て練習をした。これははやく終わらないときついなと思い、声を出していた。カメラにうつるとき、少しわらぞうりをはいた。足がひやっとして痛かった。みんな足が真っ赤だった。昔の人ってすごいなあ。ほかのシーン中、私はまだ出るのでずっと着物を着ていた。すっごい寒かった。七のシーンは、ずっと座っていた。風がすごくて、わらぞうりをはいていた人の足がすごい色になっていた。なんとか終わって、ホッとした。今日のロケは寒かった。

 

寒かった撮影 TN
 今日、しばてんの六・七の場面を撮影した。学校の近くの森みたいな場所に行って撮ったが、この日は今までの撮影の何倍もつらかった。その原因はただ一つ。強風ですごく寒かったからだ。着物などに着がえると余計寒かった。この日撮った場面で私が出るのは六の場面だけで、しゃべるのも少しだけだった。七の場面では監督をやった。みんな寒い寒いと言いながら、やっとの思いで撮影が終わった。みんな寒かっただろうし、出番のあった人は表情を作るのが大変だったと思うけど、この日撮影が終わったことは、次の場面へ進めるので次の撮影も頑張ろうと思えた。

 

映画撮影 KT
 今日、二回目の映画撮影が五・六時間目にあった。場面は、六と七だ。この日も私は出番がなかった。寒い中、撮影の本番をしているときにトラックが通ったり、風でドラム缶が鳴ったりした。NGが多かった。みんなの撮影を見ていると、演技って本当にむずかしいんだなあと思った。表情、声、動き、しゃべり方がだめだとOKにはならないから。いよいよ、私の出てくる長者屋敷の場面だ。みんなの演技を参考にしながら、映画作りをしたいと思った。 

 

太郎が役人に連れられていくシーンは、見送る村人たちの後ろ姿とともに、これでもかというくらいに長く映しています。

切り出し画像はその1コマですが、杣道が左にカーブして太郎の姿が見えなくなるまでカメラ歩回し続けました。

 

このシーンが、ラストシーンの布石になります。

原作は、「秋祭りがくるたびに、村びとたちは、いなくなった太郎のことを思い出す。自分たちの心に、いつからか住んでいるしばてんのことを思いながら。」としか書いていません。

読みが不十分だったラストシーンを深めるために、子どもたちにこの場面の映像を見せて、再び考え合いました。