教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

森と湖と実りの大地から ~北海道キャンプ旅行の記録~ ⑩

北海道キャンプ旅行 出発から11日目

1991年8月4日(日)

 
 明け方から雨になった。ぐっと冷え込み、気温は12度まで下がった。仕方なく雨の中でテントを撤収することになったが、カラマツの葉がテントについてしまって難儀した。

※(補足)移動型キャンプ旅行の一番の問題は、濡れたテントの収納です。雨の中での撤収は言うに及ばず、夜露に濡れたテントを干す間もなく片付けることになります。これを車に積み込むのがやっかいで、結果として常設テントやバンガローに頼ることになります。

それにしても1991年夏の北海道は冷たい雨の日が多かったようです。

この年、北海道・東北地方は「冷夏」「日照不足」に見舞われました。

実際に気象庁の気象データによると、開陽台のある「中標津」の8月上旬の数値は、

1991年 平均気温14.7℃ 降水量86.0mm 日照時間  4.0h 

2020年 平均気温19.4℃ 降水量11.5mm 日照時間15.1h。

1991年8月3日の最高気温14.0℃、4日の最低気温11.1℃

2021年8月3日の最高気温26.4℃、4日の最低気温15.9℃  となっています。


 開陽台へ行ってみたが、雨で展望がきかない。弟子屈へ出て、阿寒横断道路を阿寒湖へと向かう。途中双湖台からパンケトウ・ペンケトウの双湖を眺める。ペンケトウは北海道の形に似ている。阿寒湖畔に着いて、ビジターセンターでマリモを見て、そこから自然探勝路を散策してボッケへ出た。温泉街に戻って昼を食べ、アイヌコタンを訪れた。屈斜路湖畔のコタンで出会ったおばあさんの子どもがやっているという店で木掘りの額を買って、アイヌの衣装で写真を撮らせてもらった。

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パンケトウ

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アイヌの衣装に身を包んで

※(補足)阿寒湖畔のアイヌコタンは、土産物屋さんといった印象です。それもまた生活のための手段ではありますが。コタンとしては屈斜路湖畔の方が素朴な感じです。今はどうなっているでしょう。

と言うのは、2019年4月26日に「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(通称アイヌ施策推進法)が公布され、白老にウポポイ(民族共生象徴空間 ウアイヌコㇿコタン)がオープンしています。状況の変化が考えられます。私が白老のアイヌコタンを訪れたのは1977年ですから、当然ここは変わったでしょうが、他のコタンはどうなんでしょう。

アイヌ施策推進法の前に、1997年5月24日に施行された「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(通称アイヌ文化振興法、アイヌ文化法、アイヌ新法)というのがあります。これは1994年にアイヌ初の国会議員となった萱野茂さんの尽力によるところが大です。

萱野茂さんは、アイヌ文化の伝承・保存に努めた方です。1972年には、平取町(びらとりちょう)二風谷(にぶだに)に「萱野茂二風谷アイヌ資料館」を開設されました。私が二風谷を訪れた1997年当時、萱野さんは衆院議員として東京におられました。(話題がそれますが、萱野さんは1997年のアイヌ文化振興法制定の後、1998年に1期限りで議員を辞めています。その際、「人(狩猟民族)は足元が暗くなる前に故郷へ帰るものだ」という言葉を残しました。退き際の美学を感じます。)

私はウポポイのことは知りませんが、アイヌのことを学ぶなら二風谷が一番だと思います。沙流郡平取町字二風谷という地は、通常の観光ルートからは外れていますが…。

 

 足寄への道中、オンネトーへ立ち寄る。阿寒湖畔の雑踏とはうってかわって静かだ。ここは北海道の中でも特に気に入りの場所の一つ。湖面に映るはずの雌阿寒岳の綺麗な姿は霧の中であったが、淡いブルーの湖はいつ見ても神秘的で、いつまで見ていても飽きることがない。

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オンネトー

※(補足)オンネトーは、アイヌ語で「おンネ+とー」、(老いた・大きな+沼・湖)の意です。

1983年に初めて訪れた時は手つかずの自然が残っていて、感動的でした。1991年当時は散策路が整備され、観光バスがやってくるようになっていました。

ところで、オンネトーがある足寄(あしょろ)町は松山千春さんのふるさとです。私の好きな千春さんの楽曲の多くに、ふるさと足寄が出てきます。ひところは観光バスが千春さんの生家を紹介するコースを組んでいたそうです。

 

 足寄から池田へ。途中の車窓に広大なトウモロコシの畑が広がる。池田ではワイン城を見学して、いきがいの丘キャンプ場へ向かう。肉とワインを買って、焼き肉バーベキューとしゃれてみた。夜は公衆温泉浴場へ行って、コインランドリーを探して洗濯をした。

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ワイン城

※(補足)「ワイン城」というのは通称で、正式名称を「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」といいます。建物の外観がヨーロッパ中世の古城に似ていることから「ワイン城」と呼ばれているようです。

ここで造られている十勝ワインに、「町民還元用ワイン」というロゼワインがありました。ワインを製造している町なのだから、池田町民にこそ気軽に十勝ワインを楽しんでもらいたいと、安価で提供されていたわけです。値段は忘れましたが、キャンプ場で飲んだワインというのがそれです。ちなみに「町民還元用ワイン」はいま、「十勝ワイン 町民用ロゼワイン」「十勝ワイン 町民用白ワイン」という名になって、町民でなくてもネットで簡単に手に入ります。

※(補足)「いきがいの丘キャンプ場」は、現在「まきばの家キャンプ場」という名称になっています。夜に入った「公衆温泉浴場」というのは「池田清見温泉」だと思いますが、入浴料金は450円と今も低料金です。