北海道キャンプ旅行 出発から10日目
1991年8月3日(土)
夜半まで響いていた霧笛の音が途絶えた頃、うっすらと夜が明けてきた。木の窓を押し開けてみると、なだらから草原の果てるところに波が押し寄せていた。霧が晴れている。さっそく起き出して、灯台から岬の先端へと散歩をした。一時的に雨も上がった。時計の針は5時30分を指している。
町役場から少し入っていったところに小松牧場がある。午前6時、訪れた時は搾乳中であった。ビン入りの小松牛乳(もちろんここにしか売っていない)を4本買って、車の中で朝食を摂った。牛乳配達の少年の自転車がやってきた。
※(補足)釧路総合振興局のHPに、「浜中町には大正時代に創業され、町内へ宅配も行われている牛乳販売があります。家族で酪農をしながら、1本1本を自分たちの手で丁寧にビン牛乳に加工し、地域の味を作っています。牧場は海の近くにあり、浜中町霧多布の太平洋から吹き付ける潮風や、海霧が運んでくる豊富なミネラルをたっぷり含んだ牧草を牛が食べることで、おいしい牛乳になっています。浜中町でしか飲めない牛乳を味わいに来てください。」と出ています。
琵琶瀬展望台に着いた頃からまた雨になった。展望台に立てば、霧多布湿原を蛇行して流れる川が見える。自然の大きさを感じる。浜中町の職員だろうか、年配の男性が手洗いの掃除をしておられた。子どもがつけていたエトピリカのペンダントを見て、どこで買ったのかと聞かれた。納沙布岬の土産店で買ったと言うと、エトピリカはうちの町の鳥だという。「うちも売り出さなきゃなあ」とぽつり。そのうちここの売店に並ぶかもね。
あやめが原へも行ってみたが、雨降りの早朝とあって人影もなく、早々に引き上げた。摩周湖への道を急ぐ。
弟子屈(てしかが)の手前に多和平(たわだいら)展望台がある。最近売り出したばかりで、360度の展望が御自慢のところだ。「赤いポスト」で休んだ時、ライダーの本で見つけたところだ。あいにくの霧で遠くは見えないが、天気がよければ素晴らしい眺望だろう。とにかくすごい風で、じっと立っていられない。
摩周湖も歌のとおりに霧だった。ただ風によって一瞬霧が晴れる時があって、湖面とカムイシュ島が見えた。揚げいもを食べる。観光客の多さには閉口する。
川湯温泉を経て硫黄山へ。すごい臭気と蒸気。その蒸気で温泉卵をつくる商売の熱心なこと。買い求めて食べてみると、これがまたおいしい。
屈斜路湖畔の砂湯で温泉を掘ってしばらく遊ぶ。近くのアイヌコタンで昼を食べ、チセを見学した。土産を売っていたおばあちゃんがムックリを教えてくれた。土産に一つ買った。
弟子屈まで戻って、スーパーで夕食のおかずを買った。このスーパーのおねえさんがまた楽しい人だった。「北海道なんか何処がいいの」と聞くから、「広いところかな」と言うと、「広いだけで何もない」と言う。しばらく話し込んで、キャンプ地開陽台へ向かう。
養老牛の近くを通る地方道を走った。道の両側に果てしなくジャガイモ畑が広がっている。品種によって白や薄紫の花をつけた列が規則正しく続く。芸術的でさえある。
キャンプ場の近くまで来て、道に迷ってしまった。何せ畑以外に何もなく、同じ様な道が十文字に走っている。目印さえない。やっとの思いで辿り着いたキャンプ場で、これまたおっかないオーナーに出会った。第一声が「静かに過ごせ。うるさくしたら出ていってもらう。それを承知でなら、泊めてやろう」と言うのだ。マナーの悪い野郎どもが増えているからだと思うが、気分が悪い。カラマツの木立のあいだにテントを張った。とびきり静かな夜だった。
※(補足)現在、「開陽台オートキャンプ場」で検索すると、「オートキャンプ開陽台」として2カ所がヒットします。
1つは、別名「ウシ空のキャンプ場」で、開陽台展望台のすぐそばにあります。ここは間違いなく営業しているようですが、私たちがテントを張ったところとは立地条件が違います。
もう1つは、2003年8月にキャンプをした人の投稿から私たちがテントを張った場所だと分かります。ところが、現在営業しているという痕跡を見つけることができません。