小学校のうちに知っておきたい故事成語の第38回は「五里霧中」です。
五里霧中
「五里霧中」の読み方
ごりむちゅう
「五里霧中」の意味
(広さ5里にもわたる深い霧の中に居る意)現在の状態がわからず、見通しや方針の全く立たないことのたとえ。心が迷って考えの定まらないことにもいう。(広辞苑)
「五里霧中」の使い方
彼は今日までその意味がわからずに、まだ五里霧中に彷徨していた。(夏目漱石『明暗』1916年)
「五里霧中」の語源・由来
「五里霧中」の出典は、『後漢書」「張楷(ちょうかい)伝」です。
性好道術、能作五里霧。
時關西人裴優亦能爲三里霧。
自以、不如楷。
從學之。
楷避不肯見。
【読み下し文】
性(せい)道術を好み、能(よ)く五里霧(ごりむ)を作る。
時に関西(かんせい)の人裴優(はいゆう)も亦(ま)た能(よ)く三里霧を為(つく)る。
自(みずか)ら以(おも)へらく楷(かい))に如(し)かずと。
従ひて之(これ)に学ばんとす。
楷避けて見るを肯(がへ)んぜず。
【現代語訳】
張楷(ちょうかい)は生来道術を好み、五里四方にわたって霧を発生させることができた。同じ頃、関西(かんせい)の裴優(はいゆう)も三里の霧を生ずることができた。
裴優は、自分の術は張楷には及ばないと思い、弟子入りして教えを仰ぎたいと思ったが、張楷は避けて面会しようとしなかった。
張楷が術を使って生じさせた霧の故事から、「五里霧(ごりむ)」という言葉が生まれました。もともとは、自分の姿をくらますために自ら霧を発生させるという故事であったのが、後には「五里霧中(五里霧の中)」となり、霧に迷って進むべき道を見失っている状態を指すようになりました。
「五里霧中」の蘊蓄
「五里霧中」の類義語
曖昧模糊(あいまいもこ)
物事がぼんやりしていて、はっきりしないさま。
「曖昧」は「暗くてはっきり見えない様子」を、「模糊」は「本当はどういう形や姿であるか、はっきり分からない様子」を示します。
暗中模索(あんちゅうもさく)
くらやみの中で手さぐりで捜すこと。転じて、手がかりのない物事をさがしもとめること。
※「暗中模索」は、日本語探訪(その57)故事成語「暗中模索」で紹介しています。
「五里霧中」の対義語
一目瞭然(いちもくりょうぜん)
物事が一目見てはっきりとわかること。
明明白白(めいめいはくはく)
とてもはっきりとしている様子。