教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

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日本語探訪(その115) 故事成語「虎視眈々」

小学校のうちに知っておきたい故事成語の第37回は「虎視眈々」です。

 

虎視眈々

 

「虎視眈々」の読み方

こしたんたん

 

「虎視眈々」の意味

(「眈々」は見おろすさま)虎が獲物をねらって目を見張りじっと見おろすさま。機会をねらって様子を窺うさまにいう。(広辞苑

 

「虎視眈々」の使い方

虎視眈々と獲物の到来を待ち受けていたのである。(安部公房『他人の顔』1964年)
 

「虎視眈々」の語源・由来

「虎視眈々」の出典は、『易経(えききょう)』の「頤卦(いか)」です。

 

顚頤吉。虎視眈眈、其欲逐逐、无咎。

【読み下し文】
顚(さかしま)に頤(やしな)わるるも吉なり。虎視眈眈、其の欲、逐逐(ちくちく)たれば、咎(とが)なし。

【現代語訳】

上の者が下の者に面倒を見てもらうことがあっても吉である。虎が獲物を狙うように機会を逃さず、自分の徳を磨こうという欲を追求するのであれば、差しさわりはない。

 

※現在では「虎視眈々」は、下の立場から上の立場を狙うような場面で使われることがありますが、本来は上の立場の者が下を見下ろすシチュエーションで使われる言葉でした。

 

「虎視眈々」の蘊蓄

「虎」の故事成語


苛政は虎よりも猛し
(せいはとらよりもたけし)
《「礼記」檀弓下から》苛政の人民への害は、虎の害よりはなはだしい。

 

市に虎あり(いちにとらあり)
《三人までが市に虎がいると言えば事実でなくても信じられるようになるという「戦国策」魏策の故事から》事実無根の風説も、言う人が多ければ、ついに信じられるようになることのたとえ。三人市虎(しこ)をなす。

 

虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
大きな成果を得るためには、身の危険を冒すことも必要だというたとえ。

 

三人虎を成す(さんにんとらをなす)
《三人までが市に虎がいると言えば事実でなくても信じられるようになるという「戦国策」魏策の故事から》事実無根の風説も、言う人が多ければ、ついに信じられるようになることのたとえ。三人市虎(しこ)をなす。市(いち)に虎(とら)あり。

 

虎に翼(とらにつばさ)
《「韓非子」難勢から》ただでさえ強い力をもつ者にさらに強い力が加わることのたとえ。

 

虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)
権力者の力を頼みにして威張る小者を意味する故事成語。「威」とは威厳、「借る」とは「利用する」という意味。

 

虎を画きて狗に類す(とらをえがきていぬにるいす)
《「後漢書」馬援伝から》勇猛な虎を描こうとして、犬のようなものになってしまう。力量のない者が、すぐれた人のまねをして、かえって軽薄になることのたとえ。また、目標が大きすぎて失敗することのたとえ。

 

張子の虎(はりこのとら)
虎の形をした首の動く張り子のおもちゃ。転じて、首を振る癖のある人、また、虚勢を張る人、見かけだおしの人などをあざけっていう語。

 

暴虎馮河(ぼうこひょうが)
《「論語」述而から》トラに素手で立ち向かい、黄河を徒歩で渡ること。血気にはやり無謀なことをすることのたとえ。「暴虎馮河の勇」