7月3日(その5)
クライネ・シャイデック駅の日陰でへたり込むように休憩をとり、15時30分発のヴェンゲルアルプ鉄道でグリンデルワルトへ下りました。ユングフラウとメンヒとはここでお別れです。
電車は、アイガー北壁の裾野から東壁の裾野を走り下りていきます。
グリンデルワルトという地名は、私の中では20年も昔から憧れの地として記憶されてきました。と言うのは、20年ほど前に制作した3000ピースのジグソーパズルの絵柄というのが、ヴェッターホルンを背にしたグリンデルワルトの村だったのです。いつかこんな所へ行きたい、歩きたいと思ってきた風景が、今まさに車窓に広がっているのです。
なお、「グリンデルワルト」というのは「Grindelwald」という地名の日本語表記ですが、この地方の発音をもとにカタカナ読みしたものです。標準ドイツ語では「グリンデルヴァルト」となります。もっともこれらのカタカナ語は、現地では多分通じません。あえてカタカナ語にするなら、「グリンダヴァルト」といった発音になるようです。
16時12分、標高1027mのグリンデルワルト駅のホームに電車は静かに停車しました。
駅から歩いて5分ほどのところに今宵の宿であるベルベデーレホテルがありました。
夕食は駅近くのレストランで予約されており、ミートフォンデュでした。ここもやっぱり暑かったです。
夕食後、駅の周辺を散歩しました。
駅前に「KIOSK」があります。「キオスクは駅の中、そんなの常識…」って、日本が本家じゃないの?
少し先に、なぜか「mont-bell」の看板があります。入ってみると、日本人スタッフが声を掛けてきました。これは紛れもなく、日本のモンベルです。スイスは涼しい所、高山は寒いと思い込んで来たものですから、スーツケースの中は長袖と防寒着ばかりでした。たまらず、ここで「グリンデルワルト限定」の半袖Tシャツを買いました。「モンベルの店員でも、ここへ来ないと買えないんですよ」ってな言葉に弱いんだよな、並みの日本人は。よし、日本に帰ったら近くのモンベル店へ着て行ってやろう。
モンベルの道向かいのビルに、「COOP」がある。COOPはスイスのスーパーマーケットの店名です。すでに閉店しているので、6本4.8フランのエヴィアンは明朝8時の開店後に買いに来るしかありません。
ビルの屋上で、山際に沈む夕陽を見ました。時計を見ると、20時34分でした。
ホテルの部屋に戻ると、窓を全開にして風を通しました。
私たちの部屋は2階アイガー側の角部屋で、バルコニーに出れば正面に村の牧歌的風景が広がり、その左端がアイガーになっています。もう一方の窓からは駅方面が見え、正面がシュレックホルン(4078m)でその左にヴェッターホルン(3692m)が見えます。まさしく一等席です。
私たちは、シャワーの後バルコニーに置かれた椅子にもたれ、遅くまで暮れゆくアイガーの岩塊を見ていました。