教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

指導要録「主体的に学習に取り組む態度」考④

2016年12月21日の中央教育審議会答申(「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」)を受けて、2017年3月31日に学習指導要領が改訂されます。

小学校の場合は、2018年度と2019年度は移行期間で、2020年度から完全実施になっています。

 

小学校学習指導要領(平成 29 年 3 月 告示)

 

第1章 総則

第1 小学校教育の基本と教育課程の役割

 

3 2の⑴から⑶までに掲げる事項の実現を図り,豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手となることが期待される児童に,生きる力を育むことを目指すに当たっては,学校教育全体並びに各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動(以下「各教科等」という。ただし,第2の3の⑵のア及びウにおいて,特別活動については学級活動(学校給食に係るものを除く。)に限る。)の指導を通してどのような資質・能力の育成を目指すのかを明確にしながら,教育活動の充実を図るものとする。その際,児童の発達の段階や特性等を踏まえつつ,次に掲げることが偏りなく実現できるようにするものとする。

⑴ 知識及び技能が習得されるようにすること。
⑵ 思考力,判断力,表現力等を育成すること。
⑶ 学びに向かう力,人間性等を涵養すること。

 


第3 教育課程の実施と学習評価

 

2 学習評価の充実
 学習評価の実施に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
⑴ 児童のよい点や進歩の状況などを積極的に評価し,学習したことの意義や価値を実感できるようにすること。また,各教科等の目標の実現に向けた学習状況を把握する観点から,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評価の場面や方法を工夫して,学習の過程や成果を評価し,指導の改善や学習意欲の向上を図り,資質・能力の育成に生かすようにすること。
⑵ 創意工夫の中で学習評価の妥当性や信頼性が高められるよう,組織的かつ計画的な取組を推進するとともに,学年や学校段階を越えて児童の学習の成果が円滑に接続されるように工夫すること。 

 

学習指導要領では、評価に関する具体的な記述はありません。

評価については、学習指導要領の改訂を受ける形で、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会で検討されています。

そして、2019年1月21日に部会報告が出されました。 

 

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会

 「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」
                        平成31年1月21日
                        教育課程部会

 

3.学習評価の基本的な枠組みと改善の方向性

(1)学習評価の基本的な枠組み

(図のみ紹介します)

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(2)観点別学習状況の評価の改善について


①観点別学習状況の評価について


○ 今回の学習指導要領改訂では、各教科等の目標や内容を「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力の三つの柱で再整理している。
これらの資質・能力に関わる「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」の観点別学習状況の評価の実施に際しては、このような学習指導要領の規定に沿って評価規準を作成し、各教科等の特質を踏まえて適切に評価方法等を工夫することにより、学習評価の結果が児童生徒の学習や教師による指導の改善に生きるものとすることが重要である。


○ また、これまで各学校において取り組まれてきた観点別学習状況の評価やそれに基づく学習や指導の改善の更なる定着につなげる観点からも、評価の段階及び表示の方法については、現行と同様に3段階(ABC)とすることが適当である。


②「知識・技能」の評価について

(略)

 

③「思考・判断・表現」の評価について

(略)

 

④「主体的に学習に取り組む態度」の評価について


ア)「学びに向かう力、人間性等」との関係


○ 答申では「学びに向かう力、人間性等」には、①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価を通じて見取ることができる部分と、②観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価を通じて見取る部分があることに留意する必要があるとされており、新学習指導要領に示された、各教科等における学びに向かう力、人間性等に関わる目標や内容の規定を踏まえ、各教科等の特質に応じた評価方法の工夫改善を進めることが重要である。


○ また、答申が指摘するとおり「学びに向かう力、人間性等」は、知識及び技能、思考力、判断力、表現力等をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素であり、学習評価と学習指導を通じて「学びに向かう力、人間性等」の涵養を図ることは、生涯にわたり学習する基盤を形成する上でも極めて重要である。


○ したがって、「主体的に学習に取り組む態度」の評価とそれに基づく学習や指導の改善を考える際には、生涯にわたり学習する基盤を培う視点をもつことが重要である。このことに関して、心理学や教育学等の学問的な発展に伴って、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考の過程等を客観的に捉える力(いわゆるメタ認知)など、学習に関する自己調整にかかわるスキルなどが重視されていることにも留意する必要がある。


イ)「主体的に学習に取り組む態度」の評価の基本的な考え方


○ 以上を踏まえると、「主体的に学習に取り組む態度」の評価に際しては、単に継続的な行動や積極的な発言等を行うなど、性格や行動面の傾向を評価するということではなく、各教科等の「主体的に学習に取り組む態度」に係る評価の観点の趣旨に照らして、知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりするために、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら、学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を評価することが重要である。
現行の「関心・意欲・態度」の観点も、各教科等の学習内容に関心をもつことのみならず、よりよく学ぼうとする意欲をもって学習に取り組む態度を評価するのが、その本来の趣旨である。したがって、こうした考え方は従来から重視されてきたものであり、この点を「主体的に学習に取り組む態度」として改めて強調するものである。


○ 本観点に基づく評価としては、「主体的に学習に取り組む態度」に係る各教科等の評価の観点の趣旨に照らし、
① 知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたり
することに向けた粘り強い取組を行おうとする側面と、
② ①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面、
という二つの側面を評価することが求められる。


○ ここで評価の対象とする学習の調整に関する態度は必ずしも、その学習の調整が「適切に行われているか」を判断するものではなく、それが各教科等における知識及び技能の習得や、思考力、判断力、表現力等の育成に結び付いていない場合には、それらの資質・能力の育成に向けて児童生徒が適切に学習を調整することができるよう、その実態に応じて教師が学習の進め方を適切に指導するなどの対応が求められる16。その際、前述したような学習に関する自己調整にかかわるスキルなど、心理学や教育学等における学問的知見を活用することも有効である。
なお、学習の調整に向けた取組のプロセスには児童生徒一人一人の特性があることから、特定の型に沿った学習の進め方を一律に指導することのないよう配慮することが必要であり17、学習目標の達成に向けて適切な評価と指導が行われるよう授業改善に努めることが求められる。


〇 このような考え方に基づき評価を行った場合には、例えば、①の「粘り強い取組を行おうとする側面」が十分に認められたとしても、②の「自らの学習を調整しようとしている側面」が認められない場合には、「主体的に学習に取り組む態度」の評価としては、基本的に「十分満足できる」(A)とは評価されないことになる。
これは、「主体的に学習に取り組む態度」の観点については、ただ単に学習に対する粘り強さや積極性といった児童生徒の取組のみを承認・肯定するだけではなく、学習改善に向かって自らの学習を調整しようとしているかどうかを含めて評価することが必要であるとの趣旨を踏まえたものである。仮に、①や②の側面について特筆すべき事項がある場合には、「総合所見及び指導上参考となる諸事項」において評価を記述することも考えられる。

 

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○ 「主体的に学習に取り組む態度」の評価は、知識及び技能を習得させたり、思考力、判断力、表現力等を育成したりする場面に関わって、行うものであり、その評価の結果を、知識及び技能の習得や思考力、判断力、表現力等の育成に関わる教師の指導や児童生徒の学習の改善にも生かすことによりバランスのとれた資質・能力の育成を図るという視点が重要である。すなわち、この観点のみを取り出して、例えば挙手の回数など、その形式的態度を評価することは適当ではなく、他の観点に関わる児童生徒の学習状況と照らし合わせながら学習や指導の改善を図ることが重要である。


○ この考え方に基づけば、単元の導入の段階では観点別の学習状況にばらつきが生じるとしても、指導と評価の取組を重ねながら授業を展開することにより、単元末や学期末、学年末の結果18として算出される3段階の観点別学習状況の評価については、観点ごとに大きな差は生じないものと考えられる。仮に、単元末や学期末、学年末の結果として算出された評価の結果が「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」の各観点について、「CCA」や「AAC」といったばらつきのあるものとなった場合には、児童生徒の実態や教師の授業の在り方などそのばらつきの原因を検討し、必要に応じて、児童生徒への支援を行い、児童生徒の学習や教師の指導の改善を図るなど速やかな対応が求められる。


ウ)「主体的に学習に取り組む態度」の評価の方法


○ 「主体的に学習に取り組む態度」の具体的な評価の方法としては、ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察や、児童生徒による自己評価や相互評価等の状況を教師が評価を行う際に考慮する材料の一つとして用いることなどが考えられる。その際、各教科等の特質に応じて、児童生徒の発達の段階や一人一人の個性を十分に考慮しながら、「知識・技能」や「思考・判断・表現」の観点の状況を踏まえた上で、評価を行う必要がある。
したがって、例えば、ノートにおける特定の記述などを取り出して、他の観点から切り離して「主体的に学習に取り組む態度」として評価することは適切ではないことに留意する必要がある。


○ また、発達の段階に照らした場合には、児童自ら目標を立てるなど学習を調整する姿が顕著にみられるようになるのは、一般に抽象的な思考力が高まる小学校高学年以降からであるとの指摘もあり、児童自ら学習を調整する姿を見取ることが困難な場合もあり得る。このため、国においては、①各教科等の「主体的に学習に取り組む態度」の評価の観点の趣旨の作成等に当たって、児童の発達の段階や各教科等の特質を踏まえて柔軟な対応が可能となるよう工夫するとともに、②特に小学校低学年・中学年段階では、例えば、学習の目標を教師が「めあて」などの形で適切に提示し、その「めあて」に向かって自分なりに様々な工夫を行おうとしているかを評価することや、他の児童との対話を通して自らの考えを修正したり、立場を明確にして話していたりする点を評価するなど、児童の学習状況を適切に把握するための学習評価の工夫の取組例を示すことが求められる。


○ それぞれの観点別学習状況の評価を行っていく上では、児童生徒の学習状況を適切に評価することができるよう授業デザインを考えていくことは不可欠である。特に、「主体的に学習に取り組む態度」の評価に当たっては、児童生徒が自らの理解の状況を振り返ることができるような発問の工夫をしたり、自らの考えを記述したり話し合ったりする場面、他者との協働を通じて自らの考えを相対化する場面を単元や題材などの内容のまとまりの中で設けたりするなど、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を図る中で、適切に評価できるようにしていくことが重要である。

 

「部会報告」から「観点別学習状況評価」の部分を紹介しました。

「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」という3つの観点のうち、「主体的に学習に取り組む態度」に記述の大半を費やしています。

「主体的に学習に取り組む態度」が従前の「関心・意欲・態度」 と同義としつつも、多くの字数を費やしているところに改訂の意図を感じます。

にもかかわらず、すっきりしません。

ア)「学びに向かう力、人間性等」との関係


○ 答申では「学びに向かう力、人間性等」には、①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価を通じて見取ることができる部分と、②観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価を通じて見取る部分があることに留意する必要があるとされており、新学習指導要領に示された、各教科等における学びに向かう力、人間性等に関わる目標や内容の規定を踏まえ、各教科等の特質に応じた評価方法の工夫改善を進めることが重要である。


○ また、答申が指摘するとおり「学びに向かう力、人間性等」は、知識及び技能、思考力、判断力、表現力等をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素であり、学習評価と学習指導を通じて「学びに向かう力、人間性等」の涵養を図ることは、生涯にわたり学習する基盤を形成する上でも極めて重要である。


○ したがって、「主体的に学習に取り組む態度」の評価とそれに基づく学習や指導の改善を考える際には、生涯にわたり学習する基盤を培う視点をもつことが重要である。このことに関して、心理学や教育学等の学問的な発展に伴って、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考の過程等を客観的に捉える力(いわゆるメタ認知)など、学習に関する自己調整にかかわるスキルなどが重視されていることにも留意する必要がある。

 具体的に指導要録を作成するとき、「学びに向かう力、人間性等」のうち観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価を通じて見取る部分」(感性や思いやり等)について、どう扱えばいいのでしょう。

明確に見えてきません。

 

いよいよ、文部科学省から学校現場におりてきます。