教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

指導要録「主体的に学習に取り組む態度」考③

2016年12月21日に中央教育審議会から出された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」では、評価のあり方について次のように述べています。

 

幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について (答申)
                      平成28年12月21日
                         中央教育審議会

 

第9章 何が身に付いたか -学習評価の充実-


1.学習評価の意義等


○ 学習評価は、学校における教育活動に関し、子供たちの学習状況を評価するものである。「子供たちにどういった力が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、この学習評価の在り方が極めて重要であり、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性を持った形で改善を進めることが求められる。


○ 子供たちの学習状況を評価するために、教員は、個々の授業のねらいをどこまでどのように達成したかだけではなく、子供たち一人一人が、前の学びからどのように成長しているか、より深い学びに向かっているかどうかを捉えていくことが必要である。


○ また、学習評価については、子供の学びの評価にとどまらず、「カリキュラム・マネジメント」の中で、教育課程や学習・指導方法の評価と結び付け、子供たちの学びに関わる学習評価の改善を、更に教育課程や学習・指導の改善に発展・展開させ、授業改善及び組織運営の改善に向けた学校教育全体のサイクルに位置付けていくことが必要である。

 

2.評価の三つの観点


○ 現在、各教科について、学習状況を分析的に捉える「観点別学習状況の評価」と、総括的に捉える「評定」とを、学習指導要領に定める目標に準拠した評価として実施することが明確にされている。評価の観点については、従来の4観点の枠組みを踏まえつつ、学校教育法第30条第2項が定める学校教育において重視すべき三要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」)を踏まえて再整理され、現在、「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の四つの観点が設定されているところである。

 

今回の改訂においては、全ての教科等において、教育目標や内容を、資質・能力の三つの柱に基づき再整理することとしている。これは、資質・能力の育成を目指して「目標に準拠した評価」を実質化するための取組でもある。


○ 今後、小・中学校を中心に定着してきたこれまでの学習評価の成果を踏まえつつ、目標に準拠した評価を更に進めていくため、こうした教育目標や内容の再整理を踏まえて、観点別評価については、目標に準拠した評価の実質化や、教科・校種を超えた共通理解に基づく組織的な取組を促す観点から、小・中・高等学校の各教科を通じて、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理することと
し、指導要録の様式を改善することが必要である


○ その際、「学びに向かう力・人間性等」に示された資質・能力には、感性や思いやりなど幅広いものが含まれるが、これらは観点別学習状況の評価になじむものではないことから、評価の観点としては学校教育法に示された「主体的に学習に取り組む態度」として設定し、感性や思いやり等については観点別学習状況の評価の対象外とする必要がある。


○ すなわち、「主体的に学習に取り組む態度」と、資質・能力の柱である「学びに向かう力・人間性」の関係については、「学びに向かう力・人間性」には①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価(学習状況を分析的に捉える)を通じて見取ることができる部分と、②観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価(個人のよい点や可能性、進歩の状況について評価する)を通じて見取る
部分があることに留意する必要がある。


○ これらの観点については、毎回の授業で全てを見取るのではなく、単元や題材を通じたまとまりの中で、学習・指導内容と評価の場面を適切に組み立てていくことが重要である。


○ なお、観点別学習状況の評価には十分示しきれない、児童生徒一人一人のよい点や可能性、進歩の状況等については、日々の教育活動や総合所見等を通じて積極的に子供に伝えることが重要である。

 

3.評価に当たっての留意点等


○ 「目標に準拠した評価」の趣旨からは、評価の観点については、学習指導要領における各教科等の指導内容が資質・能力を基に構造的に整理されることにより明確化される。
今般、中央教育審議会においては、第3章2.(4)において述べたように、学習評価について学習指導要領の改訂を終えた後に検討するのではなく、本答申において、学習指導要領等の在り方と一体として考え方をまとめることとした。指導要録の改善・充実や多様な評価の充実・普及など、今後の専門的な検討については、本答申の考え方を前提として、それを実現するためのものとして行われることが求められる。


○ 学習指導要領改訂を受けて作成される、学習評価の工夫改善に関する参考資料についても、詳細な基準ではなく、資質・能力を基に再整理された学習指導要領を手掛かりに、教員が評価規準を作成し見取っていくために必要な手順を示すものとなることが望ましい。そうした参考資料の中で、各教科等における学びの過程と評価の場面との関係性も明確にできるよう工夫することや、複数の観点を一体的に見取ることも考えられることなどが示されることが求められる。


○ 評価の観点のうち「主体的に学習に取り組む態度」については、学習前の診断的評価のみで判断したり、挙手の回数やノートの取り方などの形式的な活動で評価したりするものではない。子供たちが自ら学習の目標を持ち、進め方を見直しながら学習を進め、その過程を評価して新たな学習につなげるといった、学習に関する自己調整を行いながら、粘り強く知識・技能を獲得したり思考・判断・表現しようとしたりしているかどうかという、意思的な側面を捉えて評価することが求められる。


このことは現行の「関心・意欲・態度」の観点についても本来は同じ趣旨であるが、上述の挙手の回数やノートの取り方など、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れていないのではないか、という問題点が長年指摘され現在に至ることから、「関心・意欲・態度」を改め「主体的に学習に取り組む態度」としたものである。こうした趣旨に沿った評価が行われるよう、単元や題材を
通じたまとまりの中で、子供が学習の見通しを持って学習に取り組み、その学習を振り返る場面を適切に設定することが必要となる。


○ こうした姿を見取るためには、子供たちが主体的に学習に取り組む場面を設定していく必要があり、「アクティブ・ラーニング」の視点からの学習・指導方法の改善が欠かせない。また、学校全体で評価の改善に組織的に取り組む体制づくりも必要となる。

 

整理すべきポイントがいくつかあります。

 

【ポイント1】目標に準拠した評価」に

指導の観点が「知識技能」「表現思考判断」「学習意欲(=関心・意欲・態度」という3観点であるのに対して、評価の観点は「知識・理解」「技能・表現」「思考・判断」「関心・意欲・態度」という4観点であるという問題が解消されます。

 

指導の観点「知識・技能」 → 評価の観点「知識・技能」

指導の観点「思考力・判断力・表現力等」 → 評価の観点「思考・判断・表現」

指導の観点「学びに向かう力・人間性」 → 評価の観点「主体的に学習に取り組む態度

 

学びに向かう力・人間性」については後述しますが、基本的には「目標に準拠した評価」という至って当たり前の状態になるわけです。

 

【ポイント2】「学びに向かう力・人間性」と「主体的に学習に取り組む態度」

指導の観点「学びに向かう力・人間性」が、評価の観点では「主体的に学習に取り組む態度」と文言が変わります。

このことについては、こう説明しています。

「学びに向かう力・人間性等」に示された資質・能力には、感性や思いやりなど幅広いものが含まれるが、これらは観点別学習状況の評価になじむものではないことから、評価の観点としては学校教育法に示された「主体的に学習に取り組む態度」として設定し、感性や思いやり等については観点別学習状況の評価の対象外とする必要がある。

それで、

①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価(学習状況を分析的に捉える)を通じて見取ることができる部分のみを評価し、

②観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価(個人のよい点や可能性、進歩の状況について評価する)を通じて見取ることになります。

 

【ポイント3】「関心・意欲・態度」と「主体的に学習に取り組む態度」

従来の「関心・意欲・態度」と「主体的に学習に取り組む態度」の関係については、

本来は同じ趣旨であると述べています。

ではなぜ変更するかというと、「挙手の回数やノートの取り方など、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れていないのではないか、という問題点が長年指摘され現在に至ることから」変えたというのです。

これには唖然とします。

言い回しを変えれば「誤解が払拭」されると、本気で考えているのでしょうか。そもそも、「挙手の回数やノートの取り方など、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価」は、「誤解」が原因で行われていたのでしょうか。私の現場感覚で言えば、態度を測る物差しなどなく、それゆえに評価することが困難です。子どもや保護者から評価の根拠を問われたとき、数的なデータがなければ説明の客観性を担保できないという当世の事情もあります。

 

さて、このあと学習指導要領と指導要録が改訂されます。