小学校3・4年生の教科書に登場することわざの第21回は「泣きっ面に蜂」です。教科書の表記は、「泣きっつらにはち」となっています。
泣きっ面に蜂
「泣きっ面に蜂」の読み方
なきっつらにはち
「泣きっ面に蜂」の意味
泣いているときに顔を蜂に刺されて、いっそう辛い思いをする。悪いことが重なること、不幸な上にさらに辛いことが加わることのたとえ。(ことわざを知る辞典)
「泣きっ面に蜂」の使い方
一と月余り通ったある日、淋巴腺が痛みだし腫れて発熱した。やがて化膿して痛みは去ったが腫れは引かず膿うみも容易にとまらなかった。勿もち論ろん神経麻痺の回復ははかばかしくはいかなかったので、全く泣き面に蜂だった。(和辻照『和辻哲郎とともに』1966年)
「泣きっ面に蜂」の語源・由来
「泣きっ面に蜂」は、ただでさえ不幸であるのに、さらに不幸が立て続けに起きる不運な状況を表現した言葉で、 江戸いろはかるたに採用されたことでよく知られるようになったことわざです。
いろはかるたにおいて、江戸時代は「泣く面を蜂が刺す」、明治時代前期は「泣き面を蜂が刺す」、昭和になって「泣き面に蜂」と変化していったようです。
本来は「泣き面に蜂(なきつらにはち)」ですが、今日では強調のため促音化した「泣きっ面に蜂」が多く用いられるようになりました。
「泣きっ面に蜂」の蘊蓄
「泣きっ面に蜂」の類義語
「踏んだり蹴ったり」(ふんだりけったり)…不運や災難などが続き、さんざんな目にあうことにいう語。ふんだりけたり。(広辞苑)
「弱り目に祟り目」(よわりめにたたりめ)…不運の上に不運が重なること。(広辞苑)
ふと、疑問が生じました。
「不運・災難」を言うのであれば、「踏んだり蹴ったり」ではなく「踏まれたり蹴られたり」ではないのか?
『日本人が気づいていないちょっとヘンな日本語』の著書である長尾昭子さんが、こんな説明をしておられます。
もともとは加害者側からの言い方で「踏んだり蹴ったりの目に遭わせてやる」だったものが、被害者側の言い方である「踏んだり蹴ったりの目に遭わされた」となり、それが省略されて「踏んだり蹴ったり」となったのではないかといわれています。