教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

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日本語探訪(その132) 故事成語「馬耳東風」

小学校のうちに知っておきたい故事成語の第54回は「馬耳東風」です。

 

馬耳東風

 

「馬耳東風」の読み方

ばじとうふう

 

「馬耳東風」の意味

人の意見や批評などを、心に留めずに聞き流すこと。馬の耳に風。(広辞苑

 

「馬耳東風」の使い方

自分は、どういうものか、女の身の上噺(ばなし)というものには、少しも興味を持てないたちで、それは女の語り方の下手なせいか、つまり、話の重点の置き方を間違っているせいなのか、とにかく、自分には、つねに、馬耳東風なのでありました。(太宰治人間失格』1948年)
 

「馬耳東風」の語源・由来

「馬耳東風」の出典は、李白「答王十二寒夜獨酌有懐」(王十二の寒夜に独酌して懐〈おも〉ひ有りに答う )です。

 

答王十二寒夜独酌有怀

            李白
昨夜吴中雪,子猷佳兴发。
万里浮云卷碧山,青天中道流孤月。
孤月沧浪河汉清,北斗错落长庚明。
怀余对酒夜霜白,玉床金井冰峥嵘。
人生飘忽百年内,且须酣畅万古情。
不能狸膏金距学斗鸡,坐令鼻息吹虹霓。
不能学哥舒,横行青海夜带刀,西屠石堡取紫袍。
吟诗作赋北窗里,万言不直一杯水。
世人闻此皆掉头,有如东风射马耳
鱼目亦笑我,谓与明月同。
骅骝拳跼不能食,蹇驴得志鸣春风。
折杨黄华合流俗,晋君听琴枉清角。
巴人谁肯和阳春,楚地由来贱奇璞。
黄金散尽交不成,白首为儒身被轻。
一谈一笑失颜色,苍蝇贝锦喧谤声。
曾参岂是杀人者?谗言三及慈母惊。
与君论心握君手,荣辱于余亦何有?
孔圣犹闻伤凤麟,董龙更是何鸡狗!
一生傲岸苦不谐,恩疏媒劳志多乖。
严陵高揖汉天子,何必长剑拄颐事玉阶。
达亦不足贵,穷亦不足悲。
韩信羞将绛灌比,祢衡耻逐屠沽儿。
君不见李北海,英风豪气今何在!
君不见裴尚书,土坟三尺蒿棘居!
少年早欲五湖去,见此弥将钟鼎疏。

 

 

吟詩作賦北窓裏、萬言不直一杯水。

世人聞此皆掉頭、有如東風射馬耳

【読み下し文】
詩を吟(ぎん)じ賦(ふ)を作る 北窗(ほくそう)の裏、
萬言(ばんげん)直(あたい)せず、一杯の水。
世人此(こ)れを聞きて皆頭(こうべ)を掉(ふ)る、
東風の馬耳(ばじ)を射るが如(ごと)き有り。

【現代語訳】
北に面した窓に寄りかかって、詩を吟じ、賦(ふ)を作り、多くの優れた言葉を連ねても、一杯の水にも値(あたい)しないのだ。というのも、世間の人々は詩や賦を聞いても(そのすばらしさを理解できずに)頭を振り、ちょうど馬の耳に東風が吹くのと同じように、気にもとめられないのだ。

 

「馬耳東風」の蘊蓄

「馬耳東風」の類義語

馬の耳に念仏

※日本語探訪(その25)ことわざ「馬の耳に念仏」参照

 

馬の耳に風

蛙の面に水

猫に小判

猫に石仏

豚に真珠

犬に論語

兎に祭文(うさぎにさいもん)

牛に経文

牛に説法馬に銭

犬に念仏猫に経

豚に念仏猫に経