教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その84) 故事成語「一朝一夕」

小学校のうちに知っておきたい故事成語の第23回は「一朝一夕」です。

 

一朝一夕

 

「一朝一夕」の読み方

いっちょういっせき 

 

「一朝一夕」の意味

ひと朝かひと晩。わずかな時日。(広辞苑

 

「一朝一夕」の使い方

なかなか一朝一夕に解決の出来ぬ難問題を提出する。(森鷗外『雁』1911~13年) 

 

「一朝一夕」の語源・由来

「一朝一夕」の出典は、『易経(えききよう)』「坤(こん)」です。「坤」は、 易の八卦(はっけ)の一つです。

 

積善之家必有餘慶。
積不善之家必有餘殃。
臣弑其君、子弑其父、
一朝一夕之故。
其所由來者漸矣。
由辯之不早辯也。
易曰、履霜堅冰至。
蓋言順也。

【読み下し文】
積善(せきぜん)の家には必ず余慶(よけい)有り。
積不善(せきふぜん)の家には必ず余殃(よおう)有り。
臣(しん)にして其(そ)の君(きみ)を弑(しい)し、子にして其の父を弑(しい)するは、
一朝一夕(いっちょういっせき)の故(こと)に非(あら)ず。
其(そ)の由(よ)って來る所の者は漸(ぜん)なり。
之(これ)を辯(べん)じて早く辯ぜざるに由(よ)るなり。
易に曰く、霜(しも)を履(ふ)んで堅冰至(けんぴょういた)る、と。
蓋(けだ)し順(じゅん)なるを言うなり。

【現代語訳】

善行を積み重ねた家には、その報いとしてきっと幸福が子孫にまで及び、
反対に不善を積み重ねた家には、
きっと災禍が子孫にまで降りかかるものである。
臣下が自分の君主を殺したり、
子が自分の親を殺したりするような痛ましい事件は、
一朝一夕の短い期間で起こりうる性質のものではない。
霜を踏んで歩く季節を経ると、やがて氷の張る季節がくるように、
物事の兆候ちょうこうが現れれば、大事が間もなくやってくる、
早い段階にその事態を理解し適切な措置そちを施ほどこさなかった結果なのである。

 

「一朝一夕」の蘊蓄

「一■一■」の四字熟語

一飲一啄(いちいんいったく)
一栄一辱(いちえいいちじょく)
一栄一落(いちえいいちらく)
一詠一觴(いちえいいっしょう)
一往一来(いちおういちらい)
一芸一能(いちげいいちのう)
一言一行(いちげんいっこう)
一期一会(いちごいちえ)
一伍一什(いちごいちじゅう)
一語一句(いちごいっく)
一合一離(いちごういちり)
一言一句(いちごんいっく)
一字一句(いちじいっく)
一汁一菜(いちじゅういっさい)
一上一下(いちじょういちげ)
一杖一鉢(いちじょういっぱつ)
一能一芸(いちのういちげい)
一分一厘(いちぶいちりん)
一木一草(いちぼくいっそう)
一問一答(いちもんいっとう)
一遊一予(いちゆういちよ)
一利一害(いちりいちがい)
一離一合(いちりいちごう)
一竜一猪(いちりょういっちょ)
一喜一憂(いっきいちゆう)
一貴一賤(いっきいっせん)
一丘一壑(いっきゅういちがく)
一裘一葛(いっきゅういっかつ)
一虚一盈(いっきょいちえい)
一虚一実(いっきょいちじつ)
一挙一動(いっきょいちどう)
一琴一鶴(いっきんいっかく)
一句一語(いっくいちご)
一薫一蕕(いっくんいちゆう)
一闔一闢(いっこういちびゃく)
一国一城(いっこくいちじょう)
一糸一毫(いっしいちごう)
一弛一張(いっしいっちょう)
一失一得(いっしついっとく)
一種一瓶(いっしゅいっぺい)
一宿一飯(いっしゅくいっぱん)
一觴一詠(いっしょういちえい)
一笑一顰(いっしょういっぴん)
一心一意(いっしんいちい)
一心一向(いっしんいっこう)
一進一退(いっしんいったい)
一心一徳(いっしんいっとく)
一成一旅(いっせいいちりょ)
一世一代(いっせいちだい)
一銭一厘(いっせんいちりん)
一措一画(いっそいっかく)
一草一木(いっそういちぼく)
一治一乱(いっちいちらん)
一張一弛(いっちょういっし)
一朝一夕(いっちょういっせき)
一長一短(いっちょういったん)
一点一画(いってんいっかく)
一得一失(いっとくいっしつ)
一徳一心(いっとくいっしん)
一貧一富(いっぴんいっぷ)
一夫一婦(いっぷいっぷ)
一放一収(いっぽういっしゅう)
一飽一襲(いっぽういっしゅう)