教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

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日本語探訪(その85) 故事成語「井の中の蛙大海を知らず」

小学校のうちに知っておきたい故事成語の第24回は「井の中の蛙大海を知らず」です。

 

井の中の蛙大海を知らず

 

井の中の蛙大海を知らず」の読み方

いのなかのかわずたいかいをしらず 

 

井の中の蛙大海を知らず」の意味

考えや知識が狭くて、もっと広い世界があることを知らない。世間知らずのこと、見識の狭いことにいう。(広辞苑

 

井の中の蛙大海を知らず」の使い方

自分がいかに教養のない世間知らずであったか、思いあがった井の中の蛙であったかということを思い知らされたのです。(筒井康隆『エディプスの恋人』1977年)
 

井の中の蛙大海を知らず」の語源・由来

井の中の蛙大海を知らず」の出典は、『荘子 秋水篇』です。

 

井鼃不可以語於海者、拘於虛也。
夏蟲不可以語於冰者、篤於時也。
曲士不可以語於道者、束於教也。


【読み下し文】

井鼃(せいあ)は以(も)って海を語るべからざるは、虚(きょ)に拘(とら)わるればなり。

夏虫は以って冰(ひょう)を語るべからざるは、時に篤(あつ)ければなり。

曲士(きょくし)は以って道を語るべからざるは、教へに束ねらるればなり。


【現代語訳】

井の中の蛙と海のことを語ることができないのは、虚(くぼみ)のことしか知らないからである。

夏の虫と氷のことを語ることができないのは、もっぱら夏の時季のものだからである。曲士(田舎者、又は心のよこしまな人、或いはあることに秀でる人とも)と「道」の事を語ることができないのは、ある教条にとらわれているからである。 

 

井の中の蛙大海を知らず」の蘊蓄

井の中の蛙大海を知らず」の別の言い方
井の中の蛙
「井底の蛙(せいていのあ)」
「井蛙(せいあ)」

 

井の中の蛙大海を知らず」の類義語

鍵の穴のから天を覗く」(かぎあなからてんをのぞく)…狭い見識で大きな問題を考えることのたとえ。


葦の髄から天井を覗く」(よしのずいからてんじょうをのぞく)… 細い葦の茎の管を通して天井を見て、それで天井の全体を見たと思い込むこと。 自分の狭い見識に基づいて、かってに判断することのたとえ。


夏虫疑氷」(かちゅうひぎょう)…見聞が狭いことのたとえ。見聞の狭い人は広い世界を理解しえないたとえ。見識の狭い人が自分の知らないことを信じようとしないこと。冬を知らない夏の虫は、冬に氷というものがあるのを信じない意から。一般に「夏虫(かちゅう)、氷(こおり)を疑うたが)う」と訓読を用いる。


夏の虫氷を笑う」…見識が狭いことのたとえ。 夏の間だけ生きている虫は、氷の存在を理解できずに氷を笑うという意から。

 

夏虫疑氷」「夏の虫氷を笑う」は、『荘子 秋水篇』の「夏蟲不可以語於冰者、篤於時也。」に由来する語です。「井の中の蛙大海を知らず」と「兄弟語」ということになります。