教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その101) ことわざ「笑う門には福来たる」

小学校3・4年生の教科書に登場することわざの第28回(ことわざの項の最終回)は「笑う門には福来たる」です。教科書の表記は、「わらう門には福来たる」となっています。

 

笑う門には福来たる

 

「笑う門には福来たる」の読み方

 わらうかどにはふくきたる

 

「笑う門には福来たる」の意味

いつも笑い声が溢れる家には、自然に幸運が訪れる。明るく朗らかにいれば幸せがやってくるという意味。また、悲しいこと・苦しいことがあっても、希望を失わずにいれば幸せがやって来るということ。(故事ことわざ辞典)

 

「笑う門には福来たる」の使い方

「いつまでも引きずって暗い顔ばかりしていると、家中がお通夜みたいだ。笑う門には福来たるというように、明るく暮らしていればきっと良いことがあるはずだよ」 

 

「笑う門には福来たる」の語源・由来

「笑う門には福来たる」の由来については諸説あります。

ここでは「福笑い」説と「祝福芸」説を紹介します。

 

正月の遊びの中に「福笑い」という遊びがあります。これは、顔の輪郭と目や鼻や口などパーツがバラバラになっており、それを目隠しをした状態で顔を作るという遊びです。当然目隠しをしているのでバラバラになるわけですが、この出来上がった面白い顔を見て笑って笑顔になることから、「笑う門には福来たる」ということわざに発展したというものです。

 

北村孝一監修『ことわざを知る辞典』によると、「笑う門には福来たる」の由来について、日本の中世の祝福芸が考えられるといいます。

当時は、正月になると七福神である大黒天と恵比寿の姿に変装した人が、家々の門の前に現れて笑いを振りまき、家主から金銭などのお返しを受け取る大黒舞という風習がありました。笑いが福を呼ぶと信じ、大黒舞を歓迎する庶民が大勢いたために、「笑う門には福来たる」という言葉が生まれたというものです。

 

江戸時代に、上方いろはかるたの「わ」に「笑う門には福来たる」が収録され、定着していったようです。

 

 「笑う門には福来たる」の蘊蓄

「笑う門には福来たる」の類義語

笑門来福」(しょうもんらいふく) 

※「笑う門には福来たる」は、中国語で「笑门开幸福来」(「门」は「門」、「开」は「開」)となります。ただし、中国には「笑門来福」「笑門福来」の語は存在しないようです。つまり、「笑う門には福来たる」の語源が「笑門来福」という中国語という可能性はなさそうです。

 

Fortune comes in by a merry gate.」(幸運は陽気な門から入ってくる)

 

Laugh and be fat.」(笑えば肥える)

 

和気財を生ず」…仲が良く和やかな雰囲気であれば、自然とお金やモノが入ってくる