教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その110) 慣用句「『鼻』のつく慣用句」

小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第44回(慣用句の項の最終回)は「『鼻』のつく慣用句」です。教科書の課題は、「『鼻』のつく慣用句を集めよう」です。

 

ここで取り上げるのは次の語です。

鼻が胡坐をかく
鼻が利く
鼻が高い
鼻が曲がる
鼻であしらう
鼻で笑う
鼻に当てる
鼻に掛ける
鼻に付く
鼻も動かさず
鼻を明かす
鼻を打つ
鼻を折る
鼻を欠く
鼻を刺す
鼻を高くする
鼻を突き合わせる
鼻を突く
鼻を摘まれても分からない
鼻を鳴らす

鼻脂引く
鼻息が荒い
鼻息を窺う
鼻歌まじり
鼻薬を嗅がせる
鼻毛が長い
鼻毛を数える
鼻毛を伸ばす
鼻毛を抜く
鼻毛を読む
鼻筋が通る
鼻血も出ない
鼻っ柱が強い
鼻っ柱をへし折る
鼻の下が長い
鼻持ちならない

 

鼻が胡坐をかく

 

「鼻が胡坐をかく」の読み方

はながあぐらをかく 

 

「鼻が胡坐をかく」の意味

鼻の低くて横に広いさまをいう。(大辞泉

 

「鼻が胡坐をかく」の使い方

鼻が胡座をかいた顔。 

 

 

鼻が利く

 

「鼻が利く」の読み方

はながきく 

 

「鼻が利く」の意味

(嗅覚が鋭い意から)わずかな兆候から役に立つ事柄を見つけ出す能力を持っている。(広辞苑

 

「鼻が利く」の使い方

彼女は鼻が利くから、ウソをついてもすぐにバレてしまう。
 

 

鼻が高い

 

「鼻が高い」の読み方

はながたかい 

 

「鼻が高い」の意味

得意なさまである。自慢げである。(広辞苑

 

「鼻が高い」の使い方

孝行息子を持って鼻が高い。

 

 

鼻が曲がる

 

「鼻が曲がる」の読み方

はながまがる 

 

「鼻が曲がる」の意味

悪臭があまりにひどいことのたとえ。(広辞苑

 

「鼻が曲がる」の使い方

鼻が曲がるような腐臭がする。 

 

鼻であしらう

 

「鼻であしらう」の読み方

はなであしらう 

 

「鼻であしらう」の意味

相手の言葉に、ろくに返事もせずに冷淡にあつかう。(広辞苑

 

「鼻であしらう」の使い方

忠告したが鼻であしらわれる。 

 

 

鼻で笑う

 

「鼻で笑う」の読み方

はなでわらう 

 

「鼻で笑う」の意味

相手を見下して、冷淡にあざけり笑う。(広辞苑

 

「鼻で笑う」の使い方

50m走で負けて鼻で笑われる。 

 

 

鼻に当てる

 

「鼻に当てる」の読み方

 はなにあてる

 

「鼻に当てる」の意味

自慢する。鼻にかける。(広辞苑

 

「鼻に当てる」の使い方

「わごりよは時ならず川魚を取つて上ぐるに依つて、それを取つて上げさせ、鼻に当てて出勤をしたならば」 (狂言、武悪)

 

鼻に掛ける

 

「鼻に掛ける」の読み方

はなにかける 

 

「鼻に掛ける」の意味

自慢する。得意がる。(広辞苑

 

「鼻に掛ける」の使い方

学歴を鼻に掛ける。

 

鼻に付く

 

「鼻に付く」の読み方

はなにつく 

 

「鼻に付く」の意味

①いやな臭いがする。
②飽きて嫌になる。また、嫌みに感じられる。(広辞苑

 

「鼻に付く」の使い方

①安物の香水が鼻に付く。
②自信たっぷりな様子が鼻に付く。

 

 

鼻も動かさず

 

「鼻も動かさず」の読み方

はなもうごかさず 

 

「鼻も動かさず」の意味

取りすました顔つきの形容。(広辞苑

 

「鼻も動かさず」の使い方

「鼻も動かさずつべつべ申せば」 (浮世草子・浮世栄花一代男)

 

鼻を明かす

 

「鼻を明かす」の読み方

はなをあかす 

 

「鼻を明かす」の意味

相手がいい気になっているすきにだしぬいて、あっと言わせる。(広辞苑

 

「鼻を明かす」の使い方

仲間の鼻を明かしてやりたい。 

 

 

鼻を打つ

 

「鼻を打つ」の読み方

はなをうつ 

 

「鼻を打つ」の意味

強いにおいが鼻を刺激する。鼻を突く。(大辞泉

 

「鼻を打つ」の使い方

消毒臭が鼻を打つ。 

 

鼻を折る

 

「鼻を折る」の読み方

はなをおる 

 

「鼻を折る」の意味

相手の慢心をくじく。恥をかかせる。鼻柱を折る。鼻をくじく。(広辞苑

 

「鼻を折る」の使い方

高慢ちきの鼻を折る。 

 

鼻を欠く

 

「鼻を欠く」の読み方

はなをかく 

 

「鼻を欠く」の意味

ひどく損をする。得るところより失うところが多い。(広辞苑

 

「鼻を欠く」の使い方

「信頼は一日の軍に鼻を欠きけれ」(古活字本平治)

 

 

鼻を刺す

 

「鼻を刺す」の読み方

はなをさす 

 

「鼻を刺す」の意味

においが強く鼻を刺激する。鼻を突く。(大辞泉

 

「鼻を刺す」の使い方

悪臭が鼻を刺す。

 

 

鼻を高くする

 

「鼻を高くする」の読み方

はなをたかくする 

 

「鼻を高くする」の意味

①自慢する。誇る。
②面目を施す。名誉をあげる。(広辞苑

 

「鼻を高くする」の使い方

こんどは娘が留学生試験に合格したので、彼女はますます鼻を高くした。 

 

 

鼻を突き合わせる

 

「鼻を突き合わせる」の読み方

はなをつきあわせる 

 

「鼻を突き合わせる」の意味

非常に近く寄り合う。また、狭い場所に一緒にいる。(大辞泉

 

「鼻を突き合わせる」の使い方

あの人は毎日鼻を突き合わせている同僚だ。

 

鼻を突く

 

「鼻を突く」の読み方

はなをつく 

 

「鼻を突く」の意味

悪臭などが激しくにおう。(広辞苑

 

「鼻を突く」の使い方

つんと鼻を突く悪臭がする。 

 

 

鼻を摘まれても分からない

 

「鼻を摘まれても分からない」の読み方

はなをつままれてもわからない 

 

「鼻を摘まれても分からない」の意味

真っ暗で何も見えないさまにいう言葉。(大辞泉

 

「鼻を摘まれても分からない」の使い方

鼻をつままれても分からないような闇夜を歩いて行く。 

 

 

鼻を鳴らす

 

「鼻を鳴らす」の読み方

はなをならす 

 

「鼻を鳴らす」の意味

甘え声を出す。甘える。また、嘲笑したり不満を表したりする。(広辞苑

 

「鼻を鳴らす」の使い方

鼻を鳴らしてねだる。 

 

 

鼻脂引く

 

「鼻脂引く」の読み方

はなあぶらひく 

 

「鼻脂引く」の意味

鼻脂を塗る。うまくゆくように十分準備するたとえにもいう。(日本国語大辞典

 

「鼻脂引く」の使い方

「矢束解て押(くつろげ)、中差(なかざし)に鼻油(ハナアフラ)引て待懸たり」 (『太平記』)

 

鼻息が荒い

 

「鼻息が荒い」の読み方

はないきがあらい 

 

「鼻息が荒い」の意味

意気込みがはげしい。大そう気負っている。(広辞苑

 

「鼻息が荒い」の使い方

目指すはチャンピオンの座と鼻息が荒い。

 

 

鼻息を窺う

 

「鼻息を窺う」の読み方

はないきをうかがう 

 

「鼻息を窺う」の意味

恐る恐る相手の機嫌・意向をさぐる。(広辞苑

 

「鼻息を窺う」の使い方

上役の鼻息を窺う。 

 

鼻歌まじり

 

「鼻歌まじり」の読み方

はなうたまじり 

 

「鼻歌まじり」の意味

鼻歌をうたいながら気軽に事をすること。(大辞泉

 

「鼻歌まじり」の使い方

鼻歌まじりで仕事をする。

 

鼻薬を嗅がせる

 

「鼻薬を嗅がせる」の読み方

はなぐすりをかがせる 

 

「鼻薬を嗅がせる」の意味

贈賄する。「鼻薬をきかせる」とも。(広辞苑

 

「鼻薬を嗅がせる」の使い方

鼻薬を嗅がせて巧みに操る。 

 

鼻毛が長い

 

「鼻毛が長い」の読み方

はなげがながい 

 

「鼻毛が長い」の意味

女の色香におぼれ、うつつをぬかしているさまにいう。(広辞苑

 

「鼻毛が長い」の使い方

鼻毛が長い酔客 

 

 

鼻毛を数える

 

「鼻毛を数える」の読み方

はなげをかぞえる 

 

「鼻毛を数える」の意味

女が、自分に迷っている男子を翻弄(ほんろう)する。鼻毛を読む。(広辞苑

 

「鼻毛を数える」の使い方

「鼻毛を数えられしおはるが色香に溺るるより」(魯文『高橋阿伝夜叉譚』) 

 

鼻毛を伸ばす

 

「鼻毛を伸ばす」の読み方

はなげをのばす 

 

「鼻毛を伸ばす」の意味

女の色香に心を奪われ、だらしなくなる。(大辞泉

 

「鼻毛を伸ばす」の使い方

 若い女性とみると鼻毛を伸ばす。

 

鼻毛を抜く

 

「鼻毛を抜く」の読み方

はなげをぬく 

 

「鼻毛を抜く」の意味

出し抜く。たぶらかす。(広辞苑

 

「鼻毛を抜く」の使い方

「鼻毛を抜かれて家産を蕩尽しても」(魯庵『社会百面相』) 

 

鼻毛を読む

 

「鼻毛を読む」の読み方

はなげをよむ 

 

「鼻毛を読む」の意味

女が、自分に迷っている男子を翻弄(ほんろう)する。鼻毛を数える。(広辞苑

 

 

「鼻毛を読む」の使い方

「彼、あんなに彼女に金を注ぎ込んであげくの果てに振られたなんて、彼女は彼の鼻毛を読んでいたのだよ」 

 

鼻筋が通る

 

「鼻筋が通る」の読み方

はなすじがとおる 

 

「鼻筋が通る」の意味

美しい顔立ちであることを言い表す言葉。
鼻が高く、眉間から鼻先までまっすぐ形が整っているということから。(ことわざ辞典)

 

「鼻筋が通る」の使い方

彼は鼻筋が通ったいい男だ。 

 

 

鼻血も出ない

 

「鼻血も出ない」の読み方

はなぢもでない  

 

「鼻血も出ない」の意味

すっかり使い切って何も残っていない。(広辞苑

 

「鼻血も出ない」の使い方

さかさに振っても鼻血も出ない。

 

鼻っ柱が強い

 

「鼻っ柱が強い」の読み方

 はなっぱしらがつよい

 

「鼻っ柱が強い」の意味

強く主張して譲らない。きかぬ気である。鼻っぱしが強い。(広辞苑

 

「鼻っ柱が強い」の使い方

鼻っ柱が強く上役にも平然と文句を言う。 

 

 

鼻っ柱をへし折る

 

「鼻っ柱をへし折る」の読み方

はなっぱしらをへしおる 

 

「鼻っ柱をへし折る」の意味

相手の向こう意気や自信をくじく。(大辞泉

 

「鼻っ柱をへし折る」の使い方

つけ上がった若僧の鼻っ柱をへし折る。

 

 

鼻の下が長い

 

「鼻の下が長い」の読み方

はなのしたがながい 

 

「鼻の下が長い」の意味

女にあまい。女色に迷いやすい。鼻下長。(広辞苑

 

「鼻の下が長い」の使い方

女性に言い寄られて鼻の下が長くなる。 

 

鼻持ちならない

 

「鼻持ちならない」の読み方

はなもちならない 

 

「鼻持ちならない」の意味

言語や行動ががまんできないほど不愉快である。(大辞泉

 

「鼻持ちならない」の使い方

あの人は出身大学を自慢して鼻持ちならない人だ。