教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」施行

2022年4月1日、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が施行されます。

 

朝日新聞デジタルが伝えた記事です。

いじめと感じて「嫌な気持ちに」1万2千人が回答 奈良県教委の調査
                 朝日新聞デジタル 3/24(木) 14:27配信

 奈良県教育委員会は23日、「教員による性暴力防止法」が4月に施行されるのを前に、いじめや教職員によるハラスメントについて県内の児童生徒を対象にしたアンケート結果を公表した。小中高などで計1万2千人が、いじめと感じて「嫌な気持ちになった」と回答したという。

 アンケートは、県教委が県内の公立小中高校や特別支援学校で昨年12月~今年1月にかけて実施し、332校計9万9587人が回答した。同法は学校や県教委などに被害の早期発見を促す定期的な調査を求めており、教員からのハラスメントについても調べた。

 その結果、いずれの学校種でも「悪口やからかい」が最も多かった。手段別だと、スマートフォンや教育用端末などが小学校525人、中学校423人、高校180人。スマホ以外では、小学校4429人、中学校878人、高校217人だった。

 悪口やからかい以外では、「無視や仲間外し」「情報や動画を流す」「たたく、蹴る」などがあった。スマホを使うなどいじめの手段が多様化するなかで、教育用端末で性的なことを勝手に検索されたり、オンラインゲームで1人だけ集中攻撃されたりした児童生徒もいた。

 教員の言動についての調査では、「性的な冗談や質問をされた」が、小学校107人、中学校44人、高校35人。「体に触られた」は、小学校279人、中学校107人、高校63人だった。同法施行後、こうした行為は性暴力とみなされ、懲戒処分の対象になりえるという。

 

「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が規定する「児童生徒性暴力等」とは、次の行為を指します。

 

教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律
第二条 
3 この法律において「児童生徒性暴力等」とは、次に掲げる行為をいう。

 一 児童生徒等に性交等をすること又は児童生徒等をして性交等をさせること。

 二 児童生徒等にわいせつな行為をすること又は児童生徒等をしてわいせつな行為を

   させること。

 三 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する

   法律第五条から第八条までの罪に当たる行為をすること。
    ※第五条(児童買春周旋)
     第六条(児童買春勧誘)
     第七条(児童ポルノ所持、提供等)
     第八条(児童買春等目的人身売買等)

 四 児童生徒等に次に掲げる行為(児童生徒等の心身に有害な影響を与えるものに限

   る。)であって児童生徒等を著しく羞恥させ、若しくは児童生徒等に不安を覚

   えさせるようなものをすること又は児童生徒等をしてそのような行為をさせる

   こと。

  イ 衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の性的な部位(児童ポルノ

    法第二条第三項第三号に規定する性的な部位をいう。)その他の身体の一部

    に触れること。
   ※(児童ポルノ法第二条第三項第三号)衣服の全部又は一部を着けない児童の

    姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀で

    ん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、

    性欲を興奮させ又は刺激するもの

  ロ 通常衣服で隠されている人の下着又は身体を撮影し、又は撮影する目的で写真

    機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

 五 児童生徒等に対し、性的羞恥心を害する言動であって、児童生徒等の心身に有害

   な影響を与えるものをすること。

 

法律の言う「教育職員等」とは学校関係者を指します。

しかし、「児童生徒等」と接する職種は他にもあります。それに関しては、同法の「附帯決議」で次のように述べています。


教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律案に対する附帯決議
                       令和三年五月二十七日
                       参議院文教科学委員会
二、教育職員等以外の職員、部活動の外部コーチ、ベビーシッター、塾講師、高等専門学校の教育職員、放課後児童クラブの職員等の免許等を要しない職種についても、わいせつ行為を行った者が二度と児童生徒等と接する職種に就くことができないよう、児童生徒等に性的な被害を与えた者に係る照会制度が必要である。その検討に当たっては、イギリスで採用されている「DBS制度」も参考にして、教育職員等のみならず児童生徒等と日常的に接する職種や役割に就く場合には、採用等をする者が、公的機関に照会することにより、性犯罪の前科等がないことの証明を求める仕組みの検討を行うこと。

 

「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」の施行は、対象を「教職員等」に限定した法律です。しかし、法の趣旨は「児童生徒等」と接する他の職種をも念頭に置いたものです。

 

奈良県の調査を見ても、「児童生徒等」の置かれている状況が相当危機的なものであることが分かります。

このような法律が施行されなければならないこと自体は残念ではありますが、子どもを取り巻く社会の一員として現実を直視していきたいと思います。周りの目が一定の抑止力になると信じて……。