教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

新自由主義と公教育②

新自由主義政策は「市場での自由競争により、富が増大し、社会全体に行き渡」らせるはずでした。

しかし実際は、「再配分よりも富の集中や蓄積・世襲化が進み、貧富の差を広げる」のではという懸念が現実化し、「格差社会」が進行しています。

 

こうした社会背景のもとで、教育はいま「第3の波」を迎えていると言います。(志水宏吉『ペアレントクラシー』)

「第1の波」は、明治維新から第2次世界大戦終戦までの期間です。「アリストクラシーからの転換」、つまり身分社会から「メリトクラシー」(個人のメリット(業績)に応じて、彼・彼女の人生が切り拓かれていく社会)に向かう波です。

「第2の波」は、第2次世界大戦後から現在に至る期間で、「メリトクラシー」の波です。

「第1の波」と「第2の波」は、「富国強兵」と「経済成長」というように目標は異なるものの、その鍵となる「人づくり」という点で共通していました。

「業績(Merit)=能力(IQ)+努力(Efforts)」という公式が成り立つ、つまり個人の能力と努力が重視される社会です。

「第3の波」は、「ペアレントクラシー」の波です。

「親の影響力がきわめて強い社会」である「ペアレントクラシー」は、これまでの2つの波とは異質です。

「業績(Merit)=能力(IQ)+努力(Efforts)」という公式は、ここでは通用しません。ペアレントクラシーは次のように定式化されます。
「選択(Choice)=富(Wealth)+願望(Wishes)」

人々の人生は選択に基礎づけられたものとなっていて、その選択に決定的な役割を有するのが親(家庭)が所有している種々の「富」と、子どもの教育と人生に寄せる「願望」だといいます。

 

高学歴の親ほど子どもの教育と人生に寄せる「願望」が高いこと、そしてそのことが低学力の連鎖の要因になっていることは、30年以上も前に低学力傾向克服に取り組んだ時代から明らかです。

格差社会が進行するなかで、「富」と「願望」が子どもの人生を「選択」していくというのです。

 

「第3の波」は、学校の現場にどんなカタチで現れてきているのでしょう。

                              (次回に続く)