教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

新自由主義と公教育①

今日、公教育の現場で起こっている問題の相当部分が、「新自由主義」と言われる教育政策によるもののようです。

志水宏吉さん(大阪大学教授)の近著『ペアレントクラシー』を読んで、長年のモヤモヤがずいぶんすっきりしました。

志水さんは最も信頼できる現役研究者の一人ですが、ここ数年は教育書から遠ざかっていたものですから、順を追った咀嚼が必要です。

 

そもそも、「新自由主義」とは何でしょう。

デジタル大辞泉」から引きます。

新自由主義
政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方。規制や過度な社会保障・福祉・富の再分配は政府の肥大化をまねき、企業や個人の自由な経済活動を妨げると批判。市場での自由競争により、富が増大し、社会全体に行き渡るとする。ネオリベラリズム。→リバタリアニズム
[補説]大企業や資産家などがより富裕化することを是認し、それらによる投資や消費により中間層・貧困層の所得も引き上げられ、富が再配分されるとする。しかし、再配分よりも富の集中や蓄積・世襲化が進み、貧富の差を広げるという見方もある。

「知恵蔵」の解説は、新自由主義的な政治の実際を浮き彫りにします。

新自由主義

20世紀の小さな政府論を新自由主義と呼ぶ。18世紀イギリスの思想家、アダム・スミスは『国富論』で、経済は個人や企業の自由に任せることによって繁栄すると主張し、政府の役割を治安維持や防衛などに限定する必要を説いた。その後20世紀に入ると、大恐慌や戦時動員体制の経験を経て、政府が完全雇用を目指して需要を管理するケインズ主義政策が一般的となった。しかし、1980年代に入って政府における財政赤字の深刻な累積、官僚主義的な非能率などが大きな問題となり、イギリスのサッチャー政権、アメリカのレーガン政権を皮切りに、減税、規制緩和、民営化を軸とする小さな政府への改革が広まった。日本でも80年代の第2次臨時行政調査会による行政改革以来、新自由主義的な政策転換が進められてきた。ただ、日本では公共事業や規制に関して既得権を持つ官僚組織、利益団体、族議員が、小さな政府の徹底に反対してきた。つまり、日本の場合、保守の自民党の中に小さな政府と大きな政府という相対立する思想が同居しており、政策が円滑に決定されない。「官から民へ」というスローガンを唱えて登場した小泉政権も、新自由主義改革を推進するために、党内の抵抗勢力との間で複雑な駆け引きを繰り返してきた。結果的には、郵政民営化社会保障費の抑制など新自由主義的政策が小泉政権の遺産となった。
(山口二郎 北海道大学教授 / 2007年)

「小さな政府」「規制緩和」「官から民へ」「自由競争」…。これらはすべて、「新自由主義」の具体的なカタチだったのです。

それは中曽根政権に端を発し、小泉政権に引き継がれ、いまは維新の会の主張に最も色濃く反映されています。

 

それでは、新自由主義的な教育とはどんなものなのでしょう。

志水さんは前掲書のなかで、「新自由主義的教育政策とは、市場原理(より具体的にいうなら、選択の自由、あるいは競争原理や成果主義)を教育の場に持ち込もうという明確な意図を備えた一連の政策」のことを指すと述べ、次のものを挙げています。

学校選択制の導入

・民間人校長の採用

・全国学力テストの導入

中等教育学校義務教育学校の創出

・学校運営協議会を伴うコミュニティスクールの法制化

 

これもそうだったのか、あれもそうだったのかと思うばかりに、新自由主義は教育界に覆い被さっています。

ではそのことの何が、どう問題なのでしょう。

                              (次回に続く)