志水宏吉さんは、『ペアレントクラシー』のなかで、「新自由主義的教育政策とは、市場原理(より具体的にいうなら、選択の自由、あるいは競争原理や成果主義)を教育の場に持ち込もうという明確な意図を備えた一連の政策」のことを指すと述ています。
そして、具体的な政策として次のものを挙げています。
・学校選択制の導入
・民間人校長の採用
・全国学力テストの導入
・学校運営協議会を伴うコミュニティスクールの法制化
詳細は同書に譲りますが、新自由主義と共依存の関係にあるペアレントクラシーの進行が、これらの教育政策を受け入れる土壌になっていると志水さんは言います。
・学校選択制の導入
・全国学力テストの導入
「学力の二極化」が言われるようになって久しいです。ペアレントクラシーの進行は、学力格差を確実に増大させています。
そこに加えて、学校選択制の導入です。
そこでは「学校の二極化」が進行しているというのです。
私は、公教育の使命はとりわけしんどい立場にある子どもを適切に支えることだと信じて教育活動をしてきました。
いまは、一人ひとりの力を向上させることが強調されます。耳障りのいいフレーズですが、教師の持つチカラが100を超えることはありません。限られたチカラの力点はいずれの層の子どもに置かれているのでしょう。
たとえば学校の平均点と教育予算がリンクされるような政策がとられたら……。
・民間人校長の採用
教員社会は、基本的に水平社会です。
管理職はチームリーダーとしての役割が強く、その下にミドルリーダー(ヒラ教員を束ねるリーダー)がいて、教員仲間がいます。お互いはタテの指示命令関係ではなく、基本的にフラットな関係です。
日本の学校現場というのは概ねそうしたもので、だからこそ管理職を目指さない私にとっても生きる場があったのだと感じます。
民間人校長は、基本的にタテ社会で生きてきた人です。
タテ社会の善し悪しではなく、水平社会を壊すことを目的としたタテ社会リーダーの導入という視点で問題を捉えることが必要です。
競争原理や成果主義に基づく政策は、「主幹教諭の新設」「優秀教職員表彰」「自己評価制度」「給与体系の見直し」等、いくつもあります。
「チーム○○学校」というスローガンが大はやりです。
しかし現実の教員社会は真逆で、管理統制が強化され教員仲間の分断が進んでいます。
・学校運営協議会を伴うコミュニティスクールの法制化
この2つの項目については、私には問題が見えていません。
「中等教育学校」も「義務教育学校」も、その存在については認識しています。しかしそれが新自由主義とどう関係し、どんな問題を孕んでいるのかは分かりません。
コミュニティスクールについても同様です。
私自身、地元の小学校と中学校の学校運営協議会に名を連ねています。校区に何人もおられる校長経験者を差し置いて「学識経験者」という肩書きで参加していることを気にかけていましたが、どうやらそんなレベルの問題ではなさそうです。まずは問題の本質を知らなければならないし、次第によっては身の処し方を考えなければなりません。
『ペアレントクラシー』は2022年7月30日発行の新刊です。本文の引用は極力控えました。教育や子育てに関心のある方はぜひご一読を。
さて、公教育はどうする?
(次回に続く)