「教科外活動等」におこなった、いわば「7時間目」の人権学習の記録です。
今回は、2013年の「人権週間」時の学級通信です。学年は3年生です。
人権週間特集
「しあわせ」について その1
今から65年前の12月10日、世界の国が集まって人権を大切にしましょうという取り決めをしました。それにちなんで、12月10日を「世界人権デー」、4日から10日までの1週間を「人権週間」と言います。
私たちの人権週間のテーマは、「しあわせについて」です。
まず、12月2日に行ったアンケート結果を見てみましょう。
【質問1】あなたはどれくらいしあわせ?
全員が「5(とてもしあわせ)」を選びました。
【質問2】あなたがしあわせだと思うのはどんなとき?
○友だち(みんな)と遊んでいる時(7人)
○ほめられた時(4人)
○おいしいごはんを食べた時(2人)
○みんなと勉強したりしゃべったりしている時
○困っている時に助けてくれた時
○家族みんなで夕ごはんを食べている時
○家族が喜んでくれた時
○家族といる時
【質問3】あなたがしあわせじゃないと思うのはどんなとき?
○おこられた時(3人)
○けんかをした時(3人)
○ひとりになる時(2人)
○遊んでくれない時
○あやまってもゆるしてくれない時
○勉強をしている時
○きらいな給食が出た時
【質問4】しあわせであるために大事なものは?
1位3点、2位2点、3位1点で合計点数を出してみました。
■第1位■12点 家族
■第2位■11点 友だち
元気(いのち)
■第3位■ 3点 楽しい気もち
■第4位■ 2点 家
■第5位■ 1点 ごはん
アンケートから、きみたちが考える「しあわせ」のキーワードが見えてきました。それは、「友だち」と「家族」です。しあわせだと思うのも、しあわせじゃないと思うのも、しあわせであるために大事だと思うのも、すべて「友だち」と「家族」に関係しています。そして、それらに満足できているので「とてもしあわせ」と感じているのでしょう。
「元気も大事だし、現金も大事」と言ったら、「エーッ」って言われてしまいました。30年ほど前の子どもたちは、「学力(いい成績をとること)」と「お金」があればしあわせになれると、本気で考えていました。今の大人たちは、そう考えて「豊か」で「便利」なくらしを手に入れてきました。それでしあわせになれたのかと言うと、まあまあしあわせになれたけど、とてもしあわせだとは感じられない人がたくさんいました。あと少し足りないと感じていたものが、お金では買えない「友だち」や「家族」だったということです。きみたちは、「豊か」で「便利」になった日本で、しあわせとは何かを考えているわけです。世界の子どもたちはどうなのでしょうね。
人権週間特集
「しあわせ」について その2
今回は、しあわせについて考えるキーワードの1つ、「友だち」という問題を取り上げます。
きみたちは、学校という場所を通して友だちを作っています。ですから、友だちと遊んだりしゃべったりする「しあわせ」も、勉強やきらいな給食の「ふしあわせ」も、学校という場所で起こっています。
さて、世界には70億人ほどの人がいて、14歳以下の子どもだと18億人ほどになります。小学生と中学生は、およそ10億人くらいでしょうか。今、世界では、7500万人ほどが学校へ行っていません。これを吐山小学校におきかえると、3~4人の子が学校へ行っていないということです。つまり、この子たちは、学校という場所で友だちとしあわせを感じるチャンスがないのです。
なぜ、学校へ行っていないのでしょう。そのおもな理由は、貧困(ひんこん)(貧(まず)しいこと)、飢餓(きが)(食べ物がなくて飢(う)えること) 、そして戦争です。きみたちには考えられないことかも知れませんが、はたらかなければならないので学校へ行けない子、食べるものがないので学校へ行けない子が、いっぱいいるのです。
飢餓(きが)の問題を、少しくわしくみていきましょう。現在、世界では8億7千万人(全人口の8人に1人)が飢餓(きが)に苦しんでいます。そして、栄養がたりないために5歳までに命を落とす子どもが、1年間に500万人います。(戦争やその他の理由で5歳までに命を落とす子どもを合わせると、1年間に1090万人になります)この子どもたちは、学校へ行く前に死んでいくわけですから、学校で友だちに出会うことは永遠(えいえん)にありません。
貧困(ひんこん)や飢餓(きが)は、お金があれば解決(かいけつ)できます。また、くらしが豊(ゆた)かになれば争(あらそ)いもへります。貧困(ひんこん)や飢餓(きが)に苦しんでいる子どもたちが、きみたちと同じように「友だち」とすごすしあわせを手に入れるには、まずはお金が必要(ひつよう)なのです。そうそう、アフリカのある村では、学校で給食が出されるようになったことで、学校へ行けるようになった子どもたちがいましたよ。
マララ・ユスフザイさんの名前を聞いたことがあるでしょうか。パキスタンという国の16歳の女の子です。マララさんは、去年10月、通学バスの中で頭を撃(う)たれ、命にかかわるほどの大けがをしました。さいわい、イギリスの病院で命をすくわれ、今はイギリスの高校に通っています。
マララさんがなぜ撃(う)たれたかと言うと、女の人も教育を受けることが大事だとうったえていたからです。エッ?と思った人もいるでしょう。ところが、世の中には女の人は勉強なんかしなくてもいいと考える人たちがいるのです。そのため、世界には文字を読み書きできない大人が7億7600万人いるのですが、その3分の2が女性だと言われています。女だから…こんな理由で、学校という場所で友だちと出会うチャンスをうばわれている人たちもいるのです。
そのマララさんが、今年の7月に国連(世界の国々が集まって話し合う場所)でスピーチしました。マララさんは、すべての子どもに教育をとうったえ、「教育こそがすべての問題を解決する」という言葉でスピーチを結びました。
マララさんは、今も命をねらわれています。それでも学校で学ぶことを止めません。それは、マララさんにとっては学ぶことがしあわせだからです。
きみたちが友だちとしあわせな時間をすごせる学校へ、行くことさえできない子どもたち、命がけで行っている子どもたちがいることを知っておいてください。
人権週間特集
「しあわせ」について その3
今回は、しあわせについて考えるもう1つのキーワード、「家族」の問題を取り上げます。
家族が喜んでくれる、家族がほめてくれる、家族といっしょに夕ごはんを食べる、家族といっしょにいる…そんなしあわせを世界中の子どもが味わっているのでしょうか。
まずは、日本の話です。
2011年3月11日の大地震(じしん)と大津波(つなみ)で、18000人以上の人がなくなりました。親をうしなった子ども、子をなくした親、中には家族がみんななくなってたった一人生きのこった子もいます。
40万の家がこわれ、流されました。そのため、生きのこったものの家族がばらばらにくらすことになった子もいます。ふるさとを出て、友だちとはなればなれになった子もいます。
震災(しんさい)からもうすぐ3年になりますが、しあわせの笑顔(えがお)がもどるのはいつのことでしょう。同じ日本の中に、ぐっと歯をくいしばってたえている子どもがたくさんいることをわすれてはいけません。
今度は、アフリカのシリアという国の話です。
シリアでは、考えのちがうグループでけんかになって、ついに「内戦(ないせん)」(国と国が争(あらそ)うのを戦争、同じ国の中で争うのを内戦と言います)になりました。これまでに12万人以上の人がなくなったということです。その中には、女性や子どももたくさんふくまれています。目の前で親がころされるのを見た子どもの心を、そうぞうしてみてください。
戦いがはげしくなると、人々は国をはなれて近くの外国へにげました。中には、遠くはなれたヨーロッパまでにげた人たちもいます。この人たちは「難民(なんみん)」とよばれ、9月にはついに200万人をこえました。200万人のうち100万人が18歳までの子ども(その中の74万人は11歳までの子ども)です。
27万の家族は、お金も何も持たずににげました。また、3500人以上の子どもは、たった一人で、あるいは、家族とはぐれたまま国を出ました。
難民となった人たちの多くは、「難民キャンプ」でテント生活をしています。家や家族から引きはなされ、恐怖(きようふ)におびえる子ども。食べ物ときれいな水をもとめて1日を送る子ども。傷(きず)ついた家族を助けるため、仕事をさがす子ども。…
難民になった100万人の子どもはもちろんのこと、シリアにのこった子どもにも、家族といっしょに味わうしあわせはありません。同時に、友だちとすごすしあわせもありません。シリアの争いは3年目に入っています。
シリアの子どもたちの「ふしあわせ」は、これまでも別の国でくり返し起こってきたし、これからも起こるかもしれません。さらに、国と国との争い=戦争もくり返されてきました。戦争も内戦も、家族とすごすしあわせと友だちとすごすしあわせを根こそぎうばってしまいます。
こうして見てくると、きみたちの感じている「しあわせ」って、あたりまえのようだけどたいへんなものだと言えますね。そして、世界の子どもたちの今を見て分かることは、この「しあわせ」はきみたちの祖父母や父母の世代の人たちが必死(ひつし)に働(はたら)いて育ててくれたものだということです。また、この「しあわせ」を守っていくためには、世界が平和でなくてはならないということです。
これからも「しあわせ」でありつづけるために、何をすればいいのでしょう。21世紀に生きるきみたちの「宿題」です。