教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

続・「1ヶ月で勝負」したクラスの記録 ~いのちかがやいて~⑮

 「 あなたは、『しばてん』と出合って何を学びましたか」と子どもたちに問いかけた時、再度「友だちって何だ」に対する考えを尋ねました。

学級通信のナンバーが前後しますが、今回は映画のオープニングシーンの討論会のテーマである「友だちって何だ」に対する再回答を紹介します。

 

きみたちは大きく成長したよ


 きみたちの綴(つづ)った文字を見ながら、このクラスはもはや9月初めのクラスとは別の集団になったのだと感じています。映画のオープニングシーンになっている討論会の原作である「きらきら」№77(2005.9.12)と読み比べてみてください。


■「しばてん」を終えて、「友だちって何だ」に対する考えを書こう■


○信じられる人、助けてくれる人、頼れる人、大切な人、一緒にいて安心できる人(IO)
○以前の意見に付け足して、友だちというのは助け合ったりしてできる1つのきずなだと思う。(I)
○単に遊ぶだけでなく、いろんなことを相談できたり、悪いこと本当のことが言えるのが本当の友だち。(IT)
○友だちとは、相手を信じることだと思っている。(IN)
○心からお互いのことを分かり合える同士で、言いたいことが言い合えるのが本当の友だちだと思う。逆に、相手に相づちを打っていたり、一緒に遊んでいるだけの人は本当の友だちではないと思う。(OI)
○友だちは一緒にいて楽しいし、私にとってはとても大切な人だと思う。(KZ)
○信じてくれるのが友だちです。何でも言い合えるのが友だちです。一緒にいて楽しいのが友だちです。(KT)
○友だちというのは本当に信頼し合う大切な人。どんなにつらくても、絶対に裏切ってはいけない。でも、いけないものはいけないときちんと言えなければだめだと、私は強く思う。(KN)
○友だちとはみんなで助け合って、信じ合うことだと思う。(KB)
○友だちとは人という字だと思う。人という字は、人と人が支え合っている。友だちも相手が困っていたら助けてあげて、自分が困っているときは助けてくれる。それが友だちだと思う。(KD)
○友だちとは助け合える人、いつも笑い合っていられる、とても大切ななくてはならない人だと思う。(SG)
○友だちとは、とても大切な人だ。(SM)
○友だちとは、つらい時も嬉しい時も一緒に悲しんだり喜んだりできる、自分にとって「心の支え」になってくれる人だと思う。(TN)
○友だちとは一緒に何かをしたり、お互い助け合ったりするかけがえのない人だと思う。(TB)
○友だちというのは一緒に遊んだり、勉強したり、助け合ったり、笑い合ったり、相談に乗ってくれる人。(NO)
○一緒に遊んだり、一緒に助け合うのが友だちだと思う。(NG)
○友だちは一緒に何かをしたり、悩みを相談したり、時には助け合う大切な存在。(HI)
○一緒に遊ぶだけじゃなくて、自分の考えを言い合えるのが友だちだと思う。(MO)
○友だちは一緒にいて楽しいし、いろんなことを教えてくれる。友だちは大切な人だ。(YU)
○友だちというのはとっても大切で、いつも一緒にいてくれる人。(WD)

 

 こうして見てくると、「助け合う(支え合う)」「信じる」というのが友だちを表すキーワードになっていることが分かる。これは、「しばてん」と出合って学んだことと深く関わっている(別の号で紹介したいと思う)。加えて2学期には運動会があった。全校集会の発表もあった。それらの1つ1つにきみたちは鍛(きた)えられ、磨(みが)かれ、大きく成長した。心の中に「連凧」が揚がる日も、すぐそこまでやってきている。うれしいじゃないか、なあ、きみたち!

             『きらきら』№127(2005.12.15)

 

 ちなみに、映画のオープニングシーンになっている討論会の原作である「きらきら」№77(2005.9.12)というのは、次のようなものです。

 

   紙上討論 友だちって何だ?

 

四月二十二日
    友だちって何だ HM
 家に帰って、寝る時によく思うことがある。それは、人はなぜ他人とじゃれ合うんだろうと思う。大体、なぜ友だちというものが存在するんだろう。他人との関係など、ただの知り合いかそれとも敵とした方がよっぽど楽だと思う。

 

「きらきら」№20(2005.4.26)で紹介したHMくんの日記の一部です。みんなで考えたいと思ってとっておいた課題です。


 HMくんの考えに共感できると答えた人は2人、ほとんどの人は「ちょっとちがう」と感じています。まずは、みんなの意見を紹介します。その上で問題の整理をしていきましょう。


■あなたにとって友だちって何ですか■


○けんかをしたり、仲良くしたり、困っているときは助けたり、いっしょに遊んだりする人。(IO)
○良いことは良い、まちがっていることはまちがっていると言い合える人。(I)
○勉強とかを教えてくれたり、いっしょに遊んだりする人。(IT)
○本当のことを言い合える人。(IN)
○相談相手になってくれる人。(UN)
○心からお互いのことを分かり合っている同士で、言いたいことが言い合える人。ただ単に遊んでいるだけの人はちがう。(OI)
○自分がつらい時、悲しい時にははげましてくれる人。いっしょに遊んだりしゃべったりする人。(KZ)
○いっしょに笑ったりけんかしたりできて、悩みも打ち明けられる人。(KT)
○家族に相談できないことがあると相談にのってくれる、何かをとおりこして尊敬し合う大切な人。(KN)
○悩んでいることを相談し合え、困っていると助け合える人。(KB)
○いっしょに遊ぶ人。(KD)
○遊んだりするだけでなく、困って落ち込んでいる時、悲しい時に相談にのってくれる人。(SG)
○何でも言い合える人。(SM)
○いざというときに助け合えたり、一緒に喜んだり悲しんだりでき、心の支えになってくれる人。(TN)
○助けてくれる人。(TB)
○いっしょに勉強したり遊んだりする人。(NO)
○仲良しな人。(NG)
○いっしょに遊ぼうと言ってくれる人、たよりにできる人、信頼できる人。(HI)
○ぜったいに大切な人。(MG)
○かけがえのない人。(MB)
○いっしょに遊んだり、いっしょにどこかへ行ったり、いっしょに勉強したり、ときには助け合う人。(MO)
○分からないことがあれば教えてくれる人。いっしょに帰ったり、遊んだり、話をする人。忘れ物をしたら貸してくれる人。どうすればいいのかいっしょに考えてくれる人。(YU)
○困っている時に助けてくれたり、いっしょに遊んだりする人。(WD)


 さて、HMくんと多くの人との「ちがい」は何でしょうか。HMくんも、友だちは大切だと思っています。だからこそ、夜寝るときまで考えているのです。そして、「じゃれあう」=一緒に遊ぶことが本当に友だちと言えるのかと、疑問に感じているようです。


 Iさんは、「“友だち”というのは2種類あると思う。表面だけの『外だけ友だち』としっかり分かり合える『友だち』だ。」と書いていました。「外だけ友だち」は、「じゃれあう」=一緒に遊ぶ友だちというのと同じようなものでしょう。OIさんは、「心からお互いのことを分かり合っている同士で、言いたいことが言い合える人。ただ単に遊んでいるだけの人はちがう。」と、Iさんの言う「友だち」と「外だけ友だち」の違いを指摘していました。


 友だちって何でしょうね。

                                      『きらきら』№77(2005.9.12)

 

 

 

こうして「しばてん」の前後の通信を並べてみると、子どもたちの内面の変化が読み取れます。この「変化量」が、「しばてん」に取り組んだ教育的価値ということになります。