教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

継次処理と同時処理

認知特性って、耳慣れない言葉かもしれません。

認知処理のスタイルのことで、それには「継次処理」と「同時処理」の2つのタイプがあります。

 

継次処理は、音声や文字等の情報で理解しやすく、課題を1つずつ順番に把握し、解決する認知特性のことを言います。情報を連続的かつ逐次的に分析し、順序性を重視し、
時間的聴覚的な手がかりで、分析的に処理していくことを得意とします。

 
同時処理は、絵や写真等の情報で理解しやすく、課題を全体的に把握し、解決する認知特性のことを言います。いくつかの情報を視覚的な手がかりで空間的に統合し、全体的処理していくことを得意とします。

 

通常この2つはバランスよく発達するとされていますので、あまり意識したことがないでしょう。

もとよりすべての人を2つのタイプに分類するというものではありません。しかし、どちらかの一方がより得意というレベルにおいては、だれしも思い当たる節があると思います。

 

学習の場でつまずきの多い子の指導において、この認知特性を生かすことが一つの糸口になりそうなのです。

 

たとえば、漢字の指導はどの学年のどの教室でも行われています。そのとき、ほとんどの場合は書き順も指導します。

それ自体は正しいことなのですが…。

継次処理が得意な子にとって、正しい書き順で感じを覚えることは当たり前の学びであろうと思われます。

一方、同時処理が得意な子の中には苦痛なだけの時間になっている子がいるかもしれないのです。継次処理が苦手なので書き順を正しく覚えることが難しいのかもしれません。完成された漢字を「図」として認知しているのかもしれません。

だから書き順はどうでもいいという話ではありません。いろんな認知特性の子がいると知れば、指導の幅も広がると思うのです。

 

私は、「森田-愛媛式読み書き検査」(改訂版)を使って子どもたちのおおよその特性をつかんでいました。この検査は「視写、聴写、聞き取り、読み取り」の4 つの課題
から得意・不得意な部分の傾向をみるものです。

 

2019年9月には、『「継次処理」と「同時処理」 学び方の2つのタイプ: 認知処理スタイルを生かして得意な学び方を身につける』(藤田和弘著、図書文化社)という本も刊行されています。

 

「継次処理」と「同時処理」。学習障害などという冠をつけるまでもなく、一人ひとりの子どもの学びを確かなものにするための一助にしたいものです。