2016年の春から4年間、地元の中学校で学習支援のボランティアを続けてきました。(5年目の2020年は新型コロナ禍の休校で実施のめどがついていません)
2016~18年度は、放課後学習教室という形態で、全学年の希望者を対象に自主学習を支援していました。
2019年度は、総合的な学習の時間のゲストティーチャーという位置づけで、1年生全員を対象した「授業」を年間15コマ実施しました。(16コマ目はコロナ禍休校で中止)
私は小学校教員で、中学校の教壇に立った経験はありません。中学校の免許は持ってはいますが、教科は社会科です。
それを何としたことか、中学校の校長先生に求められて数学中心の学習支援をすることになったのです。おかげで、中学校3年分の問題集を買い込み、公立高校の入試問題を大体解ける程度の学力に回復しました。
放課後学習教室の3年間で、見えてきたことがあります。
教室に参加する生徒は学習に不安を感じている子が多く、もっとも早い子は1年生の中間テスト時点でつまずきます。期末テスト時点ではさらに落伍者が増えます。
さらに、つまずき方にある共通点があることもわかりました。
つまずきの始まりは、「負の数」とのマイナスの出会いです。
小学校の算数で扱う数は、「正の数」です。「正の数」は目で見ることのできる数の世界です。「りんごが5こありました。2つ食べるとのこりはいくつでしょう」というように。
中学校数学の最初の単元が「正の数、負の数」で、いきなり目で見ることのできない抽象的な数世界に連れて行かれます。この世界にうまくは入れないというのが、最初のつまずきです。
2つ目のつまずきは、文字式です。
数ではなく文字が答えになるという、やはりこれも抽象的な数学の世界にうまく入れないのです。
ちなみに、文字式の途中くらいまでが1学期の中間テストの範囲です。
3つ目のつまずきは、方程式と1次関数です。
第2単元の文字式でつまずいた子は、第3単元の方程式でも当然つまずきます。方程式の計算をクリアした子でも、その次の単元である1次関数になるとつまずく子が増えます。
方程式までが1学期の期末テスト範囲です。
中学校の数学を俯瞰すると、数学らしくなるのは2年生以降です。中1数学でつまずいた子たちのその後は、想像に難くありません。
中学1年生の学習内容は、小学校の算数学力が足りていれば苦になるものではありません。実際に問題を解いてみた小学校教師としての正直な感想です。
つまり、ここに小中連携の中身を考える重要なカギがありそうなのです。
2019年度、中1を対象に行った「授業」は、学習支援を通して私が感じた小中連携のキモを、小学校教師の目線で可視化したものです。
年間15回の授業内容を、次の稿より「元小学校教員による小中連携授業」としてシリーズで紹介します。