「個別に最適で効果的な学びや支援」には、
○個々の子供の状況を客観的・継続的に把握(センシング技術)
○知識・技能の定着を助ける個別最適化(AI)ドリル
○意見・回答の即時共有を通じた効果的な協働学習
という3つの柱があります。
3つのうち、
○個々の子供の状況を客観的・継続的に把握(センシング技術)
○知識・技能の定着を助ける個別最適化(AI)ドリル
について、前回紹介しました。
今回は、
○意見・回答の即時共有を通じた効果的な協働学習
について考えます。
上の図に添えられた説明に、「意見・回答の即時共有を通じた効果的な協働学習」と書かれています。
もう少し詳しくみてみましょう。
「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」の中に、「協働学習支援ツール」というくだりがあります。
協働学習支援ツール
(機能)
協働学習支援ツールとは、子供の端末と教師の端末・電子黒板等を連携し、文書・画像ファイル等の教材・課題の一斉配付のほか、画面共有・制御等を行うことにより、個々の子供の考えをリアルタイムで教師と子供間、子供同士、学級全体で共有することを可能とするものである。
(効果)
教師は手元の端末で、課題等に対する子供の進捗や思考の状況をリアルタイムで確認できることから、個々の状況に応じた机間指導や声かけが可能となるほか、発問をより効果的に行うことができる。また、子供の回答等を電子黒板等に一覧表示することで子供同士による考えの比較や議論の活性化ができる。
(留意点)
学級内の子供に対する課題の一斉配布や回収、回答の一斉表示は比較することが適当な場面を適切に選択する必要がある。また、端末からのアクセスが集中することから、ツールが使用できなくなった場合の代替策を用意しておく必要がある。
「協働学習」ではなく、「協働学習(を)支援(するのに役立つ可能性のある)ツール」なんですね。
電子機器によって「個々の子供の考えをリアルタイムで教師と子供間、子供同士、学級全体で共有」できたとしても、そのことが「協働学習」ではありません。(厳密に言うと、電子黒板にみんなの意見が映し出されることと、意見を「共有」することとは同義ではありません。)
「支援ツール」によって映し出されたものを「共有」し、そこから「協働学習」が始まるのです。
「協働学習」って何でしょう。
文部科学省の「学びのイノベーション事業」というページに、「協働学習」の具体的イメージが示されています。
学びのイノベーション事業
ICTによる「新しい学び」 学びのイノベーション事業では、全国20校の実証校において、実証研究を行いました。
急速な情報通信技術(ICT)の進展やグローバル化など、変化の激しい社会を生きる子供たちに、確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和のとれた「生きる力」を育成することがますます重要になってきています。
ICTは、時間的・空間的制約を超えること、双方向性を有すること、カスタマイズが容易であることなどがその特長です。
このような特長を効果的に活用することにより○子供たちが分かりやすい授業を実現
○一人一人の能力や特性に応じた学び(個別学習)
○子供たち同士が教え合い学び合う協働的な学び(協働学習)
など、新たな学びを推進することが可能となります。
(中略)
3 ICTを活用した指導方法の開発~様々な指導方法、指導の展開例~ (報告書第4章)
ICTを活用することにより「一斉指導による学び(一斉学習)」に加え、「子供たち一人一人の能力や特性に応じた学び(個別学習)」、「子供たち同士が教えあい学び合う協働的な学び(協働学習)」を推進していくことが重要です。ICTを活用した学習場面を、実証校の実践報告等をもとに類型化し、類型に対応した実証校の実際の学習場面例を整理しました。
ちょっと具体的に見えてきましたね。
ところで、「協働学習」と関連して思い浮かぶのは、「主体的・対話的で深い学び」という言葉です。
「主体的・対話的で深い学び」は現行学習指導要領の核心部分です。「協働学習」は、それを実現するための中心的な学習過程です。
前回、 「『個の学力』と『集団の学力』は、『協働学習』について検討する際に言及します。」と書きました。
「個の学力」は、学習の個別化において追求していく課題です。前回の稿に関わるテーマです。
「集団の学力」には、いくつかの側面があります。
「個の学力」(個々の学力)が高まれば、当然のことながら学級全体の学力レベルも上がります。それをもって「集団の学力」が高まったと言うこともできます。
各個人のレベルで学力を考えるとき、周りの子に触発されてその子の学力が伸びるという側面があります。たとえば、周りの子の頑張りに触発されて学習意欲が高まることもあるし、周りの子の意見に触発されて思考が深まることもあります。
これも、「集団の学力」の一つの面です。
また、触発の相互作用が学習集団のレベルを高次なものに押し上げることもあります。私が使っている「集団の学力」の語は、この部分を念頭に置いています。
「主体的・対話的で深い学び」は、本来、ここに重なる概念だと思います。
「個別最適化された学び」は、個々の学びを切り離すことではありません。(「個食」ならぬ「個勉」であってはだめなのです)
個の内に向かう学びと外に向かう学びの往還のなかで、「個の学力」が高まるのです。
そして、「協働学習」が「集団の学力」を高め、「個の学力」をさらに高めるのです。