教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

「1ヶ月で勝負」したクラスの記録①

今回は、「『1ヶ月で勝負』したクラスの記録」の前置きになります。

 

■「50日が勝負」の意味するところ■


学級開きから数えて50登校日というと、6月の中旬になります。「50日が勝負」というのは、学級経営は6月中旬までが勝負だという意味です。

 

アメリカに「ハネムーン期間」とよばれるものがあります。大統領就任後最初の100日間は温かく見守ろうというもので、「100日ルール」とも言います。その100日間に政権の明確なテーマ(目標、目的)を示すことができるかが、新大統領にとって最初の正念場です。これに失敗すると、以後、議会やマスコミからの鋭い攻撃に晒されることになります。

 

アメリカ大統領の任期は4年、私たちの任期は1年です。私の経験からすると、私たちに与えられた「ハネムーン期間」は50日です。

 

たとえ学級編成替えがなかったとしても、つまり変わったのは学級担任だけだったとしても、学級集団も学習集団も昨年度の続きからスタートというのではありません。経験則で言えば、集団は前年度のピーク時より何割か戻った状態でスタートすると考えた方がよさそうです。

 

たとえ教師間の「ものさし」が揃っていたとしても、担任の人間性はみな違います。その違いが指導の仕方の違いになって表れます。
「忘れ物ゼロをめざす」という「ものさし」を共通課題にした時、A先生は忘れ物調べの表を作り、時にはペナルティーも科しながら指導したとします。一方、B先生は忘れたことで困ったという経験を子どもにさせて、自己改善させていく方策をたてたとします。ともにめざすところは同じでも、この種のアプローチ(手法)の違いは常にあります。

 

担任が50日の間にすることは、先の2つの「たとえ」をクリアして、子どもたちを自分色に染めることです。
学級生活と学習の両面において、担任と子どもたちの間に一定のルールが確立し、それが軌道に乗ること。そのことによって、担任にとっても子どもたちにとっても、教室が居心地の良い場所になってきていること。担任と子どもたちが同じ目標に向かって歩み始めていること。…50日経過時の検証軸はそんなところでしょうか。それが、「子どもたちを自分色に染める」という中身です。

 

ところで、なぜ50日なのかということです。
年度初めの定期家庭訪問が終わり、子どもの様子や家庭の状況がつかめたころ、学級経営方針(学級目標)が定まってきます。それが大型連休前後です。そして、クラスが本格的に動き出して4週間が経過すると、はや6月、50日目はすぐそこに迫っています。その時点で、ちょっとした手応えを感じながら軌道に乗ってきているかどうかが、クラスの1年間を占うバロメーターになると言えます。

 

実は、力及ばす、スタートの「50日」を達成するのに秋までかかった経験があります。学級崩壊状態のまま4年生を終えたクラスを、5年生で担任した時のことです。生活や学習の規律を回復し、クラスが私のペースで動くようになるまで、半年を要しました。マイナス状態をゼロベースまで引き上げることはできましたが、その上に新しいものを築くには時間が足りませんでした。詳細は、尾木ママに学んだ学級崩壊②尾木ママに学んだ学級崩壊③尾木ママに学んだ学級崩壊④に紹介しています。

 

やはり、「50日が勝負」なのです。

 

 

さて、いよいよ「50日」よりもさらに短い「1ヶ月」のものがたりとなります。