教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

「1ヶ月で勝負」したクラスの記録②

■「1ヶ月で勝負」したクラスの記録■その1

 

1度だけ、「1ヶ月で勝負」したクラスがあります。

 

2002年4月、10年振りに子どもたちの前に立ったのが3年生のクラスで、それが2005年度6年生、つまり「連凧の子ら」になります。

 

まずはじめに、このクラスの置かれていた状況に触れておかなければなりません。

 

もともと女子のパワーに圧倒されていたクラスに、4年生の半ば、活発な女の子が転入してきました。クラスのバランスが崩れ、友だち関係がそれまで以上に難しくなりました。さらに、保護者との対応に担任が翻弄される状況が続きました。クラスは深刻な窒息状態に陥り、6年生を迎えることになります。

 

長い教員生活のなかで、これほど乞われて担任になったことは後にも先にもありません。5年生の終わり、何人かの子が「6年の担任はyosh-kにして」と校長室に直訴に行きました。保護者が署名を集めているという話も聞こえてきました。

それは、教師冥利に尽きるという言い方もできますが、裏を返せば相当なプレッシャーです。

「失敗」は許されません。

 

 

かくして迎えた始業式(学級開き)の日。

 

私は最初の1か月が勝負だと思いました。

1か月の間に教室の空気を変えなければなりません。子どもたちに変わったと自覚させなければなりません。それができなかったら、この1年は終わりです。

 

教室は深く病んでいました。

 

学級開きの日の通信です。

一段ときらきら輝いて生きよう!!


 きょうから6年生。最高学年のスタートです。
 「ただいま」そして、「みんな、おかえり」。再度担任させてもらうことになりました。どうぞよろしくお願いします。
…略
 この2年間、いつもとなりの教室からみなさんを見つめてきました。なつかしい『きらきら』最終号(注:3年生の時の学級通信)を読み返してみましょう。


みんなかがやきを秘めている
 4月8日の始業式の日、ぼくはみんなに「きらきらかがやいて生きよう」とよびかけた。人がかがやくというのは、その人らしく力一杯生きているということだ。一人ひとりのかがやきは、みなそれぞれにちがう。金子みすゞの「みんなちがって みんないい」という言葉の通りだ。自分らしく生きている人は、瞳がかがやいている。そして、表情が明るい。
 1年間みんなを見てきて思うのは、表情がおだやかで明るくなったということだ。みんなそれぞれのかがやきをみせてきたと思う。すばらしいことだ。しかし、同時に思うのは、もっともっとすごいかがやきを秘めているということだ。秘めているというのは、もっとかがやくかもしれないし、もうそれまでかもしれないということだ。それは、きみたちがもっとかがやこうと努力するかどうかにかかっている。ぼくは、きみたちの努力に期待している。


勢いよく大空に舞う連凧になれ
 人がもっとすてきな自分になろうと努力できるのは、それを見ていてくれるなかまがいるからなんだ。かげ口やあげ足とりはないだろうか。「すてきだね」「すごいね」という言葉が、すなおに出ているだろうか。
 いつか見せた連凧の写真を思い出してほしい。いろんなかがやき方をしている凧が、一つにまとまって大空に舞う。クラスが一つになることの感動を、きみたちにもあげたかった。今日で3年生が終わるが、これは4年生の宿題に残してしまった。きみたちにはできるはずだ。


 さて、2年間で何が達成され、何が「宿題」として残ったのでしょうか。そっと振り返ってみてください。そして、みんなで考え合いたいと思います。ぼくは、きみたちと連凧のように強くつながりあったクラスを作りたいと思っています。


 IOくんとNGくんを迎え、6年生は25名のなかまでスタートします。学年通信は、『きらきら』から『きらきらMORE』にバージョンアップします。MORE(モア)というのは、「もっと、一段と」という意味の英語です。一段ときらきら輝いて生きていきましょう。そして、一人ひとりが力を出し合って、「いろんなかがやき方をしている凧が、一つにまとまって大空に舞う」連凧のようなクラスにしましょう。今日は、ぼくらのクラスの誕生日です。

 

学級開きの日に日記の宿題を出します。離着任式、始業式、学級開き …別れと出会いを記録し記憶にとどめるためです。

4月6日、出会いをつづる

 

■TN
 今日、離着任式がありました。校長先生とIN先生が出て行かれて、また新しい先生が入ってこられました。二人の先生がいなくなったけど、新しく入ってこられた先生方も優しそうで良かったなあと思いました。次に、始業式がありました。そして、私が一番楽しみにしていた担任の先生の発表が、校長先生からありました。私や友だちは、五年生の時から、「次の担任はyosh-k先生がいい。」と言っていました。でも、私は三年生から新しく来られた先生ばかりに受け持ってもらっていたので、今回もyosh-k先生が担任になることはないだろうと思っていました。すると校長先生が、「六年生の担任は、yosh-k先生です。」と言ったので、みんな静かにしなさいと言われていたのに声を出して喜びました。式が終わった後、教室にyosh-k先生が入ってきました。そしてみんなに学級通信を配られました。その通信を見たとき、私は、三年生の時一人ひとりにもらったノーベル賞を思い出しました。私は、「漢字ばっちりで賞」をもらいました。その時はうれしかったです。これからも、いろんなことを頑張っていきたいと思いました。


■ドキドキ担任の先生発表■KZ
 春休みが終わり、一学期スタート。六年生としてこれからがんばっていかんなんなあと思っていました。けれど私が一番気になっていたことは、担任の先生です。私が一番担任になってほしかったのはyosh-k先生でした。なぜかというと、おもしろいし三年生で一度担任の先生になってもらったからです。そして、離任式が終わり、校長先生とIN先生を送ってから、yosh-k先生に、「六年生の担任の先生だれ?」と聞くと、「イニシャルが『Z』で始まる人。」と言いました。だから私は、「そんな人いないやん。」と言ったりして、その時もだれかな、だれかなと思いました。そしてとうとう校長先生から担任の先生の発表が始まりました。「六年生・・・yosh-k先生。」「えっ、ほんと?」とびっくりしました。でもうれしかったので、やったあと心の中で言いました。みんな手をたたいたりしました。これからyosh-k先生との新しい授業、新しい六年生二十五名でがんばっていきたいと思いました。


■KT
 「まだかなあ。」とドキドキしながら耳をすませて聞いていました。すると、校長先生が、「六年生、yosh-k先生。」と言ったとき、私たちのクラスのみんながワイワイとさわぎながら喜んでいました。担任の先生が全員決まり、始業式が終わった後、みんなが立ち上がって、さっきよりももっともっと喜んでいました。私もOIさんとYUさんとで手を組んで、「よかったなあ。」と言いながら喜びました。最後の学年だからがんばっていこうと思いました。


■OI
 私は、朝起きたとたん、ドキドキしていました。「六年生の担任の先生は誰だろう。」そう思いながら、私は学校に行きました。私は、離任式をしているときも、着任式をしているときも、「ああ、もう早く。担任の先生、誰なんよ。」と心の中で半分思いながら、やめられた先生の話や新しく来た先生の話を聞いていました。そして、いよいよ担任の先生を聞くときがやってきました。心臓は、ドキドキじゃなく、バクバクです。新しい校長先生が、発表しました。「六年生の担任は、・・yosh-k先生です。」と知らされたとき、六年生ほぼ全員が一せいに喜びました。yosh-k先生は三年生の時になったから、もうないんだろうなと思っていたけど、またyosh-k先生になって、私は満面の笑みをうかべるほどうれしかったです。


■今日は私たちの誕生日■KB
 今日はとてもうれしい日でした。始業式が始まったとき、ドキドキしました。私は、「いつになったら六年生の担任の発表があるのかな。」と、ずっとドキドキしながら待っていました。…「どうかyosh-k先生になるように。」と言っていました。いよいよ発表です。はじめは六年生からでした。クイズミリオネアみたいな感じで、とてもドキドキしていました。ついに、校長先生が言いました。それは、yosh-k先生でした。とてもびっくりしました。六年生の担任を二回も続けてするなんて、思っていませんでした。とてもびっくりしすぎて、泣きそうになりました。担任がyosh-k先生でよかったです。みんなの誕生日になりました。これから六年生としてがんばっていくので、よろしくお願いします。


■SG
 「六年生担任、yosh-k先生。」と、校長先生から発表されて、私たち六年生は「やったあ。」と喜びの声をあげました。yosh-k先生には三年生の時に持ってもらい、四年生に上がっても担任になってほしかったのですが、残念でした。五年生になったときも。そして、六年生になり、yosh-k先生が私たちのクラスにもどってきてくれました。先生、ありがとうございます。三年の時の『きらきら』を読むと、とても楽しいものも、勉強になるものも、そして病気のことも、いろいろありました。私は、あと一年だけど、最終号の「みんなかがやきを秘めている」に書かれていた「残された宿題」をしたいと思います。先生、これから一年間よろしくお願いします。


■びっくりぎょうてん始業式■I
 始業式前日。私はとてもドキドキしていました。なぜかというと、担任の先生が明日発表されるからです。私は、ご先祖さんに、「yosh-k先生になりますように。」とたのみました。そして、昨日の明日になってしまいました。朝見たテレビでは、おひつじ座は一番悪かったので、「ああ、だめかも…。」と思いました。始業式が終わり、担任の先生が発表されるときがきました。とてもドキドキしました。校長先生が前に出て、「六年生担任…。」と言って少し間があいたので、その時はとてもとてもドキドキしました。そして、校長先生が息をすったとき、「もうだめだあ。」と思いました。校長先生が、「yosh-k先生です。」と言ったしゅん間、みんながドワーとさわぎました。と同時に、少しおどろきました。yosh-k先生に、「担任やってやあ。」と言ってたことが本当になってしまったからです。「こりゃ、ご先祖さんにたのんだかいがあったなあ。」と思いました。yosh-k先生、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。


■KN
 私は、今日から六年生になると思うと楽しみでしかたありませんでした。でも、一つだけ不安なことがありました。それは、担任の先生のことです。式が始まる前にみんなで話していました。でも、まったく見当がつきませんでした。そして、いよいよ発表です。私は、すごくドキドキしながら聞いていました。すると、「六年生、yosh-k先生。」と、校長先生が発表したとたん、私はすごくホッとしました。これから一年間、前の六年生の人たちに負けないようにがんばりたいと思います。


■担任がyosh-k先生だった■IN
 今日は、私たちの担任の先生が決まる日だ。私たちは前からずっとyosh-k先生に「担任になってな。」と言っていたので、今日が待ち遠しくてたまりませんでした。そしていよいよ校長先生の口から、「六年生の担任は、yosh-k先生です。」と言われたしゅん間、私は思わず、「やったあ。」と言いました。担任の先生の発表が終わって、教室に入ってしばらくするとyosh-k先生が入ってきました。yosh-k先生が前に立っていると、何となく三年生のころを思い出したような気がします。私たちは最高学年になりました。全校のリーダーとして、みんなで頑張りたいと思います。


■新六年生になったぞ■SM
 今日から六年生になってわくわくしていたけど、それよりもこわくて、楽しみにしていたことがあった。それは、六年生の先生だ。先生で一年が変わるからだ。私たちの一番担任になってほしい先生は、yosh-k先生だ。まさにドキッとする時がきた。「k」と聞いた時、本当にドキッとした。そして、「yosh-k先生」と言われた時、ホッとした。SGさんとガッツポーズをとって、「めっちゃうれしい」と小声でニコニコしながら言った。教室へ戻ると、みんなうれしそうにしていた。こんなほのぼのとみんな笑ってるのは何日ぶりだろうか。こんなみんなが笑ってすっごく楽しくしている時間がいつまでも続くといいなと、Iさんたちと言っていた。卒業まで一年間、よろしく。


 さて、学年初日の日記はyosh-k学級の恒例なのですが、担任発表の話題にこれほど集中したのは初めてのことです。おどろきとともに、1年間きみたちとがんばろうという元気をもらいました。