デジタル教科書時代の算数力
2035年、学校帰りに出会った子どもの家。
彼の宿題を見ていて、あれっと思ったのが算数。
教科書がデジタルなら、「ドリル」もデジタルコンテンツです。そりゃまあ当然です。
問題は、デジタルコンテンツのなかみです。
昔は、算数ドリルの代表格は「繰り返し式計算ドリル」で、ひたすら正しく・速く計算する練習に励んだものです。
ところが、画面にはそんな問題がありません。
そのことを子どもに聞いたら、彼は言いました。
「計算はね、電卓機能を使ってするから…」
「エッ、まったくしないの?」
「3年生の時にかけ算の筆算を練習したし、4年生ではわり算の筆算を練習したよ。でも、6年生ではめったにしないよ。」
気になったので、学校を訪問した折に先生に聞いてみました。
デジタル教科書時代というのは、単に紙の教科書がデジタル化されたというものではありません。いわゆる「ドリル学習」を含めた学びそのものがデジタル化されているのです。それは、社会のデジタル化が進んでいることと深く関係しています。
いま私たちが子どもに求めているのは、計算力ではありません。
紙の教科書の時代、小学校算数の中心は確かな計算力にありました。でも、スマホやタブレットなどの端末をいつでもどこでも使えるわけですから、計算は電卓を使えばいいのです。もちろん、計算の仕方は指導しますよ。
いま私たちが子どもに求めているのは、どうすれば解けるのか、なぜそうするのかを説明できる力です。とくに高学年ではそうです。それは、中学校の数学が求めていた力に近いと言っていいと思います。
それを聞いて、私は「確かにそうだ」と思いました。
私が中学校でボランティアを行うようになって強く感じた算数と数学の違いは、まさにそこだったのです。
小学校が中学校に合わせる必要はありません。しかし、結果的に答えが合ってればいいという計算力では、中学校の数学に太刀打ちできない現実を見てきました。(それでも、小学校のテストはマルになってしまうのですが…)
先生は、1つの問題を見せてくれました。
これは、式を立てる力を育てるためのドリルです。
イチゴが、1パックに12こずつ入っています。25パックでは、イチゴは全部でいくつあるでしょう。
文章問題がありますね。
子どもは文章を読んで、分かっていること(もの)と数を青色でマーキングします。
つぎに、たずねているとその数の単位を赤色でマーキングします。
イチゴが、1パックに12こずつ入っています。25パックでは、イチゴは全部でいくつあるでしょう。
この問題では、数を4マス図に記入します。
さらに、数の関係を書き加えます。
そこから12×25=□(個)という関係式ができますから、それをもとに立式します。
今では文章問題が苦手という子はほとんどいません。
オッと、待ってくださいな。
これって、30年ほど前に私が作ったyosh-k塾プリントというワークじゃないですか。
4マス図は、当時筑波大学附属小学校におられた田中博史先生に学んで活用していたものです。
私は1枚のプリントに文章問題を1問書いて、立式までの工程ができれば合格点(80点)になるように配点していました。正しく計算できればプラス10点、答えの単位が正しければさらにプラス10点で、計100点になります。
わかる数が3つ、わからない数が1つの問題(1あたり量の大きさが出てくる問題です)は、すべて4マス図で立式します。
わかる数が2つ、わからない数が1つの問題は、たし算・ひき算です。これは、「あわせる線図」「のこりの線図」「ちがいの線図」といった線図を使って立式します。
問題を見える化(可視化)、作業化することで、ぐっと解きやすくなるのです。
先生の話に戻ります。
計算の力を育てる段階では、計算の仕組みを説明するドリルも用意しています。
算数の授業風景は、すっかり変わりましたよ。